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2017年4月25日 (火)

折原一・新津きよみ『二重生活』

 1996年刊行の単行本の2度目の文庫化です。うまいミステリー小説でしたね(以下,ネタバレあり)。
 プロローグで,ある女性が,侵入者に殺されてしまいます。侵入者は,宝石などを奪いますが,目的はその女性を殺すだけにあったようです。
 本編に入り,主人公は,夫の正宏がMRで,妻の亜紀が女医の藤森夫婦。夫の長野転勤により別居生活となり,週末婚状況です。妻は,探偵事務所に,夫が転勤先の松本で,愛人を囲っているようなので,そのことを調査して欲しいと依頼してきます。調査はあっさり終わり,夫の正宏は,社宅以外に別宅があり,そこでは表札が藤森で,下に「弓子」と書かれていました。近所の噂でも,正宏が愛人を囲っているということでした。正宏の浮気による二重生活は確定的でした。
 松本での正宏と「ユミ」の出会いは偶然でしたが,看護婦を目指していたユミは,両親を亡くし,必死にのし上がろうと思っていました。そんなユミに正宏は金銭的な援助をするうちに親しくなり,二人は結婚します。しかし,正宏は婚姻届は出さないままでした。正宏はすでに結婚していたからです。そのうち,この二重生活がユミにばれてしまい,ユミは正宏の正妻に復讐しようとします。そして,それはうまく成功するのです。
 ここで読者は,プロローグで,藤森亜紀が殺されたのだと思い込まれます。
 亜紀は,実は正宏の浮気疑惑の真相がすぐにわかりました。そして松本まで行って正宏と会い,今後のことを話し合います。その後,亜紀は正宏を殺す計画を立て,実行に移して成功します。
 ここで読者は頭を整理しなければなりません。時間的には,その殺人は亜紀が殺される前のことでなければおかしいはずです(亜紀の正宏殺人⇒ユミの亜紀殺人)。つまり,女医として成功している亜紀は,自分に隠れて二重生活をしている夫を許せなくなり殺害するが,夫の浮気相手により殺されたという話のように思います。
 ところが,正宏の葬式に現れた弓子が,実は藤森の娘であったという衝撃の事実が読者に伝えられて,話は大きく展開します。ここで,現在の話(探偵事務所の浮気調査報告書)と14年前のこと(ユミの日記)が同時並行で語られていたことを読者は知らされます。
 亜紀は,かつて看護婦を目指す苦学生でした。松本で,亜紀(ユミ)と出会った正宏は,亜紀を資金的に助けるなか,恋に落ち結婚しますが,正宏には埼玉の入間に妻子がいました。結局,正宏は正妻のもとに帰って,ユミは捨てられます。正宏の家庭を崩壊させるために,正宏の正妻の愛子を殺します。それが冒頭のプロローグのシーンでした。
 医療系で働きたいという強い希望をもっていた亜紀は,正宏を失った後,ユミという名で夜のアルバイトをして必死に学費を稼ぎ,そして女医にまでのしあがります。それから10年以上経って,亜紀の地区を偶然に担当していた正宏は亜紀と再会し,夫婦となります。そこには二人の打算がありましたが,亜紀は危険になった正宏を殺します。殺人の原因は浮気ではなかったのです。
 その亜紀も,誰かから脅迫されていました。それは亜紀が愛子を殺した後,女医になった今まで続いているユミとしての部分が関係しているのです。亜紀もまた二重生活をしていたのでした。
  時代的に古くさい感じがあるのですが,内容は素晴らしい。夫婦の合作ですが,うまくかみあって傑作と呼ぶにふわさしい推理小説となっています。 ★★★★(読み出したら止まりません)

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