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2017年3月14日 (火)

フリーランスの保険

 経済産業省で設置されていた「雇用関係によらない働き方研究会」の報告書案がネットでアップされています。私も一度ゲストでプレゼンをした関係で,連絡を受けていました。私が12月にしたプレゼンでは,労働法の観点から,非労働者についての政策的対応のあり方や理論的位置づけについて話をしていました。
 雇用関係による働き方が厚生労働省の管轄であるのに対し,雇用関係によらない働き方は経済産業省の管轄ということかもしれません。昨年の厚生労働省の「働き方の未来2035」で,私は自営的な就労に対する政策的対応の重要性を主張し,厚労省の方にも自営的就労のことを扱うつもりがあるのかと会議の場(私はWEB参加)で質問したことがありました。そこでは肯定的な返事でしたが,力強さはありませんでした。おそらく,このテーマに最も的確に反応してくれているのが,現時点では経済産業省です。もちろんこれからは,関連省庁が手を携えて政策立案をしていく必要があるのは言うまでもありません(とくに経済産業省は,「熱しやすく冷めやすい」傾向があるように思えますので……)。
 今回の資料を見てると,経済産業省は,伝統的な働き方である正社員から外れるものとして,①兼業・副業,②雇用関係によらない働き方,③テレワークという3つの分野に狙いを定めているようです。兼業・副業やテレワークは雇用関係による働き方でもあり得るのですが,自営で働くほうが,この働き方をより活かすことができるでしょう。
 つまり自営的テレワークがこれからの働き方の主流になるわけで,そうなると自営的な副業もふえ,さらに独立してもっぱら自営的に働くということも増えていくでしょう。このシナリオは,私には現実的なものと思えていて,今回の「雇用関係によらない働き方研究会」は,まさにタイムリーなものでした。
 研究者の立場から,私たちは,自営的就労の問題にできるだけ早く取り組んで,きちんとした法体系を構築することが必要と考えています(このことは,日本労働法学界の新しい講座にも書いているので,早く刊行されて欲しいですね。原稿が遅れに遅れていた私が言うのも何ですが)。残業規制や同一労働同一賃金などは,大きな改革の流れのなかでみると,実はそれほど重要ではないのです。拙著の『AI時代の働き方と法-2035年の労働法を考える』(弘文堂)で,長時間労働や非正社員問題の扱いが大きくないのも,そのためです。自営的就労を視野に入れた政策については,同書の第7章をぜひご覧になってください。
 ところで,今朝の日経新聞では,「政府は特定企業に属さずに働くフリーランスを支援するため,失業や出産の際に所得補償を受け取れる団体保険の創設を提言する。損害保険大手と商品を設計し,来年度から民間で発売してもらう。」と出ていました。
 報告書の中に,働き手のセーフティネットとして,「新たな民間保険の創設の検討・周知・活用による,休業時の補償制度の充実」とあり,これに連動したものでしょう。相変わらず日経新聞と経済産業省の連携は早いですね。拙著では,社会保険制度の見直しということを書いていますが,経済産業省の報告書なので,厚生労働省の本丸にまでは,いきなり手をつけはしないということでしょうか。
 また,「政府は契約ルールを明確にしたガイドライン作成を企業に求める」と記事に出ていました。民法や商法が適用されることになる自営業者の契約について,何らかの契約ルールが必要であるということも,拙著では書いていました。
 この点については先日の北九州市立大学でのシンポジウムで,静岡大学の本庄淳志君が,自営業者の契約には約款が使われるのではないかと予想し,債権法改正で新たに導入される約款規制の適用や解釈について検討してくれました。私は個別的な契約が増えるのではないかと漠然と考えていたのですが,たしかに仕事によっては約款が使われる可能性は高いのでしょう。今後は民法学の動向も気にしながら,自営(独立)労働契約のルールのあり方について考えていくことが必要だと再認識させられました。

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