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2017年4月18日 (火)

薬丸岳『誓約』

 薬丸岳『誓約』(幻冬舎文庫)を読みました。この著者の作品は初めてです(ネタバレ少々あり)。
 落合とバーの共同経営者となっているバーテンダーの向井は,妻と娘のいる幸福な生活を送っていました。しかし,向井には暗い過去がありました。向井の本名は高藤。向井は生まれつき顔にあざがある醜貌で,親からも捨てられ,世間からも不気味な獣扱いされていました。福祉施設で育った彼は,悪の道に手を染めます。あるとき,やくざと争いになって相手に大けがをさせ,命を狙われます。必死に逃げているとき,ひょんなことから坂本という老女(実際には50歳代)と出会い,親しくなります。高藤は,他人の戸籍を買って,整形手術を受ければ,ヤクザから逃れられると思い,坂本に借金を申し出ます。そのとき,彼女から,ある条件をつけられます。自分の娘は,二人の男性に陵辱され殺されたが,犯人は死刑にならなかった,自分はこの二人に復讐したいけれど,その体力もないし,末期ガンに冒されているため時間もない,そこでもしこの二人が出所したときに殺してくれることを約束してくれれば,500万円あげる,というのです。殺人の約束などできないが,どうせ坂本はすぐに死ぬし,出所は遠い先だと思い,高藤は坂本に殺人の約束をしたうえで,500万円をもらうのです。坂本は用心深く,逃走資金分だけ先に与え,高藤に逃げた先で免許証をとらせ,新たな戸籍上の名前と住所を確認したうえで,残金を支払いました。
 こうして高藤から向井になったのですが,あるとき向井のところに,この二人が出所したという手紙が届きます。向井は驚きます。あのときの約束の履行が求められているのです。そして,その手紙では,向井が約束を履行しなければ,向井の娘に復讐をするというのです。こうして,向井は追い込まれます。いまさら殺人などできるわけがありません。しかし,坂本を名乗る者の催促は必要でした。いったい誰がこんなことをしているのか。坂本はもう死んでいるはずです。必死に向井は脅迫者を探そうとしますが,みつかりません。
 というような流れで,追い込まれた向井の行動は緊迫感があります。しかし,脅迫者は,向井の近くにいる者に決まっているということで,犯人は限定されてくるのですが,そうであっても,なかなか確信させないところが,著者のうまいところです。
 最後の犯人の動機について,ネタのちょっと後出し感があり,どうかと思いましたが,かろうじて無理のない範囲で筋をつなげたというところでしょう。
 でも面白かったです。 ★★★(お風呂のなかで一気に読んでしまいました)

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