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2017年5月10日 (水)

外国の大統領選をみて思う

 大統領選は,アメリカ,フランス,韓国のいずれも,国民が直接選ぶことができます(アメリカはやや複雑な仕組みですが)。ですから熱狂しますし,ポピュリズムが生まれやすいように思えます。こうした選挙では,雇用問題,格差問題,貧困問題などが主要なテーマになりやすいようです。
 パレートの法則では,国民の2割が,8割の利益を生み出すとされます。国の富がなかなか平等に配分されにくいとなると,多くの国民から直接支持を得ることが必要な大統領選では,国民の所得に直結するテーマが争点となりやすいのでしょう。そうなると右も左もなくなります。政治思想がどうであろうと,国民を食べさせるにはどちらがいいかという選択になるからです。フランス大統領選の決選投票でのMacronとLe Penは究極の選択と言われましたが,社会党や共和党では,どうやって自分たちを食べさせてくれるかわからないからそうなったのであって,今回,新たな対抗軸が誕生したとみるべきなのかもしれません。フランス人にとって有利なのが,親EUや欧州的価値観の共有か,自国主義かという軸です。そこには歴史観や思想などももちろん関係しますが,それよりも,経済や雇用面でプラスかどうかのほうが重要となってきているのでしょう。Brexitは,イギリスの国民の多くが,反EUのほうが,自分たちの経済や雇用に有利だという判断をしたのでしょう。こうした経済優先主義の傾向は,若い層ではいっそう強まっていくのではないかと思います。
 日本では,国民が国のトップを直接選ぶ選挙がないので,こうした国民の本音がストレートには現れにくいように思います。ただ自民党の支持率が高いことからうかがえるのは,国民は現状にそれほど不満はなく(もちろん,突っ込んでいけば,不満がゼロということはないのですが),むしろ現状を大きく変える要因(北朝鮮の動向,トランプ政権の政策,中国の軍拡など)に関心があるのだと思います。安倍政権が支持されるのは,経済政策や雇用政策よりも,外的な環境変化のなかで日本を守るのに相対的に一番信頼できるということなのでしょう。雇用政策については残念なことが多い現政権ですが,それでもビクともしないのは,実はそこは国民の主たる関心となっていないからかもしれないのです。国民は将来の「安心」が欲しいのです。雇用はもちろん大切なのですが,北朝鮮から核ミサイルが飛んできたら,雇用の問題などは吹っ飛びますし,アメリカの通商政策いかんで日本の産業は打撃を受けて雇用にも影響するし,こうした基本的なところの「安心」が大切なのです。
 東京都知事の小池百合子さんが,豊洲問題を利用して,都民の「安心」を一番考えているのは自分だと主張しているのは,豊かな東京都民にとってプライオリティの高い,食の「安心」に訴えかける巧みな戦術だったのかもしれません(小池さんも,豊洲が「安全」ということは,すでにわかっているのでしょうが,「安心」が大切だというポーズが政治的には大切なのです)。

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