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2016年7月

2016年7月31日 (日)

出張レスでお願いします

 今年になって霞ヶ関関係の仕事が増えましたが,引き受けるときには,Web会議の利用など,できるだけ「出張レス」でお願いしますと言っています。昔は,出張は気分転換などの意味もあって嫌いでなかったのですが,最近は,年をとったせいか,時間を無駄にしたくないこと(ライフに十分に時間を割きたいこと)と体力を温存したいこと(移動の疲労は翌日に残ります)から,依頼された講演や会合でのプレゼン担当であるなど,リアル参加の必要が特に高いものに限定しようとしています。

 ということで,事務局の方には迷惑をかけているのですが,人工知能とかITとか言っている以上,まずは政府から積極的に取り組んでいくべきでしょう。何よりも,経費節減につながります。

 現在は試行錯誤のようで,私が自ら実験台になっているようなところもあります。すでに厚生労働省の「働き方の未来2035」でも5回(リアル出席は2回),内閣府の「人工知能と人間社会」でも2回(Skype利用)(リアルは1回),霞ヶ関ではありませんが,NIRAの研究会でも1回(Skype利用)と神戸から会合に参加するということをやっています。随分と慣れてきましたが,いろいろ課題も見えてきました。NIRAの研究会のように人数が少ないところでは,参加者の顔の表情もわかり違和感はなかったのですが,人数が多い会合では,会場全体が見えず,また発言したときの回りの表情がつかみにくいなど,やりにくいところがありましたね。また挙手ボタンを押しても座長に気づいてもらえなかったりするので,無理矢理割り込まなければならないのですが,そのときの会場の空気が読めないのでやりにくいとか,まだまだ改善点があります。とくに,始まったばかりの厚生労働省の「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」のように,かなり激しい意見の応酬が出てきそうな会合には,いまの通信技術を前提とすると,リアル出席をせざるをえないかなという気もしています。

 将来的にはVRの技術を使ってリアルに参加できるようになるでしょうが,現時点では,あまり政府は本腰を入れていないような印象もあります。とにかく各省がバラバラにやらず,統一してWEB会議の使いやすい利用方法を開発していくべきです。政策もそうですが,少なくともこうした技術的な面については自前主義をやめて協力をしろ,と言いたいですね(総務省がリーダーシップをとるべき気がしますが,総務省の会合では,WEB参加ができないと言われたのは意外でした)。

Skypeは,秘密の保持などを理由に使用できないというのが厚生労働省で,内閣府では使用できました。少なくとも誰でも傍聴可能な公開のものであれば,秘密保持ということにはならないはずなので,Skypeでもいいと思いますし,国会中継のようにライブで動画配信してもいいくらいでしょう。それとも,Skypeには,何か私がわからないような問題があるのでしょうか。それなら全省庁で禁止する必要があります(かなり前に労働委員会での公益委員会会議で,海外出張中にSkypeで参加すると申し出たとき,合議の秘密が確保できないとして断られたことがありました)。

 ついでに「ペーパーレス」もお願いしたいです。最近では,事前にメールで資料がPDFで送られてきて,さらにリアル会合でも同じ書類をもらうということがあります。これは,いわば「半ペーパーレス」で書類のほうは捨てることができるのですが,それはそれで紙の無駄でエコでないという気もします。私のような昭和半ば世代は,捨てるということが苦手です。ちなみに,神戸大学の法学研究科も教授会はペーパーレスとなっています(秘密文書のみ要回収で紙で配布)。

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2016年7月29日 (金)

自前主義の限界-協力と独創の重要性-

 日経新聞で,「孤高のファナック,つながり求める」という記事がありました。ファナックがIoTシステムの開発に関してNTTと組むという内容です。これまで自前主義でやってきたファナックも,ついに他社との「つながり」をしていかなければ,競争に勝てなくなってきたということでしょう。

 最近,オープンイノベーションという言葉を良く耳にします。たとえば基礎研究から商品開発まで,すべて自社のなかでやり遂げようとする自前主義とは違い,他社と協力していこうというものです。

 日本企業には,自前主義が多いようです。たしかに,これまでの日本の製造業では,多くの会社が自前で高い技術力をもち,それに基づき高い生産性と競争力をもっていたのかもしれません。しかし,昨今の技術の開発速度の速さからすると,自前主義は危険です。標準的な技術やシステムが自分たちと異なったものとなると,あっという間に取り残されてしまうおそれがあるのです。

