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2017年2月 7日 (火)

日経新聞からもう一つ

 一昨日の日経新聞日曜版の「創論 外国人材受け入れ,機は熟したか」での経営共創基盤CEOの冨山和彦氏の意見はよかったです(この方は,よく日経新聞に出てきていますね)。冨山氏とは,昨年,厚生労働省関係の仕事で一緒になることがあり,労働・雇用政策については,ちょっと乱暴な意見を言う困った人だなと思っていたのですが,今回の外国人政策に関する内容は,すみからすみまでほぼ賛成です。
 私は移民の経験はありませんが,2年弱+1年弱の留学経験があります。移住というほどではありませんが,外国人との共生の難しさは,少しは肌で感じています。
 以前からブログで書いていることですが,人々の内心にある差別意識というのはそう簡単にはなくならないのであり(それを露骨に表面化させることが良くないのは当然ですが),たんに多文化共生がよいとかそんな綺麗ごとではなく,国益を考えて必要な人材は来てもらうことが必要なのです。ほんの数%のトップエリートを除き,真の意味での共生は難しく受け入れると社会的コンフリクトは避けられないのであり,グローバル化といった抽象的な理念だけで移民政策を進めれば子孫に禍根を残します。労働力不足の問題については冷静な戦略に基づき,代替策(機械化の推進等)のほうを優先すべきで,(とくに単純労働を)外国人に頼るのは最後の手段にすべきです。
 Trump政権の移民への対応が話題になっていますが,これは安倍首相が言うように国内問題という面もあり,日本には日本独自の,アメリカにはアメリカ独自の移民政策があるのです(ただアメリカは,国内問題とはいえ,世界への影響が大きすぎるので,その観点からなら,安倍首相はアメリカの移民政策についてもっと発言してもよいし,そうすべきなのでしょう)。
 日経新聞に戻ると,冨山氏以外にもう一人登場したのが,サントリーホールディングス社長の新浪剛史氏でした(この方も日経新聞の常連ですね)。新浪氏の意見は,多少甘いような気がしました。たとえば,技能実習制度について,「言いたいことは,手に職を持っている人材,手に職を持てるだけの技術を持っている人材,もしくは持てるようになる人材を受け入れるということだ。スキルを身につけたい人材に来てもらい,そういう人材に社会として報いていく。定義的には移民ではないと思う。研修だ。ただ,既存の制度は不十分であることは理解しているので,直すべきものは直していくべきだ。」と述べています。この理想の重要性は否定しませんが,日本にはチープレイバーを必要とする中小企業が多数あり,一方で,少しでも生活を楽にしたいと思っているアジアの人々がたくさんいて,その両者を結びつける単純労働の労働市場(ヤミ市場といってよいでしょう)があるということを考えた場合,技能実習制度は,実態にあわせてそういう制度と割り切ってしまうか,そうでなければ廃止してしまうか,しかないような気がしています。冨山氏の立場は後者のようであり,私もそのほうがよいのではないかという気がしています(牡蠣の殻むきをやる人がいなくなっても,それこそ機械化で対応すべきでしょう)。この制度において,日本人が外国人を奴隷のようにこき使っているという濫用事例があることは事実なのであり,これは現在の日本社会の最大の恥部の一つかもしれないのです。新浪氏の「直すべきは直す」というのは,どこをどう直すのかを提示しなければ説得力がないような気がします。むしろ技能実習制度のもつ途上国の人材育成や基礎技能の移転という目的は,日本企業の海外進出にともなう現地の若年者の採用の助成といった形でやっていくべきではないでしょうか(もうやっているのでしょうが)。 

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