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2017年3月 4日 (土)

三題噺

 昨日(3月3日)の日経新聞における,フランスの大統領選挙,シンガポールの無人国家,伊藤忠のAIビジネスの記事は,私の頭のなかで3つつながりました。

 フランスの大統領選挙については,中道系のマクロン氏の政権公約が記事となっていましたが,それと対照するための中道左派の候補の公約のなかに,ロボット課税というのが入っていました。ロボット課税が正面からフランス大統領選の争点となるかどうかは不明ですが,日経新聞でもときどき海外の話題として取り上げられています(ビル・ゲイツの議論など)。

 AIやロボットの発展に対して雇用を奪うという観点から,政治的に抑制をかけようとする動きを,私は現代版ラッダイト運動と呼んでいます。今日ではさすがに物理的な暴力はないとしても,たとえば雇用を大きく奪うような先端技術の研究開発に予算をつけないという形の締め付けはありえますし,端的に開発を禁止するということもないとはいえません。形を変えて,先端技術を利用して利益を得た企業に課税をして雇用を失った者への所得補償に回すという再分配政策の財源とするという発想もあります。私は,再分配政策はともかく,技術発展を抑制しようとする政策は間違ったものと思っています。日本だけそうした政策をとっても,グローバル化はますます深化するので,国内のAIやロボットに雇用を奪われるか,先端技術を使った海外の企業に雇用を奪われるかの違いだけです。

 次に,シンガポールの実験は,「半ば強制的に現場作業に携わる職場を減らし,限りある人口を生産性の高い分野に振り向ける」というものです。先端技術を使って効率化できるところは徹底的に効率化して,人材を高付加価値の期待できるところに集中させるというものです。企業がやりそうなことですが,シンガポールくらいの規模であれば国家がやってしまうということでしょう。日本の労働者が楽観しているのは,日本の企業はそんなことはやるわけないと高をくくっているのです。でも,ほんとうに競争にさらされるとどうなるでるでしょうか。 

 この記事では,「みんながスキルを上げるなんて無理」という不安を示す女性の意見が紹介されています。確かに,そうでしょう。ロボット課税といったポピュリズム政策は,こうしたところから生まれてくる可能性があります。でも,立ち向かう必要があるのです。国の職業政策や教育の重要性は,いままで以上に,飛躍的に高まります。

 そして伊藤忠の話しとなります。伊藤忠商事が,AIを使って小売店の運営を効率化する,という記事です。まさにシンガポールで起こっていることを,技術的にサポートすることがビジネスとして展開されようとしているのです。この日の1面では政府の「物流 30年完全無人化」計画も紹介されていました。

 こういう記事をみていると,AI時代のビジネスが変わり,そうして働き方が変わり,そしてそれに必要な政策も変わるということが見えてきます。ということで,より詳しく考えたい方のために,拙著『AI時代の働き方と法』(弘文堂)を宣伝しておきます(最近,このテーマでの取材依頼が結構来るのですが,内閣府やNIRAのサイト経由で,拙著の存在を知らずに依頼してくる人が多いのです・・・)。

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