 最近では,自前主義を放棄する日本企業も増えているようです。ただオープンイノベーションの時代になると,何で稼ぐのかは難しい問題となります。みんなで共通の技術やシステムを使いながら,さらなる付加価値をどのようにつけるかという創造性が勝負となるのでしょう。そのため,知的創造的な働き方をする人材が必要となるわけです。こうした働き方ができるのは,理系人材だけではないかという見方もありそうですが,必ずしもそうではありません。いろんなバックグラウンドがある人が集まって智恵を出しあうなかで,その企業独自のイノベーションが起こる可能性もあります(製造業以外に,サービス産業こそイノベーションの余地があると思います)。いずにれせよ労働法制は,こうした知的創造的な働き方に抑制的であってはならないというのが,私のホワイトカラー・エグゼンプション論の前提にある考え方です。

 よく考えると,私たちの労働法研究も,オープンイノベーション的な感じでやっているといえます。研究会は,そのメンバーが知見やアイデアを出し合う,いわば智のプラットフォームであり,いろんなメンバーがその場にやってきて新たな知見やアイデアを披露し議論してその内容を共有財産とし,それを各自が吸収して,自分のところに持ち帰り,独自の成果を追求していくという感じです。それと同時に研究会は,まだ自分では何も貢献できないような人の修業(教育)の場でもあります。そうした人を育成し,将来的に大きな貢献ができるようにすることによって,智のプラットフォームは持続できるのです。

 研究者のなかには,自前主義でやっている人もいます。そのほうが独創的な研究ができる可能性もありますが,これからはどうでしょうか。あるいは均質的な人だけが集まっている研究会もあります。しかし,そこから独創的な研究が生まれるでしょうか。研究者のプラットフォームは,その人と組んで自分は刺激を受けるかという基準により,できるだけ異質なメンバーで構成されていたほうが強いと思います。

 もっともだ労働法の場合はそこが少し難しくて,あまり異質であると議論がかみあわないことがあります(運動論的な労働法をやる人は,神戸労働法研究会には合わない可能性が高いです)。その意味で,異質性は,いろんな研究会に出ていって他流試合をすることによって実現すべきなのでしょう。私がいろんな分野の研究者とのコラボが必要だと言っているのも,そのためです。


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2016年7月27日 (水)

労働政策審議会はどうあるべきか

 昨日は東京出張で,厚生労働省に5時間以上もいました。厚生労働省とは,もともとあまり仲よくはないのですが,最近はあの建物に行く機会が増えてきましたね。

 今日は,まず中央大学の佐藤博樹さん座長の「今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究会」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)という厚生労働省の委託研究の初回会合に参加してきました。研究会の名称からはわかりにくいのですが,AIの話もやるということのようなので,自分の勉強のためにも参加を決めました。今回は,5月に内閣府の「人工知能と人間社会」の懇談会に提出した資料について,内閣府の会議ではその内容についてのきちんとしたプレゼン機会がなかったので,こちらの研究会でプレゼンしてきました。これからヒアリングなどをして,調査結果をまとめていくと思います。委託元の厚生労働省の職業安定局にも刺激を与えるような報告書にできればいいと思います。佐藤さんとは久しぶりですが,気心もしれているので,一緒に調査研究できることを楽しみにしています。

 もう1件は,もう少し緊張感が高いもので,塩崎大臣肝いりの「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」です。こちらも初回会合でした。大臣も1時間くらい座っておられました(次の内閣改造で留任されるのでしょうかね)。労政審のあり方を見なおすという恐ろしいプロジェクトで,最初は引き受けるのを渋ったのですが,説得されてしまいました。ただ,その説得をした役人は異動ということで,ちょっと嵌められた感はあるのですが……。

