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2016年10月18日 (火)

阿刀田高他『七つの怖い扉』

 阿刀田高他『七つの怖い扉』(新潮文庫)は, 7人の作家によるホラー小説の短編集です。ずいぶん昔の本ですが。
  阿刀田高「迷路」。小さいときから昌司は,何度も井戸に死体を投げ入れるとその死体が消えてしまうという体験をしていました。そんなとき母親をその嘱託で殺して井戸に投げ入れたところ,いつまで経っても母親の死体は消えないので,待ち続けていた。「母ちゃんが死んでしまったら,誰も体を張ってまで昌司の不始末を救ってくれる人などあろうはずもないのに……」というオチでした。
 宮部みゆき「布団部屋」は,時代物で,たたりのある家に奉公にでた女性(おゆう)の話です。姉も働いていた酒屋でしたが,姉は原因不明の頓死をとげていました。実は,その酒屋には奉公に入ると,夜に布団部屋に連れ込まれ一晩明かすというしきたりがありました。あるとき,おゆうも女中頭の光子に連れて行かれたのですが……。先祖のたたりと,姉妹の愛の物語ですが,テレビなどでみたらとても怖い話でしょうね。
 高橋克彦「母の死んだ家」。山の中に迷い込んだライターと山崎という編集者。そこは,ライターの祖父の別荘の近くでした。彼の父は事業に失敗して失踪し,母はこの別荘で自殺していました。嫌な思い出がある別荘でしたが,引き込まれるようにして行った男が見たものは……。母が彼を導いたのです。そこで母は,ベッドに横たわる父と女をみてしまい,二人を殺して,自分も自殺したのです。母に乗り移られて,その幻影をみたあと,ベッドの上には一人の男が死んでいました。山崎です。彼はライターの妻と不倫をしていたのです。  
 乃南アサ「夕がすみ」。あるとき家にやってきた親戚の女の子。母の妹の子です。かすみちゃんというこの子には,妹がいたけれど死んでしまい,かすみちゃんの両親も死んでいました。身寄りがないので,引き取ることになったのです。しかし,兄は,この子を不気味がって嫌っていました。そんなとき,その兄が交通事故で亡くなります。かすみちゃんの両親の一周忌が近づくとき,かすみちゃんは思わぬ告白をします。「うんと強く思うと,思った通りになるんだ」。かすみちゃんは,妹ができて両親が妹を可愛がり始めたために・・・。そして私の兄までを。
 鈴木光司「空に浮かぶ棺」。呪いのビデオを見てしまった女性が,出産するという作品です。私には意味がよくわかりませんでしたが,ただ不気味で気持ち悪い作品でした。
 夢枕獏「安義橋の鬼,人をくらふ語」は,今昔物語集にある安義橋(滋賀県)にまつわる怪談を素材としたものです。つまらぬ意地の張り合いから命を落としてしまったということです。鬼なんているわけないと思いながら,やっぱり鬼は怖いですね。今昔物語集では,最後に鬼が弟に変装してやってくるのですが,この作品では,そこをさらにひねってあります。
 小池真理子「康平の背中」。これもちょっと不気味な話です。妻子ある男,康平を愛していた私。あるとき,偶然に,康平が妻子と3人でいるところに出くわします。息子の克也は,その母の昭代に似て醜く,手をのばして「まんじゅうくれえ」と下品なことを言っていました。そんな康平が然交通事故で亡くなります。その後,ある初老の男性と付き合うようになり,料亭で食事中に結婚を迫られていたとき,康平が現れるのです。事故でからだの前半分がぐしゃぐしゃにへしゃげた康平は,背中を向けているだけです。そんなとき,突然,康平が振り返り,克也の顔で「まんじゅう」といって手をのばしてきました・・・,という話なのですが,このオチが今一つよくわかりませんでした。
 ずいぶん前に読んでいたもので,季節外れの夏向きの短編集です。  ★★★(実力派作家のいろんな作品が楽しめます)  

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