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2016年10月21日 (金)

三浦九段事件その2

 谷川浩司会長が,こんなことで煩わされるのは気の毒なのですが,困ったことです。三浦 九段の処分を訴えかけたのは,どうも渡辺明竜王だったようですね。日本将棋連盟は,おそらくですが現名人や永世名人,名人経験者で話し合ったのでしょう。そこで集まった者で,わかっているのは,佐藤天彦名人と羽生善治三冠。それに谷川九段。それにおそらく森内俊之九段と佐藤康光九段でしょう。あとは当事者の渡辺竜王もいたのでしょう。もう一人は,郷田真隆王将でしょうか。それとも常務の島朗九段でしょうか。いずれにしても三浦処分に異議がなかったということのようです。ただ羽生三冠は,灰色とは言ったが,黒とは言っていないということを表明しています。
 日本将棋連盟は,三浦九段にスマホの提出を求めて,通信履歴などを解析するとしていま す。でも厳密にいうと,そこでOKでもシロとなるわけではありません。共犯がいた可能性も ありますから。誰かに聞くのはクロではないのでしょうか。そこまでやってはいないと信じ たいですが,証拠の有無ということをいいだすと,そこまで行ってしまいます。  竜王戦決勝トーナメントの準決勝での三浦九段・久保利明九段戦がとくに疑惑をもたれて います(7月26日)。62手目の後手三浦九段の6七歩成が,プロの常識にはない手のようです。たしかに,この手は飛車取りに角を打った手で,飛車を逃げると,成ったばかりの歩がすぐに取られてしまいます。他方,後手はこれを放置して攻め合ってもとても届かなそうだからです。三浦九段は6七歩成を指す前に席を外して24分かけています。その後,三浦九段は,飛車取りを放置して,成ったと金で一直線で攻めていき,勝利をおさめます。ソフトは先手の5六飛を悪手とし(その数手前の6七歩から先手の評価値が下がっています),三浦九段のその後の指し手はソフトの指すとおりになっています。
 おそらくプロの感覚では,飛車取りで,後手にすぐにでも詰めろがかかりそうな局面で,それを放置して,ほとんど紛れもない一直線の戦いをするのは,ものすごく勇気のいることであり,その時点で勝ちまで読み切っていなければ指せない手なのです。しかも後1勝で,竜王戦という将棋界最大のビッグタイトルの挑戦者決定戦に出れるという大勝負で,まだ局面にそれほど差がついていない状況で,背水の陣とならなければ指せないような手(しかし ソフトがみれば正しい手)を指したことに,疑惑が出たのでしょう。これはおそらくプロであれば9割以上クロというような将棋だったようです。
 そして問題の10月3日の渡辺竜王と三浦九段のA級順位戦です。渡辺竜王は悲願の名人奪取を狙っているなか,落とせない勝負でしたが,まさかの一方的な敗退でした。ソフトの評価値では,先手の三浦九段が一回もマイナスとならず,完勝でした。とくに4五桂と早々に飛び,5三桂不成からの攻め(「桂馬の高飛び歩の餌食」という格言そのものの局面のようだったのですが)。それ以降も攻撃の手を休めず,駒損(角と銀桂の二枚替え)も気にせず攻め倒したところで,疑惑が高まったようです。勝負がつくと感想戦があるのですが,そこでだいたい相手の読み筋などを確認します。竜王はそこで何かを感じたのでしょう。  もっとも三浦九段が実力で勝った可能性もあります。これまでにも三浦九段が大胆な攻めで勝ったという勝負もあります。もっとも大勝負でここまで大胆に攻めるかというと,そういう棋風ではなかったというのがプロ同士の認識なのでしょう。ソフトで正解を知っていたから大胆に攻められたのではないか,というふうに考えてしまったのです。  疑わしきは罰せずと羽生三冠は言ったそうです。渡辺竜王は,疑惑のある棋士とは指したくないと言い,もし指せというなら竜王を返上すると言ったそうです。谷川会長も困ったのでしょうね。不幸だったのは,10月3日の対局が,竜王戦の直前だったことです。十分な調査をする時間がありませんでした。
 今後の動向に注目です。どう転んでも,よい方向には進みそうにもないのですが。いま勢いがあり,ソフトを使って勉強していると広言している千田翔太五段あたりが同じような手を指せば,誰も疑問をもたなかったかもしれません。この道で長年やっている三浦九段だからこそ,「おまえそんなに強かったっけ」と思われてしまったのでしょうね(もちろん三浦九段は現役A級棋士で十分に実績がある強豪なのですが)。

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