 参加する以上は,言いたいことは言うというのが私のポリシーですが,そもそもこのテーマでは,2008年に日本労働研究雑誌579号に一橋大学の神林龍さんと論文を書いており(「労働政策の決定過程は. どうあるべきか. 審議会方式の正統性についての一試論」),私も一家言もっています。労政審を通じた立法や三者構成についての私の立場はニュートラルですが,現在の仕組みには問題が大ありで,それについての改善展望が開かれなければ,三者構成の見なおし論もあるかなと思っています。今日の段階では,三者構成を維持し,かつコーポラティズム的な労働立法や政策決定を維持できるかどうかは,審議会に登場する労働者代表が労働者全体の多様な意見を集約して,労働者の立場をしっかりまとめあげることができるかにかかっているのでは,という趣旨の発言をしてきました。たんに多様な意見を反映させるために,多くの代表者で構成すればいいということではなく,個別的利害をこえた大局的な視野で労働者を代表できる人を集めて,実のある交渉や協議ができる場にすべきだというのが,私の考えです。若者代表を入れろというような意見もありまいたが,そうした代表の分散化は,結局,三者構成否定論につながるというのが私の認識です。他方で,昨日は少ししか話せませんでしたが,もう一つ重要なのは,審議会で扱う論点やテーマの選択について,その質を上げることです。今日の経済や産業の大きな転換を見据えたテーマ設定がとても大切であり,そういうことができるような審議会でなければ,常に規制改革会議などの外からの圧力を受け続けることになると思っています。

 公開の会議なので,そのうち,みなさんの目にも議事内容はふれることになるでしょう。

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2016年7月26日 (火)

正社員の作り方

 昨日の日経新聞で,IT技術者を中心に,派遣各社で無期雇用が広がるという記事が出ていました。どうして無期雇用にするかというと,長期派遣を希望する派遣先のニーズに応えて,人材を囲い込むためのようです。

 ここでは二つのことを考えさせられます。

 第1は,無期雇用とは,企業が囲い込みたいと思われる人材であれば,自然と起こるのではないか,ということです。労働契約法18条による強制的な無期転換規定に疑問を感じるのは,そういう自然な経済の論理に反することを強要しているからです。そもそも正社員というのは,企業が長期雇用をして抱え込むことが望ましい人材であるとみたからそう扱われているもので,それをあたかも法的に特別な地位とみて,非正社員との格差を強制的に是正するという発想は,政策として間違っているのです。格差の是正は,企業が長期雇用をするに適していると考える人材を増やすことが,最も適切な対策です。上記の記事は,この考え方と整合的です。

 第2は,上記記事での無期雇用派遣は,派遣先で長期的に働くことを前提としているという点も注目されます。労働者派遣法25条は,「厚生労働大臣は,労働者派遣事業に係るこの法律の規定の運用に当たつては,労働者の職業生活の全期間にわたるその能力の有効な発揮及びその雇用の安定に資すると認められる雇用慣行並びに派遣就業は臨時的かつ一時的なものであることを原則とするとの考え方を考慮する」と定められています。長期派遣は,「労働者の職業生活の全期間にわたるその能力の有効な発揮」には資するのでしょうが,「その雇用の安定に資すると認められる雇用慣行並びに派遣就業は臨時的かつ一時的なものであることを原則とするとの考え方」は常用代替防止という発想によるものとみられ,これは派遣先での長期派遣とは合わないと思います。

 派遣は臨時的でなければならないという原則は,2015年改正で再び強調されることになったのですが,派遣元に無期で雇用され,かつ同じ派遣先で長期に派遣されることが望ましいのなら,派遣は臨時的,という原則は撤廃したほうがよいことになります。派遣元に無期で雇用され,特定の派遣先で長期に働くことは,常用代替は起こるとしても,派遣労働者の雇用が安定しているからよい,と言うべきなのでしょう。ある意味,これだって一つの正社員と呼んでもいいのです。

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2016年7月25日 (月)

