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2016年10月30日 (日)

誉田哲也『Qrosの女』

 誉田哲也『Qrosの女』(講談社文庫)を読みました。芸能界の裏事情をネタにした小説で,それなりに面白かったです。あるCMに出ていた謎の女性「Qrosの女」。美人で,人気絶頂のイケメン俳優の藤井涼介にハグされたシーンが出てくるこの女性は,いったい誰なのか。それがはっきりしないことから,いろんな話題が出てきます。外国人説,オカマ説などがとびかうなか,週刊誌のライターの栗山は,この女性の素性を探り当てます。それは芸能プロダクションで働く事務員の真澄でした。CMに出演する女優のマネージャーとして,たまたま撮影現場にいたところ,出演することになってしまったのです。
 もっとも本人は一般人で,芸能人になったり,有名になったりすることなどまったく望んでいない,普通の女の子でした。そのため,この出演は極秘中の極秘とされました。しかし,世間はそれを許しませんでした。ネット上に,あたかも芸能人のように,「Qrosの女」はたいへんな話題となります。
 栗山は,真澄を尾行して自宅をつきとめました。そんなあるとき,同業者である園田が彼女を連れて出ていくところを偶然目撃します。彼女は園田の自宅に連れて行かれるのですが,その後,ヤクザっぽい者が園田の自宅を襲撃し,そこから逃げてきた真澄を栗山は妹と住んでいる自宅にかくまうことにします。真澄は,ネットであげられている彼女の情報から自宅がわかっていて,ストーカーされている可能性が高いと考えて,自宅から離れて生活することにしたのです。
 実は園田は,アキヤマという男から頼まれて,真澄の日常について調べて情報を提供していました。アキヤマは,その情報を,勝手にネットにあげていました。真澄をストーカーしていたのは園田,それをネットに書き込んでいたのはアキヤマだったのです。ただ,園田は,自分の情報がそのような個人攻撃に使われることは了承しておらず,アキヤマに対して憤りを感じていました。そこで今度は,自分でアキヤマが誰かを明らかにしようと考えます。   最後は,アキヤマの正体がわかります。思わぬ人間で,思わぬ動機で,そして思わぬことから正体がわかります。なんとなく緩くて,怖くて,でも厳しい芸能人の社会。でも,プロダクションも,そして日頃は芸能人のプライバシーを暴いているライターたちも,素人の真澄のことは,必死に守ろうとしてくれます(そんななか冒頭に出てくる矢口の役割は,売れないライターの辛さが出ています)。
 最後はいい感じで終わるのですが,私が好きなタイプのエンタメ系の小説です。★★★(暇つぶしにいい)

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