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2017年4月 4日 (火)

又吉直樹『火花』

 又吉直樹『火花』(文藝春秋)を読みました。文庫化されたので,やっと買ってみました。ある漫才師の青春物語という感じでしょうか。「あほんだら」という漫才師の先輩の神谷に弟子入りした,スパークスの徳永が,悩み,苦しみ,もがく青春物語だと思いました。
 世渡りが下手で破滅的な人生を送るが,とても人間くさく,芸に人生のすべてを賭けている神谷。常識的なところがある徳永は,神谷にはとてもついていけないと思いながらも,その才能に敬意を表し,そのプロとしての芸人魂に大きく感化されます(最後には,無謀な豊胸手術までしてしまうところは,意表をつかれました)。その一方で,徳永は,神谷に何とかもう少しうまく生きてもらえないかという,歯がゆさを感じているところもあります。
 私には,とても切ない小説でした。漫才師が主人公の小説を漫才師が書いたという感じはしませんでした。一つの道を究めようとする不器用な神谷に深い共感を感じると同時に,その神谷をとことん見捨ることはしないで,心のどこかで慕っている徳永の存在にほっとするものを感じたのです。
 でも,そのような読み方は,著者の意図とは違うのかもしれません。この小説の冒頭と最後は花火のシーンです。しかし,書名は「火花」です。華やかな花火の脇で売れない漫才をやらされたときに出会った二人。「火花」を散らすような熱い戦いの始まりだったということなのかもしれません。でも私には,それほどの「火花」は二人には感じられなかったのです。むしろ神谷が世間・社会に対して「火花」を散らして戦っていたのかもしれません。
 いずれにせよ,話題だけでとった芥川賞ではないと思います。 ★★★(話題作でもあるので,読んでみて損はないでしょう)

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