日曜雑感

 真田丸は,ますます好調。まさかの秀次の自殺。さらに昨日は,秀吉の認知症。あまり歴史の本には出てこないストーリーですが,ドラマにできそうな少数説を組み合わせながらの展開はさすがです。歴史の本にでてこない「きり」の長澤まさみの使い方は自由自在。黒田官兵衛は出てこないのでしょうか?
 大相撲は,準優勝にはほとんど価値がないので,稀勢の里が3場所連続準優勝でも関係ないと言いたいところですが,観点を変えると,横綱が3人もいて,大関に3場所連続で準優勝されるのはどうか,という言い方もできそうです。それはともかく,稀勢の里は,日馬富士との直接対決があったのに,そこで勝てない相変わらずの勝負弱さ。協会は来場所も綱取りがかかると言っているそうですが,たしかに綱取り場所だと盛り上がるので,営業的にもそうしたいところでしょう。協会としては,和製横綱の誕生よりも,綱取り場所がずっと続いたほうが儲かるのかもしれませんね。
 阪神は泥沼。昨日は,ようやく広島に勝ちましたが,最近の戦いぶりは,暗黒時代に逆戻りした感じです。鳥谷が悪いのですが,金本が意固地になっている感じもあります。金本の現役時代の晩年,和田監督が金本を使い続けてくれたので,金本もその恩返しで鳥谷を使っているのでは,と思いたくもなります。その鳥谷の連続出場(イニング)を途切れさせた昨日は,なんとか勝ちました。阪神の打線で頼りになるのは,いまは福留と原口だけで,それに少しだけ高山が復調。点数差があれば,ドリスでなんとか逃げ切れる,という細い勝ちパターンが頼りです。 
 将棋のNHK杯は,女流二冠の加藤桃子が登場。佐藤和俊六段に挑むも完敗でした。ついでに先週行われた順位戦で,B級1組の谷川浩司九段は阿久津八段に敗れて3連敗でピンチとなりました。引退のXデーが近づいているのでしょうか。A級は稲葉陽新八段が2連勝で好調な出だしです。羽生3冠も,森内九段を破り,1勝1敗。羽生3冠は復調したかと思うと,棋王戦のトーナメントでは佐々木勇気五段に敗れて敗退です。今週は水曜から王位戦で初戦敗れた木村一基八段と,また来週月曜は棋聖戦最終局を永瀬拓矢六段と戦います。若手に2勝先行させておいて,最後は防衛というのが羽生3冠のいつものパターンですが,そのようになるかどうか。棋聖戦最終局は羽生3冠の今後を占う大勝負となります。

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2016年7月23日 (土)

ジャーナリストの資質

 鳥越俊太郎氏の週刊文春の記事がほんとうかどうかはよくわかりませんし,記事を読む気もしませんが,鳥越氏が,すぐに記事内容について告訴して,その後の対応は弁護士に任せるので,直接の取材にはお答えしませんと対応したことには違和感を覚えた人が多いのではないでしょうか。
 女性スキャンダルで政治家の資格がなくなるとまでは思えませんが,候補者としては,そう居直るのはちょっとリスキーでしょう。ただ裁判をするから答えないというのは,訴えられている側が言うのはともかく,訴えている側が言うのはちょっと変です(訴えられているほうなら,黙秘権(憲法38条1項を参照)がありますしね)。ひょっとして自分は文春を通して被害者から訴えられたから,それに黙秘権を行使したのだということかもしれません。ただ,まったく根も葉もないことだとすると,自分の口で直接反論したいと考えるのが普通でしょう。ましてやジャーナリストなら当然そうなりそうなものです
 すぐに撤回しましたが,政治的な力が働いている,という趣旨のことを口走ったのにもびっくりしました。業界にいた人ですからね。彼自身も政治的な力を受けて記事を書いたことがあるのでしょうか。
 とはいえ,文春のほうも,他人の下半身ネタをひっぱりだして明るみにし,社会的な制裁を浴びせるようけしかけるというのは,ちょっとやりすぎではないかとも思います。他人の恋愛のことは,当事者とその配偶者の問題であって,ほおっておくというのが大人の対応だと思います。ただ文春の言い分は,そのレベルを超えて知事の資質が問われる事件だったということかもしれませんが(それでもベッキーのほうの報道はやりすぎです)。
 それにしても,これが当選後の報道であれば,また再選挙というような悪夢も起こりえました。途中交代が続いている都知事の特殊状況を考慮すると,このタイミングの報道はある意味で公益にかなっており,鳥越氏はほんとうに事実無根ならとっととそれを説明して,選挙戦に集中すればいいのです。鳥越側には選挙妨害と思えているでしょうが,選挙に勝てば有権者の審判は受けたと胸をはれるので,鳥越氏にとっても,この危機はうまく利用できる可能性があるのです。
 鳥越氏個人のことはどうでもいいのですが,著名なジャーナリストが,自分に都合の悪い言論については,自分で反論せずに裁判沙汰にするという行動は,ジャーナリストって,もっと身体をはって言論を大切にする存在だと思っていた人にとっては,とても失望したことではないでしょうか。

