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2016年9月 4日 (日)

有識者とは?

 日経新聞などを読んでいると,規制緩和行け行けドンドン派の意見がよく出てきますが,私は成功した経済人の意見を,少なくとも労働法の政策論に持ち込むことには慎重であるべきだと思っています。世の中で成功した経済人というのは,すさまじいパワーと能力の持ち主で,しかも自尊心も強いので,まさに労働法とは無縁の世界でのし上がってきた人でしょう。アメリカの企業で働いた経験などがあればなおさらで,アメリカは少なくとも日本的な雇用システムや労働法とは異色のものがあります。そういうところで多くの経験をし,辛い目にもあい,そのなかで,むこうの価値観にあわせながら成功した人は,尊敬に値しますが,普通の日本人からすると,あまりにも凄すぎるのでモデルにはならないのです(イチローが,もし「だから日本はダメなんだ」などと言い出しても,みんなついてこれないでしょう)。
 労働法学では,自分が留学したことがある国を礼賛する人が多いです。さすがにアメリカ留学した人が,アメリカナイズして帰ってくるということは,平等論や差別論に敏感になるということ以外はあまりないようです。これに対して,欧州に行くと,かなり本質的に染まって帰ってきますし,とりわけ比較法大国であるドイツやフランスに行くと,とてもそれらの国が好きになってしまい,日本もそうなったらいいなと思ってしまうようです。
 私自身もそういうことにならないように注意しているつもりでありますが,どこかにイタリアかぶれの議論をしているところがあるかもしれません。
 それはともかく,日本はダメだと頭から言っているような人の意見は聴いてはなりません。労働分野ではとくにそうです。そういう人は日本のことがよくわかっていないか,日本が嫌いであるかのどちらかです。どっちにせよ,日本国民のための政策を考えるうえで適切な人材ではありません。
 誰が日本を愛し,日本国民のことを本当に考えているかを,よく見極めなければなりません。役人は省益よりも,政治家は選挙区のことよりも,国民全体の利益を考えているか。労働組合や経済団体の代表者は,自分の出身母体のことよりも,国民全体の利益を考えているか。労働法学者は自分の生きがいとなっているイデオロギーよりも,国民全体の利益を考えているか,また昔学んだ外国法の影響を過剰に受けていないか。大企業経営者は古き良き時代の自分の成功体験に目を曇らされていないか。ベンチャー系の経営者は自分の自慢話をしたい欲望にとりつかれていないか。みんな自己点検する必要があるでしょう。
 歯切れのよすぎる意見に惑わされず,誰が信頼に足りる人間なのか。とりわけ政府がさまざまな会議で登用する有識者と呼ばれる人の選定は難しいものです。私自身は,日本を愛する気持ちは人後に落ちないつもりですし,労働法の専門家としての知識をもつという意味では有識者でしょうが,国民全体の利益を考えて発言する意欲はあるものの,多くの人に自分の意見を理解してもらえるほどの人間力はまだなく,有識者にはまだふさわしくないと思っています。
 それでも,せっかく厚生労働省の「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」に参加することになったので,できるかぎり国民のためになるような意見を発言できればと思っています。厚生労働省にも,しっかりとこの意欲を受けとめてもらいたいのですが,はたしてどうでしょうか(次回の開催日も決まらず,候補日は参加が難しい日程なので,結局は,何もできないまま終わるかもしれません)。 

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