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2016年12月 4日 (日)

伊坂幸太郎『ガソリン生活』

 伊坂幸太郎『ガソリン生活』(朝日文庫)を読みました。独特な伊坂ワールドには,読者の好き嫌いがかなり分かれるでしょうね。私も微妙なのですが,本書もずるずると最後まで読んで,それなりに楽しめました。
 自動車が互いに会話をできるという驚くような設定ですが,自動車の視点で,さまざまな人間たちが登場します。どうしようもない極悪人,普通の幸せな家庭の人(でもやはりそれなりに普通に不幸なことも押し寄せてきます),きわめて高貴な家庭の娘(それが幸せにつながるとは限りません),親の財産のおかげで仕事をしなくても食べて生きていける男,有名人の不幸をネタにして食べているジャーナリスト(でもどこかで贖罪したいと思っている)といった人間たち・・・
 望月家の息子二人は,ひょんなことから有名人の荒木翠を車に乗せることになります。彼女は,親の著作権で生活している丹羽という男性と不倫をしていると噂されていました。翠は,その後,車から降りますが,そのあと,丹羽と乗っていた車の事故でトンネル内で焼死します。
 望月家にはもう一人娘(まどか)がいて,江口という男と付き合っています。江口は,トガシという極悪人の手下に脅されて,死体運びを手伝わされそうになります。まどかは助けにいこうとして事件に巻き込まれ,さらに望月家の母と息子二人も巻き込まれます。 この窮地からなんとか逃れることができたのですが,実はトガシはすでに死んでいるということを,ジャーナリストの玉田が話し始めます。玉田は,荒木と丹羽の事故のことを記事にしたジャーナリストでした。実はダイアナ妃も生存説があるように,荒木と丹羽も生存しているのかもしれない。そんな感じで話が展開していきます。
 自動車好きであれば,結構楽しめるのかもしれません。自動車たち情報交換を通した進んでいくストーリーと,それを知ることができないなかでの,人間達のストーリーの展開とが併行していくところ(もちろん自動車と人間は会話ができないという設定)が,本書の面白さです。とてつもなく賢い小学生の亨(望月家の次男坊)がいい味を出しています。  ★★★(私が自動車に詳しければもっと良かったかもしれません)

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