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2016年7月22日 (金)

「アベノミクス,何をふかすか」

 日経新聞で,標記の見出しで4人の識者(?)が登場していました。結構,労働に関することにも言及されていたので,そのうちの3人の発言についてコメント。

 イー・ウーマン社長の佐々木かをり氏は,たしか規制改革会議の何かのワーキングで呼ばれたときにメンバーとしておられた方です。女性のために「2本目の道」をつくるのはやめよう,というのは,そのころからおっしゃっていて,これは私もそのとおりかと思います。ただ,今回の記事で,「時間ではなく成果に賃金を払う「脱時間給」制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)の議論では,ごく限られた高収入の人だけが対象になっているが,もっと裾野を広げるべきだ。例えば年収300万~400万円で,子育て中に時間短縮勤務を余儀なくされている人にもニーズはあると思う。給料は100%もらい,自宅で働く時間をつくればいい。」と書いてあるのには,驚きました。日経新聞のホワイトカラー・エグゼンプションを「脱時間給」と定義することは,どんなに指摘しても直らない困ったものですが,それはさておき労働時間と賃金の接続を切断するというくくりで,短時間勤務の給料満額支給をも,ホワイトカラー・エグゼンプションの議論でやるとなると,これはもう無茶苦茶です(説明は必要ないですよね)。これは記者が間違ってインタビューを編集したものだと信じたいです。

 中前国際経済研究所の中前忠氏は,「最低賃金1000円を目指すのは評価できる。最低賃金が上がれば低賃金労働でロボットへの置き換えが進む。人手不足は合理化によって解消した方がよい。ロボット化で失業も増えるが,その時こそ政府の出番だ。職業再訓練に政府のお金を使うのは賛成だ。」と述べていますが,これは,最低賃金についての発言の一部だけをとりだして記事になったものと信じたいですが,このままだと,最低賃金の引き上げは,ロボットへの置き換えによる合理化を進めるために必要だというように読めてしまいます。

中前氏がそうだというわけではありませんが,労働法を便宜的に使って,産業政策や経済政策を進めるという思考(法道具主義)は,政府内でもときどきみられます。有識者と呼ばれる方にも少なくありません。最低賃金についても,それをなぜ引き上げるのか,それが政策的にも,また賃金論的にも,どのような意味をもっているのかということへの十分な理解がなければ,最低賃金については軽々しく語るべきではないと個人的には思っています(

そもそも,労働法について,なるほどこれはよく勉強しているね,というような経営者の方と,少なくとも霞ヶ関で私はお目にかかったことがありません。労働政策について有識者を集めるときに霞ヶ関の方は,人選をよく考えたほうがいいです)。

 テンプホールディングス社長の水田正道氏のインタビューは,これからの社会における人材派遣業者の意欲を感じてよかったと思いますが,「『同一労働同一賃金』には大賛成だ」と述べているところは残念です。同氏は,これに続いて,「(だ)が,実現へ各論が見えてこない。個人のスキルや成果など仕事を評価する欧米に対し,日本では社内評価や労働時間などを基準にしてきた。社内中心の評価だから,人材の流動化も進まない」と述べていることからすると,実は賛成しているのは,職務給的な賃金体系を導入することのようです。欧米的な職務給が進むと,たしかに「同一労働同一賃金」を論じる「前提」ができます。おそらくここで水田氏が言いたいことは,「同一労働同一賃金」そのものではなく,職務給的な賃金体系ができると,流動化が進み,人材派遣業者の役割はますます大きくなるということなのかもしれません。それはそれで理解できるところではありますが,職務給的な賃金体系を導入すべきかどうかは個々の企業が判断すべきことであって,少なくもアベノミクスとして政府がやるべきことではありません。まして職務給と関係のない「同一労働同一賃金」などというのは論外だということは,繰り返し述べてきたとおりです。

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2016年7月20日 (水)

