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2017年5月11日 (木)

紙の雑誌は打ち切らざるを得ない

 紙媒体のものを減らすということで,今年度から,大学院時代からずっと購入していた「労働判例」を止めることにしました(バックナンバーも古本屋から買っていました)。就職してからも,最重要の資料として,研究費で購入し続けていた雑誌でした。ただ今年度は資金が潤沢ではなく,それでもこれまでならリストラの対象から一番にはずれていた雑誌ですが,今回リストラ対象としたのは,高額であること,前から判例の選別にやや疑問をもっていたこと,そして一番の問題は研究室のキャパシティがきつくなってきたこと,オンラインで判例情報を入手することが簡単になったこと,大学の図書館でみることができること,という理由で,打ち切ることにしたのです。産労さん,申し訳ありません。まあ,随分昔には執筆したこともありましたが,ここ20年くらいは執筆もなく,とくに義理を感じる理由もないので,あっさり打ち切りました。
 ということで,これまで以上に判例情報の収集は,積極的にしなければならなくなりました。せめて別冊ジュリストの重要判例解説はしっかり読もうと思ったところ,いきなりびっくりする判例に遭遇しました。東京高裁の平成27年10月7日の判決です(平成27年(ネ)3329号,平成27年(ネ)4260号)。判例時報2287号に掲載のものです。
 この事件は,簡単にいうと,ある医師について,病院との間で時間外手当の一部を年俸(1700万円)に含める合意をしていたとし,それを有効として,追加の時間外手当の支払請求を認めなかったのです。かつてモルガン・スタンレー・ジャパン事件(東京地判平成17年10月19日)というのがあって,同種の判断をしていましたが,学説からは批判されていました。私は『雇用社会の25の疑問-労働法再入門-(第2版)』(弘文堂)の255頁以下に,比較的詳しく,この判決のことを紹介しています。社員の自己決定をどこまで認めるべきか,という観点からの紹介です。従来の判例からすると,本件は年俸において割増賃金部分とその他の部分との分別性がない事案なので,LS生がこの判決のような答案を書くと不可となるでしょう。
 私としては,個別的デロゲーションの肯定例として注目したいのですが,年俸が高いからよしとするような単純な議論にしてはなりません。医師の特殊性も実は無視できず,最近,実質的にではありますが,業種や職種に着目した判断をしている裁判例が増えているのではないかという気もしています(たとえば,雇止めは,アルバイトなら簡単に認めるとか)。
 こういう判決を見落とさないように判例の随時チェックをする必要があります。まだ使っていませんが,「労働法EX+」も良さそうなので,こちらに切り替えることも検討しようかなと思っています。

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