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2017年2月18日 (土)

百田尚樹『影法師』

 藤沢周平の『蝉しぐれ』もよかったですが,わりと似たような展開(江戸時代で,若いときに父を失い,苦労して出世していく話)で,この作品もよかったです。ずいぶん前に話題になった本ですが,まだ読んでいなかったと思うので読んでみました。ラストで,主人公の勘一がこれえきれず泣くシーンでは,読者も涙をこらえることは難しいでしょう。
 話は,勘一の刎頸の友,彦四郎が死んだという知らせが飛び込んできたところから始まります。彦四郎は剣の達人で,優秀で,将来を嘱望されていた好漢ですが,昔からどこか恬淡としたところがあります。そんな彦四郎が,どうして徐々に人生のレールから脱線し,不遇の晩年を送ったのか。下士の家に生まれながら,主君に見込まれて異例の出世をとげた勘一が,彦四郎の過去を振り返っていく話です。
 勘一が筆頭家老として,22年ぶりに江戸から帰藩したとき,勘一の前に島貫という男が現れました。勘一は,新田開発の手柄で藩を財政窮乏から脱却させ,その功績で出世していったのですが,当初,それを妨害していたのが,藩政を牛耳っていた滝本家でした。勘一は,自分の事業を妨害する滝本の息子を討ち,後に滝本家の不正も暴いていますが,島貫は,その当時,滝本家から江戸への道中にある勘一を討つように依頼されていた刺客でした。
 しかし勘一は島貫によって討たれませんでした。それはなぜか。勘一を藩のために役立つ存在だと見込んだ彦四郎が,自分の人生を投げ打って,勘一を影から助けていたのです。
 武士の間でも身分の違いで人生の可能性が大きく変わり,また男性でも長男とそれ以外では運命が変わる江戸時代の男たち。そんな時代の男の生き様や友情を,見事に描いた傑作です(彦四郎の家にいた下女のみねと勘一,そして彦四郎の間の恋の物語もあり,文庫版の付録でその部分も追加されていますが,この付録はなくてもよかったのではないかという気もします)。 ★★★★(心が洗われます)

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