« 労働組合の役割とは? | トップページ | 浦賀和宏『彼女は存在しない』 »

2017年2月24日 (金)

まさきとしか『完璧な母親』

   まさきとしか『完璧な母親』(幻冬舎文庫)を読みました。ちょっと角田光代っぽい出だしに思えましたが,それはともかく,途中から止まらなくなるサスペンスです。これも半身浴2時間コースですね。
 自分の不注意で6歳の男児(波琉)を溺死させてしまった知可子は,その後,ちょうど同じ誕生日に生まれた女の子を,亡くした男の子の生まれ変わりと思います。この女の子は波琉子と名付けられ,そして知可子は波琉子を死んだ兄の生まれ変わりと信じて育てます。知可子は,息子への贖罪の意識からでしょうが,波琉子には完璧な母親になろうとします。波琉子も,兄の生まれ変わりと信じるようになるのです(母親に刷り込まれる)が,どうしても事故のときの記憶がありません。
 話は変わって,母に虐待されて育てられた成彦。姉の秋絵は大事にされるのに,息子の自分は毛嫌いされて育てられました。成彦にはその理由がわかりません。その後,母は事件を起こし,父母は離婚し,姉は母に引き取れていました。それから何年か経って,婚約者ができた成彦は,自分の家族である母と姉に会いにいこうとします。そしてそこで姉から,自分は男の子の生まれ変わりなの,という話を聞きます。
 というように,まったく違った家庭で二人の女性(波琉子と秋絵)が,男の子の生まれ変わりだというのです。これが実は同じ男の子のことだったのです。
 徐々に男の子の死の真相が浮かびあがってきます。二つの家庭はもともと近所に住んでいたという接点がありました。そして,なぜ波琉子に事故の記憶がないのか,秋絵はなぜ自分を溺死した男児の生まれ変わりと思い込んだのか,成彦はなぜ母親に嫌われたのかが明らかにされていきます。
 波瑠子の母も秋絵の母もそれぞれ必死に自分の子を愛していました。しかし,それぞれどこか狂った,あるいは偏ったものだったのです。母の愛のことを,ふと命日(厳密にいえば死亡時は零時を過ぎていたので,その前日ですが)に思ってしまいました。       

    ★★★★(母の子に対する愛を素材にしたちょっと切ないミステリー)

|

« 労働組合の役割とは? | トップページ | 浦賀和宏『彼女は存在しない』 »

読書ノート」カテゴリの記事