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2016年12月10日 (土)

第128回神戸労働法研究会その2

 もう一人は,大阪経済法科大学のオランゲレルさんで,長澤運輸事件の東京高裁判決を報告してもらいました。第1審は,JILPTの山本陽大君が担当してくれて,すでにその報告内容は季刊労働法に掲載されています。
 この事件については,私は別の機会に検討するつもりなので,詳細はそこに譲りますが,研究会では,労働契約法20条をめぐる解釈論的課題(とくに不合理性の解釈,20条の効力など)について議論をしたことに加え,興味深かったのは,この条文が,正社員の労働条件の切り下げも狙ったものなのか,という政策的意図をめぐる議論です。
 同条が有期雇用労働者の労働条件の引上げをねらった規定であることは,この規定を私のように理念規定と解す立場であれ,同条を強行規定とみる立場であれ,さらには補充的効力まで認める立場であれ(なお,長澤運輸事件の第1審判決は補充的効力を認めたとする理解もあるようですが,同判決は労働契約法20条の効力としては補充的効力を認めているわけではなく,解釈的操作により正社員就業規則の適用を拡張したことにより結果として補充的効力と「類似」のものを認めているにすぎません。したがって,もしそうした解釈的操作ができる就業規則がなければ,労働契約法20条だけで,正社員と同じ労働条件が保障されるわけではありません。その意味で,同条は厳密な意味では補充的効力を認めたものではないというべきだと思います)共通です。ただ,そのうえで,正社員の労働条件の引下げもやむをえないということまで内包しているかについては,私はそこまで考えた規定ではないだろうという懐疑説ですが,研究会の議論のなかでは,そこまで内包しているという見解もありました。かりに後者だとすると,たとえば正社員向けの就業規則が不利益変更されたときに,変更の必要性の判断で,労働契約法20条の適用により有期雇用労働者の賃金が上昇して経営を圧迫したことが,非常に重く考慮されるというようなことにもなりそうですが,さてどうでしょう。
 立法者(それが誰かは問題ですが)が,正社員の労働条件の引下げまで考えて,労働契約法20条をあえて設けて,両者の格差を縮小しようとしたとするならば,それはそれで興味深い規定となるように思えますが,私はむしろ,同条による正社員の労働条件引下げは事実上の影響(反射的効力)にすぎないのではないか,そして,そうした方法での格差是正はあまり望ましいことではないのではないか,と考えています。政策的には正社員の労働条件のあり方は,正社員の問題として正面から論じるべきで,非正社員の処遇改善から進め,それを通して正社員の労働条件の見直しを促すというのは,セカンド,いやサードベストくらいの策ではないかと思うのですが……。

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