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2017年3月10日 (金)

佐藤博樹・武石恵美子編『ダイバーシティ経営と人材活用』

 佐藤博樹・武石恵美子編『ダイバーシティ経営と人材活用―多様な働き方を支援する企業の取り組み』(東京大学出版会)を,お送りいただきました。いつもどうもりあとうございます。
 ダイバーシティーが書名に入っていますが,大きく分けて転勤,女性活躍支援,ワークライフバランス,仕事と介護(ガン治療)との両立,というテーマで構成されています。個人的に興味をもったテーマは,転勤と介護です。
 転勤は,正社員である以上,避けられないこととされていました(私は『雇用社会の25の疑問』(弘文堂)では,転勤は「雇用社会の掟」と書いていました)。しかし本書の分析結果では,「転勤経験は能力開発に有意な関係があるとはいえないことが明らかになった」(61頁)とされています。
 前にも書いたことがありますが,転勤は,正社員の忠誠度を問うような精神的な意味合いが強く,現在においてどれだけの意味があるのかには疑問もありました。これまでやってきたから続けているという面もあるのではないでしょうか。人事管理の専門書において,こうした点の問いかけがなされ,実証的に検討していくことの意義は小さくないでしょう。こうした研究の積み重ねが,企業の人事管理に影響を及ぼし,さらに裁判所の転勤命令の権利濫用に対する甘い判断(企業側に甘い判断)を見直すきっかけになればと思います。
 介護については,介護ヘルパーへの調査をとおして,介護者の仕事と介護の両立を検討しようとしているところも興味深かったです。たしかに労働者が両親などの家族の介護をしていくうえにおいて,ケアマネジャーのサポートは重要です。もっとも今日の問題は,ケアマネジャーをはじめとする介護労働者の不足というところにあります。雇用政策的には,こちらのほうも重要でしょうね。
 いずれにせよ1冊で,多様な働き方に関する重要論点が,実態調査などを通じて丁寧に分析されている点で,労働の研究に従事する者の多くが参照すべき文献であると思います。

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