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2017年3月31日 (金)

両角他著『リーガルクエスト 労働法(第3版)』

 両角道代・森戸英幸・梶川敦子・水町勇一郎『労働法(第3版)』(有斐閣)をいただきました。いつも,どうもありがとうございます。内容的には共著の本であるので,特に目立った特徴はありませんが,あえて言うならば,各編の扉のところに引用されている文章かと思いますので,少しだけ反応しておきます。
 第1編「労働法総論」では,アメリカの労働法学者のSummersの言葉が引用されています。「守護神の転換」のことが書かれています。労働者を守るのは,労働組合から法律に変わっていくという意味で,他国が労働法規制緩和の動きがあるなか,アメリカは一見するとその逆の規制強化の動きがあるところが,日本でも注目されていました。このフレーズをあえてもってきたということは,著者たちは,日本でも,大きな流れは,アメリカのようだと言いたいのでしょうか。といっても,そもそも日本では,労働組合が労働者を守っていたという実態がこれまでどこまであったかという疑問があります。また,最近の立法は,非正社員に対するものが中心で,守護神の転換というより,守護神が不在のなかで新たに登場してきたというところでしょう。ただ,この理解が正しければ,これが労働法総論のところに書かれているとすると,労働法は,非正社員のための法律になったということにもなりそうですね。
 第2編「雇用関係法」では,フランスの労働法学者のSupiotの言葉が引用されています。労働者は,労働契約の主体であると同時に客体でもある,というところに,この契約の特徴があるということです。主体としての意思,客体としての肉体。こういう二分法・二項対立で考えていくところが,欧州的な思考様式です。尊重されるべき意思と守られるべき肉体。その相克は,私に言わせれば,AI時代にはアウフヘーベンされていくのです。
 第3編「労使関係法」では,一転して,日本の労働法学者の石川吉右衛門先生の『労使関係手帖』からの引用がなされています。御用組合であってもまずは労働組合を作ることが望ましい,という言葉をもってきているのは,現在の日本の企業別組合に対する強烈な皮肉なのでしょうか。それとも日本の労働組合というものの本質を的確に見抜いていた石川先生へのオマージュでしょうか。いずれにせよ,今日,戦うコミュニティーユニオンが出てくるなか,日本的な企業別組合のありかたが根本的に問い直されていると思っています。
 第4編「労働市場法」は,経済学者のカール・ポラニーの言葉を引用しています。労働市場は,通常の商品を扱う市場ではないというのは,よく言われていることです(ILOのフィラデルフィア宣言)。ポラニーを引用するということは,労働は擬制商品であるという立場(本来は商品として取引されるべきものではないということ)に与するということでしょう。もちろん,それは労働法的には普通の考え方です。この本のもつオーソドックスなスタンスがよく現れています。私のような異端派は,少なくともこれからは,商品価値の高い労働者になれと主張をするのですが。
 第5編「労働紛争解決法」は,アメリカの政策委員会報告書が引用されていますが,それほど有り難い言葉は含まれていません。ややネタ切れでしょうか。
 ただ,この第5編の内容は,菅野先生の教科書でもどんどん肥大化している部分で,今日の労働法の教科書には標準装備になりつつあります。労働法が紛争解決法も取りこんでいくというのは興味深い進化であり,これは世界的な傾向のようです。

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