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2016年12月 1日 (木)

労働判例百選第9版  

 労働判例百選第9版(有斐閣)が刊行されました。私もパナソニックプラズマディスプレイ事件の最高裁判決を担当していますが,私はこの判決はジュリストの労働判例解説で扱っているので,同じようなことを書いてもしかたないと思い,また,そもそも判例百選は自説を書くところではないので,あえて自説と逆の立場から書いてみて,私の以前に書いたものと照らし合わせて,読者に考えてもらいたいということにしました。
 世間では,労働判例百選で書かれているものが代表的な学説であると誤解している人がいて,これは困ったものです。労働判例百選は,執筆者の名前は入っていますが,いわば誰でも書けるような中立的なものを担当して書くものだと理解しています。したがって,とんがっている自説が,通説と違うと自覚すれば,通説ベースに書くべきなのでしょう。パナソニックプラズマディスプレイ事件については,私は本年では,高裁には反対,最高裁には条件付き賛成の立場ですが,それとは逆に,高裁賛成,最高裁反対という見解も,違った理論体系の下では理論的には十分にありうると思っています。そして,それが通説(あるいは多数説)であるとみられる以上,私としても,それを尊重して書いたほうが百選の趣旨に合うと思ったのです。ちょっと自分が二重人格になったような気分で不思議な感覚ですが,これまでも二重人格で書いた経験もあり,これはこれで自分の視野を広げるためにもよいことだと思っています(ただし若い研究者の方はマネをしないように。まあ,マネをするような人はいないでしょうが)。
 いずれにせよ,今回の私の解説が,私の自説であると決して誤解なきようお願いします。

 今回,判例百選の執筆者110名の一人に選ばれたことは,労働法学の世界で,まだ私が現役であるということを認めてもらったということでしょうから,そのことには感謝しています。ただ,大勢の研究者が寄り集まって書くというこの企画自体に疑問をもっており,私自身は,この第9版をもって判例百選からは卒業したいと思っています。この種のものについては,私自身は,単著でやっている『最新重要判例200労働法』(弘文堂)に専念したいと思います。

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