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2017年4月28日 (金)

休日労働の抑制

 昨日の労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の労働条件分科会で,厚生労働省が休日労働の抑制を労働基準法の指針に明記する案を示した,という記事が日本経済新聞の昨日の夕刊と今日の朝刊に出ていました。残業時間の特例の上限を原則,年720時間とするなかに休日労働分が含まれず「抜け穴」との批判があったことに対応したもののようです。
 分科会に要請したいのは,三六協定を維持するならばそれでよい(私は本来は不要論です)が,それならば,時間外労働や休日労働は法定労働時間の例外であるということをもっと強く打ち出すことです。私が考えていた絶対的上限はもっと厳しいものだったので,現在の案では実質的には絶対的上限とは言えないようなものです。それならば,法の本来の趣旨に立ち返り,法定労働時間や法定休日を超えることは例外的なことであるということを明記してはじめて限度時間やさらに特例の720時間といった数字が多少は許容可能なものとなっていくと思います。最初から年720時間まで時間外労働ができるというような印象を与えてしまってはいけません(マスコミの報道の仕方の問題もあるのでしょうが)。
 そう考えると休日労働について,抑制的であるべきだという程度のことでは不十分で,労基法35条の週休制が原則なのだということが,もっと強く打ち出されなければなりません。私は休日労働については,おそらく連合もびっくりの強硬派です。
 かつて『君は雇用社会を生き延びられるか-職場のうつ・過労・パワハラ問題に労働法が答える』(2011年,明石書店)では,私は週休制の徹底を主張していました。そこでは具体的には変形休日制(4週で4休日[労基法35条2項])を廃止すること,休日労働については代休を義務づけることを提案しています(192頁以下)。その後の『雇用改革の真実』(2014年,日経プレミアシリーズ)では,週休1日の徹底と休日労働の原則禁止を主張しています(186頁)。しかし,こうした提案はまったく相手にされなかったので,その後の『労働時間制度改革-ホワイトカラー・エグゼンプションはなぜ必要か』(2015年,中央経済社)では,主張を緩和させて,変形休日制は4週間単位ではなく2週間単位とすること,休日労働についても時間外労働と同様のガイドライン方式を導入することなどの提案をしています(200頁)。ガイドライン方式は,同書のなかで,時間外労働について定めた内容と平仄をあわせるため,三六協定や割増賃金に代わる事前規制方式を休日労働でも取り入れるべきだとしたのです(休日労働命令の不意打ちを避けるようにするねらい)。しかし心のなかでは,明石書店で書いたような代休の義務化という提案は依然として魅力的だと思っていました。ただ経営者側に聞くとそれは無理だとほぼ異口同音だったので,現実性が乏しいと思っていたのですが,現在の働き方改革の流れの中では,確実に休日を与えるという主張が,ひょっとしたらもっと受け入れやすいかもしれないと思うようになっています。
 いずれにせよ休日についての法の原則は,労基法35条1項の「使用者は,労働者に対して,毎週少くとも一回の休日を与えなければならない」です。休日に労働をさせることは,この原則に反するものなのだという原点から議論を進めてもらいたいです。そうすると休日労働があることを前提にその抑制をするのではなく,努力義務程度であれば,むしろ代休を付与するよう努める,といったことを書いてもらいたいものです(代休を付与するならば,休日労働はそれほど強く抑制する必要はなくなります)。同じことは,休日の事前振替(現行法上も就業規則等に根拠規定があれば可能)に着目することでもよいのです(もっとも安易に事前振替がされるようだと,不意打ち的な要素があるので問題ですが)。
 厚生労働省が休日に着目してくれるのは有り難いのですが,着目の仕方には注文をつけさせてもらいました(もちろん,会議では,すでに私の述べたようなことをふまえた議論がされていたのかもしれませんが)。いずれにせよ,休日労働に対する強い規制を加えていこうとするならば,私は応援していきたいと思います。この休息という観点から,さらに年休改革にもつなげてもらいたいですね(もしまだならば,『勤勉は美徳か-幸福に働き,生きるヒント』(光文社新書)の第6章「休まない労働者に幸福はない」も読んで,問題意識を共有してもらいです)。

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