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2017年2月20日 (月)

プレミアムフライデーについて考える

 2月24日はプレミアムフライデーだそうで,午後3時に仕事を終えようということのようです。人々は休息をとり,消費活動への時間に回してもらうということでしょう。実際,企業のなかには,これに呼応して,3時終業というところにしようとするところが出てきているようです。
 まずこの2月24日という日は,少なくとも今年は,あまりよい日ではないのです。ご存じのように2月25日は国立大学の前期日程の入学試験(2次試験)がある日です。これに影響を受ける人が全国にどれぐらいいるのかわかりませんが,入試前日は大学の教職員は多忙ですし,受験生やその家族は,とても悠長に買い物などしている余裕はないでしょう。どうせなら国民全体がもっと盛り上がる日にスタートしてもらいたかったものです。国立大学関係者は2月25日は入試の日というのは常識ですが,世間ではそうではないのでしょうね。こちらは皆さんの楽しそうな週末を横目で見ているしかないようです。
 それはともかく,少し気になるのは,午後3時に終業というのはいいのですが,企業側は所定労働時間までの時間(短縮した時間)を有給にするといっている点です。これは,まさか年次有給休暇の取得を強要するということではないでしょうね。言うまでもなく,年次有給休暇の時季指定は,労働者が自由にできるものであり,計画年休協定があるような例外を除くと,この自由は不可侵です。年次有給休暇の取得を促すといったことであっても,やり方によっては違法となる可能性があります。したがって各企業は,年次有給休暇をもし使うというのであれば,過半数代表との間で計画年休協定を締結しておく必要があるでしょう。計画年休協定は,三六協定と異なって,免罰的効力にとどまらない私法上の効力をもっています(この意味がわからない方は,拙著『いまさら聞けない!?雇用社会のルール』(日本労務研究会)の282頁以下を参照)。
 どうせ年休なんてフルに活用していないのだから,多少,企業が強く取得を促す程度のことがあってもよいというのは,わからないわけではありません。実際私は,年次有給休暇の企業主導での取得を提言していますし(拙著『労働時間制度改革』(中央経済社)の200頁以下を参照),労働基準法の改正案においても,年休の一部を使用者主導で取得させることが提案されています。ただ,これはあくまで立法論であって,現段階では年次有給休暇の取得に関して企業が労働者の意思決定に介入することは許されてはいません。
 実際に耳にする話として,企業が自己の都合で,従業員を早く帰らせるようなとき,年次有給休暇の取得を求めるということがあるようです。これは,給料を減らさないようにするための配慮なのかもしれませんが,違法な取扱いです。企業の都合で従業員を早く帰らせるのであれば,それは労働基準法26条の休業手当の適用問題となり,労働者は年次有給休暇日数を減らすことなく,平均賃金の6割を企業に請求することができるのです(民法の規定を適用すれば,100%請求できる可能性もあります。前掲『いまさら聞けない!?雇用社会のルール』のTheme14「働かなくても,給料がもらえることはあるの?」を参照)。
 理由に関係なく休むときには年休でね,と求める経営者がいることを考えると,いくら年次有給休暇の取得率が低いからといって,プレミアムフライデーにその充当を促すことは望ましいことではないでしょう。まさか大企業がそんなことをやるとは考えられませんが,新聞の報道においては「有給」としか書かれていないので,これは年次有給休暇か,労働基準法26条の休業手当か,あるいは特別なプレミアムフライデー手当のようなものなのかはっきりしないので,念のために書いておきました。
 とくに月給の人は賃金を減額しないとしてくれればいいだけですが,時給の人にとっては,この点はとても重要になってくると思います。
  プレミアムフライデーは,ビジネスガイド(日本法令)の「キーワードからみた労働法」でも採りあげるつもりです(ちなみに次号のテーマは「介護離職ゼロ」です)。

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