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2017年3月 6日 (月)

天下り問題に思う

 2月22日の毎日新聞(電子版)に,今回の文科省OBの早稲田大学への天下り問題について,「文科省は依頼があっせん行為にあたるとして国家公務員法違反と認定したが,早大内部では『大学の自治の侵害』と批判が出ている。」という記事が出ていました(http://mainichi.jp/articles/20170222/k00/00m/040/136000c)。これを最初読んだとき,「認定したが」の「が」を逆接だと思い,早大内部から,国家公務員法違反との認定を,「大学の自治の侵害」とする意見があったのかと思ってしまいました。ただ,あとの文章を読むと批判の対象は「あっせん行為」のことなのですね。
 よく考えると当然そう読めるのですが,私の頭のなかに,天下りを受け入れるかどうかは,大学側にとっての自治の問題であるという主張もありそうかなと思い,早稲田クラスになると,そんな主張もするのかなと一瞬思ってしまったのです。
 私は,天下りには,良い人材の確保という意味もあり,頭から批判すべきではないという立場です(そのような趣旨のことは,拙著『雇用社会の25の疑問(第2版)』(弘文堂)の第17話「公務員には,本当に身分保障はあるのか」のなかでも書いています)。厚生労働省で経験をつみ,知識も豊富で,見識も高い人が,退職後にJILPTの幹部としてやってくることには何も問題はないと思っています。
 ただ,これも人材の活用という視点からのものであり,役所のほうから人事を押しつけるとか,役所と通じていることしか価値のないような人材の天下りを受け入れるということであればダメでしょう。
 受入れ側も,補助金をとりやすいからといった理由でやっていると,天下りを受け入れていないところとの不公平感が生じ,国民からの厳しい批判にさらされざるをえないでしょう。
 ところで,天下り規制は,国家公務員法106条の2以下にあります(http://www5.cao.go.jp/kanshi/gaiyou.html)。
 国家公務員法に規定する再就職等規制には,①他の職員・元職員の再就職依頼・情報提供等規制(106条の2),②現職職員による利害関係企業等への求職活動規制(106条の3),③再就職者(元職員)による元の職場への働きかけ規制(106条の4)の3つがあります。
  ①については,職業安定法,船員職業安定法その他の法令の定める職業の安定に関する事務として行う場合,独立行政法人,特殊法人等に現役出向させる場合,官民人材交流センターの職員がその職務として行う場合は例外となっています(106条の2第2項)。
  ①についての独立行政法人等への現役出向が例外というのは,なんだかミエミエの例外でくすっと笑いたくなります。別にこれをダメと言いたいわけではありませんが,人材の活用という視点からいうと,その法人の業務に必要な能力をもっているかどうかというチェックは必要です。人事交流は重要という意見もあるでしょうが,私はある程度の年齢までならともかく,幹部クラスになってからの単なる人事交流は有害であることが多いのではないか,という印象をもっています。あくまで印象論ですが。
  法科大学院では,裁判官や検察官に実務家教員として来てもらっていますが,これはもちろん大学側がお願いして来てもらうのであり,そして来ていただいた人も,プロとしての責任感をもって実によく働いてくださっていると思います。これは,大学に足りない専門性を補充する人材の活用のためのものです。もし裁判所から,大学側が頼んでもいないのに,特定の裁判官を受け入れてもらえないかという押し込み(推薦との違いは微妙ですが)があるということがあれば,これはやはり問題でしょう。刑事事件をかかえそうな大学の役職者が,将来のことを考えて,裁判所に恩を売るために受け入れるというようなことになれば大問題です。日本ではまずありえないことですが,外国の映画になら,出てきそうなシーンですね。
  いずれにせよ,天下りについては,役所が,いろんな規制のルールを作り,それを遵守するためには,役人の智恵が必要だから,うちの役所OBを受け入れていたほうがよいですよ,というような形で,いわばポストの確保のための規制の増大が起こりかねないという点が問題です。
  役所にいる優秀な人材の活用,役人自体の職業選択の自由を十分に尊重するためには,現行の国家公務員法のルールは,それが厳しすぎるように思えたとしても遵守し,たとえ違法ではない方法であっても,規制をかいくぐるような抜け道を使うことも控え,国民の信用を高めていくしかありません。それをやってくれなければ,こちらは退職公務員の活用の応援をしたくてもできなくなってしまいます。この意味で,文科省の今回の問題はかなり深刻です(それに多くの国民は,他の省庁もやっていると思っています)。猛省が必要でしょう。

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