« 天皇退位論に思う | トップページ | カジノ法に思う »

2016年12月 6日 (火)

Renzi 敗れる

 イタリアの憲法改正(Revisione della Costituzione)に関する国民投票(Referendum popolare)は,仕掛けた首相Renzi側の敗北となりました。大敗です。投票前から劣勢が伝えられていました。経済状況の悪さは,首相に不利となります。無責任ではあるが,変化を訴える政治勢力に,これまた無責任に国民の多数が乗っかってしまったというとイタリア国民に失礼でしょうか。
 今回の国民投票について,私もよくわかっていなかったのですが,よく調べると,憲法を改正する法律について,上下院で可決されても,50万人以上の選挙民の請求があるなど,一定の場合には,国民投票に付すことになっていました(138条2項)。今回はその国民投票で否決されたため,憲法改正はできなくなりました。
 イタリアの議会は上院と下院の差がほとんどなく,与野党が接近するなかで,迅速な審議の妨げとなっているという意見が以前からありました。Renziは上院の権限を縮小し,議員選出の方法も変え,さらに中央集権化を進めるということで,改革のスピードをあげようとしたようです。ラディカルな改革は,国民に不安感を与えたのかもしれません。
 一方,親EU派のRenzi率いるイタリアは,イギリスのEU離脱の影響で,欧州でのプレゼンスを高めていました。しかし,そこが逆に反EU派にとっての格好の攻撃対象となったのでしょう。
 Renziは,国民投票の結果と自己の進退とを重ねる必要はなかったのでしょうが,政治的には,まだこの政権の民主的正統性は十分ではありませんでした。Firenze 首相から,2013年4月にPD(民主党)の党首に,2014年2月に一挙に首相に上り詰めましたが,欧州議会選挙での勝利はあるが,国内での総選挙の洗礼を受けていなかったのです。今回の国民投票で勝利することは,信任投票の意味もあったのです。
 Renziは今回は敗北しましたが,まだ41歳です。再起のチャンスはあるでしょう。反EU派はいつか自分たちの失敗に気づくでしょう。ただ,これからの政治的混乱・危機(crisi politica)は,イタリアのみならず欧州にも大きな影響を及ぼす危険性があります。私の関心からは,労働市場改革がどうなるのかも心配です。ばらまき政治が戻ってしまうと,ほんとうにイタリアはギリシャのようになりかねません。
 イタリアの経済からするとausterità(英語のausterity)は不可欠であり,これは少なくとも知識層においては共通認識のようです。しかし,その政策の影響をより強く受けるのは庶民であり,そこに不満がうずまいてます。ISのテロの危険,移民増大といった流れも,国民の不安感を高めます。政府の責任ではないといえ,地震の頻発も人身を不安にさせます。そして,トランプ現象です。こういうなかで国民投票がなされると,冷静な理性的判断ではなく,感情的な部分がダイレクトに現れやすくなるのではないでしょうか。
 コメディアンの Beppe Grilloが率いるM5S(Movimento 5 Stelle)の動きは,私自身,十分に把握しているわけではありませんが,たいへん勢いがあるようです。ポピュリズムの代表のように言われている,この政党を中心とする政権ができるとどうなるのでしょうか。
 政治のプロにNoをつきつけた点ではアメリカの大統領選挙の結果に似ています。また,EUへの嫌悪という点では,イギリスのEU離脱の国民投票の結果と似ています。Hillary もCameron もRenzi も,まさかの敗北だったでしょう。
  Renziは,若くて行動力もあります。それが国民に期待と不安を与えているのかもしれません。イタリア国民の多数は,この改革者にまだ賭けたくはなかったのでしょう。ひょっとすると,同じような改革者であったMussoliniとRenziを重ね合わせたのかもしれませんね。

|

« 天皇退位論に思う | トップページ | カジノ法に思う »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事