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2017年4月10日 (月)

復興大臣はなぜ激高したのか

 東日本大震災や福島第1原発事故に伴い全国に自主避難した人らへの住宅の無償提供が3月末に打ち切られたことについて,記者会見の場に立った今村雅弘復興大臣が,フリージャーナリストからの質問に,避難するか帰るかは自己責任と答弁したことや,その答弁に対する執拗な質問に対して激高したことが話題になっています。
 そこで興味深かったのは,この大臣が,記者会見は公式の場であって,論争する場ではないと発言していたことです。事前に準備があって,想定問答があるものは答えられるが,大臣の生の意見を聞くことは許されないという意味に受けとめられました。
 アメリカのトランプ大統領も,記者会見の場で,自分に不利な記事を書いていたメディアからの質問に,敵対的な態度をとったことが非難されていましたが,それとはちょっとレベルが違うような気がしました。
 今村大臣は何に怒ったのでしょうか。この記者会見では,別に今村大臣に不利な質問がなされたわけではなく,自己責任だとすることに疑問を投げかけられただけです。こういう質問は,本来なら責任大臣としては当然準備されているべきものです。敵対的な質問はかえって有り難く,それを受けて,準備されているはずの答えを公の場で堂々と発表すればいいのです。
 この大臣は,そういう答えをする準備をしていなかったのでしょう。おそらく,自主避難者に対する政策をどうするかについて,自分なりのしっかりした意見を持っていなかったのでしょう。そこで役人を呼びよせることもできず,かといって自分で答える能力もないため,怒ってその場を去ることしかできなかったのでしょう。
 野党はいつものように大臣の資質が疑わしいので罷免せよ,首相の任命責任はどうなる,と声を上げています。何かあるとすぐに罷免や辞職を求めるのはどうかと思いますが,今回のことについては,そういう要求をされても仕方ないような気もします。
 日本の大臣の多くは,専門外のポストにつけられ,官僚によって支えられているだけで,公式発言は全て官僚によって書かれたセリフどおりのものです。官僚に必要なのは,しっかり自分たちの言っていることを一言一句間違えずに発言するロボット大臣です。しっかり読んだから,立派な大臣だという,驚くべき状況です(ゼミの報告で,学生が自分で入力しているはずの文章の漢字を読むことができず,コピペをしていたことがばれたというケースがありましたが,首相が漢字を読めなかったということもありましたね)。
 これは官僚が役所を支配していることでもありますが,大臣に恩を売るという意味もあるのでしょう。もちろん役人は大臣を表面的には支えますが,心の中では完全に馬鹿にしています。
 役人作成のセリフは,実は,どの役所でもあります。私が経験している範囲でも,たとえば兵庫地方労働審議会では,会長の私にはセリフの書かれたシナリオが渡されます。私はアドリブが好きなので,そのとおりには読みません。ただ,最後の終了などについてセリフを飛ばして突然終わったりすると,役人はうろうろしてしまいます。また,かつては兵庫県労働委員会でも,調査期日における委員のセリフが書かれていました。読み方を間違えそうな漢字にはフリガナも振ってありました。これらは純粋に善意によるものでしょう。ただ,役人以外の人はバカだと思われていて,バカが恥をかかないようにという配慮なのかもしれません。もっとも,そういう準備をしてもらえるのが偉くなった証拠だと勘違いしてる人も多いのですが。
 あまりにもバカバカしい提案なのですが,公式の場で発言する人には,自分の言葉で話せる人を選びませんか。大臣にしろ,政府関係の委員にしろ,です。
 今日も日本中のいろんな役所で,役人がセリフをつくり,それを棒読みする大臣,座長,委員長がいて,タイムキーピングたすべてで,議事がつつがなく終わればよし,とする非生産的なことが行われていることでしょう。情けないことです。

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