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2016年11月17日 (木)

有用な統計とは

 総務省の労働力調査の「従業上の地位」による分類によると,日本の労働者の圧倒的多数が「常雇」(Regular employee)とされています(平成25年で雇用者の91.5パーセント)。ただ,2013年より前の調査では,「常雇」には,「雇用契約期間が1年を超える者」が分類されているので,「常雇」イコール正社員ではありません。有期雇用でも「常雇」に入るからです。それでも契約期間が1年を超えるような労働者は,1年やそれ未満の期間の有期労働者とは質的に違うと考えれば,「常雇」という分類にも意味がないとはいえないかもしれません。2013年以降の調査では,「常雇」はさらに「常雇(無期の契約)」と「常雇(有期の契約)」に分類され,後者は「雇用契約期間が1年を超える者」と定義されています。有期契約は,「常雇(有期の契約)」以外に,「臨時雇」(雇用契約期間が1カ月以上1年以下),「日雇」(雇用契約期間が1カ月未満)に分類されます。このうち正社員の人数を把握する場合には,「常雇(無期の契約)」だけをみればいいと思うのですが,平成25年1月のデータでみると,「一般常雇」(常雇から会社役員らを除いたもの)のうち「常雇(無期の契約)」は80.7パーセントいて,同じ調査の雇用形態別の「正規の職員・従業員」は63.3パーセント(2013年全体)よりずいぶん多いです。
 おそらく「常雇」の無期でいう「期間の定めのない」には,定年までの雇用が「想定されている」正社員と,そうでない非正社員とが混在しているのだと思います。たとえば学生などに聞いても,アルバイトでは期間をとくに定めていないが,遅くとても卒業すれば辞めることが前提となっているようです。こういうものが無期のなかに混在しているとすると,このデータはあまり意味がありません。
 また有期のほうについても,平成25年1月のデータですが,「常雇(有期の契約)」が892万,臨時雇が444万となっていて,この数字もちょっと違和感があります。エビデンスを見ろとよく言われるのですが,私はこの数字には,重大な誤りがひそんでいるのではないかという懸念をいだいています。
 調査対象者は一般労働者です。そうした人は契約期間は1年だが,更新は2回まででトータルで3年という人も,自らの契約期間は3年と考えている人が多いのではないかと推察されます(この点は,ぜひ拙著『雇用改革の真実』(日本経済新聞出版社)の74頁以下「意外に難しい期間の意味」も参照してください)。私の周りだけの限られた(偏った?)調査ですが,私のこの疑問は100パーセントあたっていました。こうした人が3年や5年と回答すると,「常雇(有期の契約)」(2013年よりも前であれば,単に「常雇」)に分類されてしまうのです。契約期間が最初から3年の者ならともかく,1年更新でトータル3年の者(典型的な非正社員)を「常雇」と分類しても,統計上の意味はほとんどないでしょう。
 法律家にとって知りたいのは,こういう分類ではなく,有期雇用の1回ごとの期間設定がどのようなものか,それがどの程度更新されているのか(トータルの年数,更新回数。これからはトータルの年数は,労働契約法18条の影響で,5年以下となるでしょうが),という情報です。労働基準法14条や労働契約法18条,19条の見直し論に活用しうるからです。
 そういう点からは,上記の期間に着目した統計は,少なくとも労働法関係者にはあまり意味がないものであり,できれば改善してもらいたいですね。

 

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