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2017年1月26日 (木)

残業上限80時間?

 労働時間の絶対的上限規制の導入への動きが本格化しそうですが,当然のことながら,時間数と規制の手法が問題となるでしょう。この二つは関係していて,緩い時間数なら刑事罰が妥当でしょうし,厳しい時間数ならサンクションをもう少し緩和させるということになるのかなと思います。また変形制の設け方も,規制の強度に関係してきます。
 数日前の日経新聞の記事によると,2月1日の働き方改革実現会議で,月60~80時間を軸に,違反企業には罰則も設けるという方向で検討を始め,厚生労働省が年内に労働基準法改正案を提出するとなっています。これは現行の法定労働時間と例外の三六協定という仕組みをやめるということでしょうかね。
 私が『労働時間制度改革』(2015年,中央経済社)で行った提案は,三六協定と強行的な割増賃金はやめることを前提に,現在の法定労働時間(1週40時間,1日8時間)ではなく,時間外労働の限度時間違反のところで罰則を課すこととし,それを上回ることは許さないという内容のものです(絶対的上限については,同書の194頁を参照)。変形制を設けることはあってもいいのかもしれませんが,それならなおさら現在の限度時間を大きく上回る時間数を絶対的上限とするのは,緩すぎるということになるでしょう。経済界への配慮ということかもしれませんが,これではとても「働き方改革」とはいえないでしょう。
 ただ私の厳しい提案は,同書の他の箇所でも述べているように,強行的な割増賃金をなしにするということを前提とし(188頁以下),また創造的な働き方をする人には積極的に適用除外することも前提なので(208頁以下),規制の弾力化とセットです。
 政府は,適用除外(日本型ホワイトカラー・エグゼンプション。日経新聞は「脱時間給」という変な表現を使い続けていますが)の対象を広げず,現行の割増賃金規制も維持するということを前提に,労働時間の長さの上限は緩くするという方針かもしれませんが,そういう妥協的なやり方ではダメだと思っています。
 政府は,何かやったという実績を国民にアピールすることだけを考えるのではなく,日本の労働時間制度のあり方を根本から再構築するという気概をもってこの問題に着手してもらいたいです。とくにホワイトカラー・エグゼンプションの重要性は,新刊の『AI時代の働き方と法』(弘文堂)の第6章でも,またしつこく論じているので,ご関心のある方は読んでみてください。

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