ボクシング世界戦

 ブログのタイトルに労働法が入っているのに,労働法の話を全然書かないと思われているかもしれませんね。そういうときは,だいたい労働法の論文を書いているときです。そういうときは,労働法のことは論文にエネルギーを傾注すべきで,書くとすればまったく違う話題のほうがいいのです。  ということで,今日は,テレビ観戦したボクシングの世界タイトル戦。まず,IBF世界スーパーバンタム級王座決定戦。同級1位和氣慎吾と2位ジョナタン・グスマンの一戦。和氣というと,和気清麻呂を思いますが,関係しているのでしょうか。それはともかく,第2Rラウンドで2回ダウンしたあたりから,将棋でいえば「手合い違い」という感じで,相手が強すぎました。4回ダウンしながら11回までもったことが,むしろ奇跡的です。和氣はよく頑張ったと思います。途中からはグスマンも疲れて変調でしたから,まったくチャンスがなかったわけではなかったのかもしれませんが,それでも和氣が勝てそうな雰囲気はなかったですね。パンチ力に違いがありすぎました。頑張りすぎて,後遺症が残らないか心配です。和氣は悔しかったでしょうが,この相手では仕方ありません。
 メインイベントは,WBA世界フライ級タイトルマッチで,3階級王者のチャンピオン井岡一翔と,同級6位のキービン・ララとの一戦。ララは善戦したと思いますが,お互い顔は綺麗で,決定的なパンチがなかったのでしょう。井岡のパンチは,相手が倒れてもおかしくないようなものもかなりヒットしていましたが,それでもララの手数は落ちませんでした。ただ10回あたりから,ララは苦しそうになり,11回で見事KOとなりました。やはり井岡のパンチは効いていたのでしょう。相手があまりにも倒れないので,井岡が打ち疲れだけが心配でしたが,それ以外はチャンピオンの完勝だったと思います。11回まで頑張った挑戦者を誉めるべきでしょう。
 和氣は喧嘩好きがボクシングに転身したというイメージで辰吉や亀田的なイメージをもっていますが,井岡はスポーツとしてのボクシングをやっているアスリートという感じです。井岡の試合は不思議な透明感がありますね。こういうボクシングなら,ボクシングを野蛮なものと思っている女性たちも楽しめるのではないしょうか。井岡は統一戦をねらっているということですが,ぜひ頑張ってほしいです。
 それにしてもテレビの解説がダメです。内藤大助はいくら元チャンピオンでも,いけません。香川照之を呼ぶべきです。

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2016年7月19日 (火)

尾崎豊の息子

 連休中にテレビの歌番組を見ていたら,尾崎豊の息子の尾崎裕哉が出ていて,「I love you」を歌っていました。おそらく聴いた人がみな衝撃を受けたのではないでしょうか。声も雰囲気も尾崎豊そっくりだったのです。あの尾崎豊が蘇ったのではないか,という感じです。
 尾崎豊の曲は,「I love you」は少し違いますが,メッセージ系の曲が多く,そういうときの尾崎の声は,僕にはちょっとヒステレリックで,病的な感じに聞こえてきて,あまり好きにはなれないところがありました。でも息子の尾崎裕哉は声が父親と同じでも,何ともいえない透明感があるのです。これは,父にはない独自の個性ですね。
 本人の将来のためには,お父さんの曲を歌って,というリクエストには,あまり応えないほうがいいかもしれないですね。父を超える歌手になってほしいです。
 安部譲二の『日本怪死人列伝』(以前のブログでも書いたかもしれませんが,凄い本です)で描かれた尾崎豊の最期が悲惨すぎたので(事実かどうかわかりませんが,クスリは怖い),なおさら息子さんには幸福になってほしいです。

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2016年7月18日 (月)

