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2017年5月27日 (土)

連城三紀彦『処刑までの十章』

 連城三紀彦『処刑までの十章』(光文社文庫)を読みました。長編で,読むのにかなり疲れるミステリー作品でした。以下ネタバレありです。  国分寺に住む平凡な夫婦。あるとき,真面目一筋だった夫(靖彦)が,出勤のために自宅を出たあと行方不明となります。それを知った妻の純子(専業主婦)は,銀座で音楽教室の講師をしている夫の弟の直行に助けを求めます。会社からは,経理課で働いていた夫が取引先への請求書を改ざんして,200万円ほど着服した疑いがあるということも知らされます。  ところで,10月28日に,夫婦の住んでいた国分寺からはるかに遠い土佐清水において火災事故(一人焼死)があります。一見関係のなさそうな2つの出来事ですが,土佐清水の火災には「5時71分」に事件が起こるという予告がありました。「5時71分」という奇妙な言い回しは,以前に靖彦が使っていたものであり,そして直行がこの日会う予定になっていた,兄から紹介された女性は,土佐清水出身でした。火災現場では,そこから逃げていく一人の女性が目撃されています。こうして,この二つの出来事はつながります。直行は,兄の靖彦と土佐清水の女性(萩原勝美)が落ち合って失踪したのだと推理します。萩原勝美は,靖彦の唯一の趣味であったアサギマダラという青く美しい翅をもった蝶の愛好者つながりの人でした。  直行の推理を中心に話は展開していきますが,これが真相かと思うと,裏切られ,というのが連続します。直行は兄の妻である純子にもともと惹かれているのですが,姉が殺したのではないかという疑いも捨てていません。ここではとても書き切れない錯綜したストーリーが展開していくのですが,萩原勝美は実は男性であったとか,純子の家の周りにいるストーカーのような男が,実は私立探偵であったとか,靖彦らしき人が事件後に純子らしき人と会っているとか,純子らしき人が土佐清水で目撃されているとか,直行が真相究明のために頼りにしていた土佐の新聞記者が殺されてしまうとか,バラバラ死体が少しずつ発見されて,それが靖彦の死体のように思えるとか,かなり読者は引きずりまわされます。  伏線がきちんと回収されているかは疑問が残るのですが,著者の遺作であり,たいへんな力作であることは間違いないでしょう。  ★★★(仕掛けが大きすぎて,途中で中だるみ感もありました)

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