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2016年12月31日 (土)

この1年を振り返って

 いろんなことがあった1年でした(ブログが不注意でいったん廃止されるというアクシデントもありました)。2016年は忘れられない1年になるでしょう。
 嬉しかったことは,静岡大学の本庄淳志が,労働問題図書優秀賞をとってくれたことです。労働関係の本を出す以上,受賞できるような本を書いて欲しいと思っていましたが,まさかほんとうに受賞してくれるとは思っていませんでした。選考委員の方がよくこの本の価値を理解してくれたと思います。この本には厳しい書評もありますし,改善すべきところも多々あるでしょうが,それでも,若いときに一つのテーマで必死に考えてもがき苦しむという経験をするだけでも十分に意義があるのに,それが受賞という形で他人に認めてもらえるというのは,たいへん有り難いことです。私も17年前に本庄君と同じくらいの年に賞をいただきました。やはり受賞はとても自信になりました。もちろん,受賞はときの運ということもあります。今回,惜しくも受賞を逃した業績にも,すばらしいものがたくさんありました。若い人たちが競い合って,労働法学をもりあげてくれることを祈ります。
  悲しかったことは,やはりいろんな人との別離です。人間はいつか死ぬものですし,その早い遅いがあるだけです。とはいえ,せっかく生を受けた以上,しつこく生きたほうが勝ちだとも思っています。先日,作詞家として有名で,精神科医でもある北山修氏が,テレビで「ダラダラ生きること」の効用を説いていました。潔い生き方ではなく,りりしくなくてもいい,と言われるとホッとしますね。ダラダラ生きることを肯定することこそ,「生」の意味をかみしめることなのかもしれません。
 今年刊行した『勤勉は美徳か?-幸福に働き,生きるためのヒント』(光文社新書)は,また変な本を出したと思った人も多いでしょうが,私自身,日頃,学生や周りに語っていることをそのまままとめたようなものでした。「そんなにまじめに働かなくてもいいのでは」という問いかけです。もっと自己実現にこだわろうというメッセージでもあります。それを私の専門の労働法や人事の問題に結びつけて書いたのが,この本です。前著の『君の働き方に未来はあるか?-労働法の限界と,これからの雇用社会』(光文社新書)では,より労働法的な話をしていましたが,人生について,そろそろ語りたいということもあったのです。
 これまた先日みていたテレビで,古稀を迎えた吉田拓郎が,自分のベストソングのトップに「人生を語らず」をあげていました。これは拓郎が28歳のときの作品です。司会の人は「いまは人生を語れますか」との問いに,拓郎は「語れます」と答えていました。53歳の私は「人生を語れるか」と言われると,古稀の人からみると若すぎると言われるかもしれませんが,それでも「語っていかなければならない」年齢に来ているのだろうと思っています。
 今年の1月には『労働法で人事に新風を』(商事法務)を出しました。担当編集者の方が残念ながら退職されて,ちょっと宙ぶらりんの感じですが,小説仕立ての本で,自分で言うのもなんですが,結構楽しめるし,もちろん労働法も学べる本です。若くて志の高いの女性社労士が主人公で,こんな社労士もいいよね,というメッセージでもあります。
 しかし本書の最も重要なメッセージは,経営者に労働法の重要性をわかってほしいということです。ブラック企業の問題が言われているいまこそ,役員や人事担当者に読んでほしいのですが,商事法務には,ここでもう1回,きちんと宣伝活動してほしいですね。
 4月には『最新重要判例200労働法』(弘文堂)の第4版を出しました。こちらは順調のようです。今年の終わりには『労働判例百選(第9版)』(有斐閣)も出ましたが,こちらは巨像で,私の本は蟻のようなものなので,踏みつぶされないように頑張るだけです。
  今年刊行した著書はこの3冊だけでした。論文は,季刊労働法252号に,「労働委員会制度に未来はあるか?」と「文献研究労働法学(第18回)採用・試用・採用内定(2)」を,また同誌の255号に,「労働法のニューフロンティア?高度ICT社会における自営的就労と労働法」を発表しました。
 労働委員会関係では,季労の論文以外に,2年間続いていた中央労働時報での連載が終了しました。労働委員会については,私なりの改革論を唱えているつもりです。労働委員会で実務を行っている人にどれだけ主張が届いているのか,よくわかりませんが。これは,本にまとめる予定はありませんが,連載は終了しましたが,引き続き関心をもって研究していきたいテーマです。
 今年の活動の一番の特徴は,政府やシンクタンクの研究会に多数参加したことです。厚労省の「働き方の未来2035」や労政審改革の有識者会議に加え,人工知能関係のものが多く,普通の労働法研究者がやらないような仕事に多数タッチできたことは,たいへん有り難い経験でした。しかも,WEB会議での参加が多く,体力的にもそれほど疲弊しなかったことも大きかったです。自分の人生の残り時間を逆算して「時間を大切にしたい」という気持ちが,とくに強まったのも,この1年の特徴でした。
 今年のもう一つの変化は,マスメディアへの露出です。新聞への登場は,最も多い年になったのではないでしょうか。そのほかにも,Wedgeをはじめ,雑誌にも出ました。年末にはYahooニュースに出て,そしてテレビ出演です。
 このほか,講演もいろいろやりました。とくに社労士関係では,埼玉,山口,徳島,名古屋,横浜など,いろいろなところに呼んでいただき,楽しい経験をしました。学会報告では,日本労務学会での報告もありました。
 外国では2月にイタリアのミラノで,ミラノ大学とボッコーニ大学での国際セミナーに参加し報告をしました。3月には台湾で世新大学を訪問し,台湾大学と中正大学で講演をしました。
 来年は,単著,共著を含め,もう少し本を出す予定です。肩の力をぬいてダラダラ生きながらも,ときどきピリッとするようなものを書くというような1年になればいいですね。

 最後に,この1年で最大の感動は,オリンピックで日本男子が400メートルで銀メダルをとったことでした。

 みなさん,よいお年をお迎えください。

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