都知事選に思う

 東京では,東京都知事選が盛り上がっているでしょうか?。私も都民であったことがあったので,都知事選に投票したことがあります。それより前のことですが,かつては革新系の美濃部亮吉が誕生したこともありました。公営ギャンブル廃止で,競馬ソングの「走れコウタロー」では,物真似をされてからかわれたりもしていました。この曲を歌っていた山本コウタローはコミカルな歌手かと思っていたら,その後,名曲「岬めぐり」を出して,その後はさらに政治活動もやったりしていますね。ちなみに彼の一橋大学の卒論が「誰も知らなかったよしだたくろう」というのも有名な話です。
 それはさておき,東京都は青島知事や猪瀬知事が誕生したりするなど,意外な知事が誕生するところでもあります。ただ,今回は,ちょっと酷いことになっていますね。マック赤坂は,徐々にすごみが出てきている感じもあって,今回はかなり票が入るとは思いますが,さすがに当選可能性はゼロでしょう。
 野党系は,すぐに撤退した石田純一にせよ,鳥越俊太郎にせよ,左翼っぽい有名人であれば誰でもいいという感じなのにも困ったものです。みんなで支えるから,あなたはただ神輿に乗っていてくれればいいですということなのかもしれませんが,そういう人には知事になってもらいたくないですね。東京都民のこれまでのノリからすると,鳥越の当選可能性も小さくないと思いますが,さすがに70代後半の知事はダメでしょう。石原知事の例はありますし,年齢差別をするわけではありませんが,東京オリンピックという国家的行事が待っている東京都の知事は,意欲,能力,体力いずれもフル回転してくれるような人になってもらいたいです。
 小池百合子については,東京都議会のヤミをぶっつぶすという狙いでの出馬でもあるそうで,これはやや後ろ向きの動機のような気がしますが,こういう組織にこだわらない一匹狼的なところは,個人的には好きで,投票権はありませんが応援したくなります。
 元岩手県知事で総務相でもあった増田寛也は地方の人口過疎問題などでマスコミによく出ていましたが,官僚くささが抜けず親しみがもてないタイプで,東京都ではこういう人はなかなか当選できないでしょう。
 もちろん激戦となるでしょうが,東京都民が冷静に選択すれば小池,ムードでいくなら鳥越,投票率が下がって自民党と公明党の組織票がモノをいう展開になれば増田でしょう。
 でもほんとうは舛添で良かったのでは,いや猪瀬で良かったのでは,という思いの都民もいるのではないでしょうか。振り返ると,猪瀬にせよ,舛添にせよ,巨悪ではなく,数年後には,なんであれくらいのことで知事を辞めたんだろうと,ということになりそうな気もします。彼らの危機管理が甘かったということかもしれませんが,そんなことで膨大な税金を使って,つまらない候補選びをしなければならないということの無駄をもっと考えるべきです。マスコミも,視聴率がとれるからといって,猪瀬や舛添のニュースを垂れ流し続けたことの責任は重いと思います。

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2016年7月17日 (日)

