« 休息のすすめ | トップページ | 有識者とは? »

2016年8月31日 (水)

羽生の戦い

 しばらく将棋のことを書いていませんでしたが,今日の,羽生善治王位と木村一基八段とは,まさに死闘が繰り広げられました。172手で羽生王位が投了です(将棋は普通は100手から長くても130手くらいで終わります)。途中から羽生は圧倒的不利だったのですが,「くそ粘り」でした。史上最強の棋士にしては見苦しい感じもしましたが,これが羽生流なのでしょう。これで木村八段は3勝2敗で王手をかけました。これまで何度も羽生にやられてきただけに,人生最後の大勝負となるでしょう。
 羽生は続く王座戦では,糸谷哲郎八段の挑戦を受けます。ここのところ王座戦は若手の挑戦が続いていて,昨年は名人戦の前哨戦として当時の佐藤天彦八段とフルセットまで戦い,3勝2敗で防衛しましたが,その後,名人を取られてしまいました。糸谷八段は竜王をとったときも,羽生と挑戦者決定戦をやって羽生に勝っていますので,羽生との大勝負は経験済みです。一度,大きなタイトルを失って,再び這い上がってきた糸谷八段(決勝トーナメントでは,渡辺明竜王,稲葉陽八段,佐藤名人を破っています)には,羽生王座であろうと,そう簡単には防衛できないでしょう。
 羽生3冠は,永瀬拓矢六段との棋聖戦では1勝2敗から逆転で防衛しましたが,糸谷八段は経験が違います。しかも今期ここまで羽生3冠は珍しく負け越しています。いままでで一番不調のシーズンではないでしょうか。王位戦,王座戦のこれからが注目されます。
 そんな羽生3冠が,叡王戦に参戦して話題になっています。予選は見事に通過して本戦入りです。本戦には佐藤天彦名人や広瀬章人八段も残っています。叡王になると,電王戦に出てコンピュータソフトと対戦です(初代叡王は山崎隆之八段でした)。ついに羽生対ソフトが実現するかもしれません。
 とはいえ全盛期の羽生3冠ではないので,そこがちょっと物足りないです。できれば3冠のまま叡王も取ってソフトと戦ってもらいたいですが,いまならむしろ佐藤名人とソフトのほうが真の最強決定戦になるかもしれません。
 ただ羽生でも佐藤でもソフトにはまず勝てないと思います。電王戦ファイナルで永瀬六段が勝ったのは,成れる角を成らないという掟破りの手を指してソフトが混乱したからです(その手に関係なく永瀬勝勢であったのというのが,永瀬六段の言い分ですが)。
 ソフトは読みの効率性を高めるために,明らかに不利となる手を相手が指す場合を,読みの対象から外していました。角については,打ち歩詰めを避けるというような特別な場合でないかぎり,成ったほうが良い駒です(銀,桂,香は,成らずという手はありますが,飛角や歩は成らないことはまずない駒です)。その角を敢えて成らないのですから,ソフトはびっくりしたのでしょう。永瀬六段は,その盲点をついたのです。
 逆にいうと,正攻法ではまず勝てないということです。終盤でソフトが勝勢なら,確実にソフトは勝ちます。ただ私は今回の王位戦での羽生の粘りと執念をみて,羽生はソフトとの間でも,執念で何とか勝とうとするのではないか,という気がしてきました。人間とでは指さないような手であっても,何とかソフトの弱点をみつけて,ソフトをやっつけようとするのではないか,という気がしています。しょせんゲームです。正攻法でなければならないということではないと思います。
 個人的には正攻法は好きですが,最高の頭脳をもつ人間が知力をふりしぼって,ソフトに立ち向かうところをみてみたいです。次の電王戦でどういうことが起こるのか楽しみです。その前に,まずは叡王になってもらう必要がありますが。

|

« 休息のすすめ | トップページ | 有識者とは? »

将棋」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/2388807/67277760

この記事へのトラックバック一覧です: 羽生の戦い:

« 休息のすすめ | トップページ | 有識者とは? »