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2017年4月20日 (木)

リーガルマインド

   何かとトラブルが伝えられるユナイテッド航空ですが,一昨日の夏目三久が司会する『あさチャン!』で,障害のある94歳の女性(オーストラリア人。顔の感じからすると白人ではありません)をビジネスクラスからエコノミークラスに移動させたというニュースが採りあげられていました。この女性はビジネスクラスのチケットをもっていたのですが,同行していた孫はエコミークラスにいて,介助のためにビジネスクラスにときどき行って祖母の世話をすることを許してもらおうと思っていたみたいです。行きの便は問題がなかったのですが,帰りの便では,CAが,孫がエコミークラスとビジネスクラスとの間を行ったり来たりすることはできないといい,孫がビジネスクラスの料金を払って移動するか,女性のほうをエコミークラスに移動させるかを選択せよと言われて,結局,後者となったようです。女性にとっては人生の最後の旅になるかもしれないということで,身体のことも考えて,孫たちがお金を集めてビジネスクラスのチケットを買ったのに,なんてひどいことをするCAだということで,番組ではコメンテータも含め,完全にユナイテッドが悪者扱いされていました。
 しかし,このケースに関しては,ユナイテッド側も十分反論ができそうです。エコミークラスの人が,いくら家族がビジネスクラスにいるとしても,そこに出入りすることが禁じられるのは仕方ないでしょう。一方,孫の女性は,それならCAが介助をしてほしいと申し出たそうですが,一般的な介助であればともかく,それ以上のことであればCAの業務ではないでしょう。介助などのために付き添いが必要な場合には,同伴しなければならないというのが,航空会社のルールでしょう。そうなると,ユナイテッドのCAの取った対応は,それほど問題はなかったのでは,という気もしてきます。とくにビジネスクラスの乗客からすると,同伴者がやるべき介助をCAにさせることによって,自分たちへのサービスが低下する可能性があるので,納得できないという人もいるかもしれません。
 ただもし自分が,この女性の家族の立場にあったら怒り心頭に発するでしょう。行きは良かったのに,なぜ帰りはダメかと言いたいこともわかります。ほんとうは行きもダメだったのでしょうが,CAがちょっとサービスしたのでしょう。そこで帰りも同じと期待したのですが,帰りはルールを厳格に適用するCAにぶちあたってしまったのでしょう。
 どちらに非があったのか,ほんとうのところはわかりません(ちなみに席を移動した新婚カップルやダブルブッキングとなった客を引きずり下ろしたなどのは,やり方には問題があったのでしょうが,テロ対策だった可能性もあります)。ただ,ここで問題にしたいのは,テレビが,可愛そうな乗客と極悪のユナイテッドという単純な図式でとらえ,乗客の立場だけからみた報道をしていたことです。障害者で,高齢者で,おそらく人種的マイノリティとなると,それだけで同情されるべきカテゴリーと推定されてしまいそうですが,そういう思い込みが真実を見誤ることはないか,ということです。   どんなことでも背景をみていけば,双方にそれなりの言い分があると考えるのが法律家です。裁判というのは,そういう発想によって成り立っています。感情論に流されることを避け,まずは逆の立場の人の意見を聞くという手続をふまなければならないというのが,リーガル・マインドなのです(経済学者なら,まずはデータを見ようと言うでしょうかね)。

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