池井戸潤『七つの会議』

 池井戸潤『七つの会議』(集英社文庫)を読みました。なかなかの力作だと思いました。東京建電の営業一課係長の八角は,会議中に居眠りばかりしていることで有名でした。出世ルートからはずれているのですが,部下に厳しい北川部長は,なぜか八角には寛大です。同期入社ということもあるのかもしれませんが,その理由が,後輩の原島営業第二課長にはよくわかっていませんでした。
 北川部長のお気に入りは,営業成績のよい坂戸営業第一課長でした。坂戸のほうは,八角に厳しく当たっていたのですが,あるとき,八角が坂戸をパワハラで訴えます。坂戸は人事部付きで降格となるのですが,その理由は単なるパワハラが原因ではなさそうです。
 課長が原島に変わったとき,突然坂戸によって取引を打ち切られていたネジ業者「ネジ六」を原島が訪問して,取引の再開を持ちかけます。窮地に陥っていたネジ六はこれによって経営危機から脱することができました。
 坂戸の人事や納入業者の変更を不審に思っていたのが経理課課長代理の新田でした。ネジ業者を元に戻してコストがアップしたことから,原島がネジ六と癒着があったのではないか,と訝ったのですが,そのうち,原島ではなく,坂戸のほうに新たに取引を始めたトーメイテックとの癒着があったのではないかという疑問をもつようになります。しかし会社の上層部は,新田の動きを快く思っていませんでした。新田は,部下との不倫問題などを持ち出され,大阪への転勤を命じられました。左遷です。
 カスタマー室長の佐野は,上司の不興を買っていまのポストにとばされていました。商品クレームの対応で,まったくやる気がなかったのです。そんなあるとき,椅子のネジの不良が原因のクレームがあり,それを調べていくと,トーメイテックの納入したネジに不良品が多いことがわかりました。佐野はこれを社長らに申告しようと考えていたのですが,そう簡単ではないことがわかりました。このネジは,列車や航空機の椅子にも使われていることがわかったのです。ネジの不良が明るみにならば,会社はつぶれてしまう危険がありました。
 北川部長に,坂戸とトーメイテックの不正を知らせたのは八角でした。八角は実は鋭い有能な男でした。事実確認をしたうえで,北川部長は,この情報を宮野社長に告げたところ,宮野社長は,隠蔽を指示しました。その後,村西副社長に匿名の告発文が届きました。村西は,親会社のソニックからお目付役として出向してきており,今回の不正隠蔽のことは知らされていませんでした。ソニックから来た人間はよそ者で,そんな人に,会社の不祥事を知られたくなかったのです。しかし何者かが村西に告げたのです。それが八角でした。
 村西は,親会社にこのことを報告したのですが,今度は親会社の徳山社長が隠蔽を決断し,ヤミで回収するよう命じました。村西は愕然としますが,この会社で,かつてのライバルで現在ソニックの常務取締役をしている梨田が,20年前に,今回と同様の規格外の部品にを使ってコストを下げるよう納入業者に働きかけたことがあったという話を耳にします。今回のネジ騒動でも同じようなことが繰り返されたのです。ソニックの常務として,今回の東京建電の不祥事を難詰する梨田に対して,村西は怒りをおぼえます。そんななか,新聞に不祥事が出てしまいます。これも八角の仕業でした。
 今回のネジ問題は,坂戸が引き起こした事件なのですが,坂戸は不正をもちかけたのは,トーメイテックの江木社長だと言い張ります。江木はもちろんそれを否定しています。ソニックの調査委員会は,坂戸の言い分について証拠がないとして一蹴しますが,八角は独自に調査をはじめ,実は宮野社長が江木を唆していたとの証言を得ます。宮野社長は社内では人望がありましたが,目下の者には厳しく,社長のことを快く思っていなかった専属運転手から八角は証言を得たのです。
 こうして坂戸は懲戒解雇にはなりはしましたが,損害賠償責任は免れることができました。東京建電は不祥事があった営業一課のみ残し,あとは新会社に移転して再建することになりました。八角は新会社に移籍するという話もあったのですが,最後に坂戸を救うことに奔走したのです。結局,八角は東京建電に残りました。「虚飾の繁栄か,真実の清算か-。強度偽装に気づいたとき,八角が選んだのは後者だった」のです。
 サラリーマン社会の厳しさが見事に描かれています。同時に,正義を追求することと,社内の出世とは相容れないものであるということも感じさせられます。社会の正義と会社の正義とは違うということでしょう。八角が勝者なのか敗者なのかははっきりしません。
 著者は八角のようになれずに苦しんだ男たちにも優しい目線を送ります。男たちの人生には,その生い立ち,いま背負っているもの(親,兄弟,家族など),ライバルに勝ちたいという出世欲,自分がほんとうにやりたいこととの葛藤など,いろんなものが渦巻いています。
 そういう人間くさい話と,サスペンスの要素も兼ね備えた本書は,最近読んだなかでも,かなり面白い本の部類に入ると思います(★★★★☆ 池井戸作品からは一度は離れたのですが,久々に読んでよかったです)。

廃止前のブログの最後に書いていたものです。

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ブログ再開

ブログを試験的に再開することにしました。

前のココログは,日頃使っていなかったniftyメールでちょっとトラブルがあって面倒だったので解約したところ,ココログがniftyであることをすっかり忘れていて,結局これまでのブログの内容全部が消失してしまいました。読者の方にはご心配かけましたが,このことを伝える手段がないのには困りました(死亡説,体調不良説,公序良俗違反の投稿による削除命令説などなど,あったようです)。

niftyに再加入しても,もとのブログの内容は復活しそうにないので,別に急ぐこともないと思い,しばらく休んでいました。以前は日課のように書いていたので,休むと楽な気分にもなりました。ただ何か書きたいという気持ちになることもあって,どうしようかなと思っていました。ツイッターにしてみることも考えたのですが,自分のスタイルとは違う感じがして。

ただ,中止してわかったのですが,実に多くの人に私のブログが支えられていたんですね。ぜひ復活してほしいという意見もいただきました。寝る前に読むのが日課だったと言われたりもして,申し訳ない気持ちにもなりました。ということで,前のように頻繁にはアップしないつもりですが,復活させようと思いました。ココログのみの登録もできるようなので,登録し直しました。

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