将棋

2021年4月 8日 (木)

名人戦始まる

 将棋ファンにとっては,春といえば名人戦です。昨日から名人戦が始まりました。ただ,その前に,将棋界に激震が走りましたね。ハッシーこと橋本崇戴八段が,家族の問題から引退しました。棋士が,加齢で弱くなったわけでもなく,健康上の問題もないのに,引退というのは異例のことではないでしょうか。残念です。
 女流で男性棋士にバンバン勝っている西山朋佳女流三冠は,奨励会を退会しましたね。プロ棋士にあと一歩のところまで来ていたのですが,限界を感じたのでしょうか。里見香奈さんもそうでしたが,女流棋士ではお互いにしか負けないくらい強い二強ですが,それでもプロ棋士の四段になれないというのは,厳しいですね。女性で初のプロ棋士はいつ誕生するでしょうかね。西山さんと里見さんは女流の世界で覇を競いことになるでしょう。
 名人戦に話を戻すと,名人初挑戦の斎藤慎太郎八段が,渡辺明名人との第1局で,途中までは名人ペースで勝勢というところまでいっていたのですが,粘りに粘って,自陣に金や銀をペタペタ打って要塞を築きながら,名人の攻め駒であった龍を消し,馬も追いかけながら,最後は相手の鉄壁であった穴熊を崩し,見事に勝利を収めました。ただ初戦は,名人も相手のお手並み拝見というところであったのかもしれません。ここからが強いのが渡辺名人です。第2局以降も楽しみです。個人的には,斎藤八段に,名人位を関西に持ち帰ってほしいです。
 その他の棋戦では,藤井聡太王位への挑戦を争っている王位戦の挑戦者決定リーグがかなり進んでいます。紅組は,木村一基九段,豊島将之竜王,澤田真吾七段が31敗で並んでいます。現在,斎藤八段は2敗ですが,まだチャンスはあります。白組は羽生善治九段が3連勝で走っていますが,永瀬拓矢王座が2連勝で,2人の直接対決が残っているので,羽生有利とは言い切れません。ただ,若手に囲まれるなか羽生九段の頑張りが目を引きます。もう一つ,同じく藤井聡太二冠がタイトルをもつ棋聖戦では,決勝トーナメントで4強がそろいました。準決勝は,永瀬王座対中村大地七段,そして山崎隆之八段対渡辺名人です。順当なら渡辺対永瀬の決勝となりそうで,そうなると王将戦の再来となりますが,ここはA級棋士となった山崎八段の意地をみたいところです。

2021年3月23日 (火)

文句なく強かった藤井二冠

 藤井聡太二冠(王位,棋聖)が,竜王戦2組ランキング戦準決勝という,一般の人にはわかりにくい対局において,松尾歩八段に,豪快な勝ち方をしました。竜王戦には1組から6組まであって,上位の組への昇級は,順位戦と同様,1年に1つずつしかできないのですが,たとえ6組であってもランキング戦に優勝すれば,竜王戦の決勝トーナメントに出場できます。そこで勝ち抜けば,竜王に挑戦できます。ということで一番下のクラスにいても竜王を獲得できる可能性がある点は,A級に昇級しなければ名人に挑戦できない順位戦との大きな違いです。藤井聡太二冠は,デビューしたときは6組でしたが,そこでランキング戦に優勝して決勝トーナメントに出ました。残念ながら,佐々木勇気六段(当時は五段)に敗れましたが,これがデビューして29連勝したあとの,初黒星でした。翌年は5組に昇級してそこでもランキング戦に優勝して決勝トーナメントに出ましたが,増田康宏六段に破れました。その翌年は4組に昇級して,再びランキング戦に優勝して決勝トーナメントに出ましたが,豊島将之竜王(当時は名人)に敗れました。その翌年は3組に昇級してまたもランキング戦に優勝して決勝トーナメントに出ましたが,丸山忠久九段に敗れました。そして今年です。2組のランキング戦の準決勝に勝ったので,2位以内が確定です。2組は2位までが決勝トーナメントに進出できます。また来期の1組昇級も決まりました。1組となれば,5位まで決勝トーナメントに出れますので,挑戦者になりやすくなります。今日は,そういう意味のある対局でした。相手の松尾八段も順位戦のB1組に長年いる実力者で,今日もあと1手余裕があれば,勝勢となるというところまで行ったのですが,藤井二冠の長考の末の4一銀というただ捨てが妙手で,それにより,たちまち松尾玉は窮屈となり,藤井勝勢となりました。素人目には,この手もあるかなと思っていたのですが,そこからどう相手玉を寄せるかはよくわかっていませんでした。すごい攻めで,神業ですね。こういう勝ち方をみれば,今年は決勝トーナメントを勝ち抜くような気がします。
 藤井二冠にとって,これが今期最後の対局で,最多勝利,最高勝率(驚異の8割超え),最多連勝(ただし連勝は続いているので,翌年度の記録となる)となり,最多対局数を除き年度成績のタイトルを総なめにしました。もちろんタイトルを二つ取ったこともすごいです。棋戦も二つで優勝しています(朝日杯と銀河戦)。順位戦も全勝でB1組に昇級を決めています。渡辺明三冠も強いですが,数字的には,藤井二冠が完全に凌駕しています。今年の冬には竜王を取っているでしょうか。そして2年後の夏くらいには名人を取っているでしょうか。
 大学に進学せずに,将棋一筋で生きていくと決めた決意もすごいです。すでに将棋界の歴史に名を残す活躍をしていますが,今後どこまで成長するか楽しみです。

2021年3月21日 (日)

充実の渡辺三冠

 渡辺明三冠が王将と棋王のタイトルを防衛し,通算28期となって,谷川浩司九段を抜いて歴代単独4位になりました。1位は羽生善治九段の99期というとてつもない記録で,大山康晴80期,中原誠64期というレジェンドに続く4位です。最近の充実ぶりはすばらしく,とくに関西勢に強いですね。渡辺三冠は3年前くらいはA級から陥落するなど不調でしたが,そのときでもタイトルは保持し続けましたし,その間にAI将棋にも対応して,みごとに復活しました。
 谷川九段も,将棋連盟の会長などをしていなければ,もう5個くらいはタイトルが取れていたのではないかという気もしますが,それはいまさら言っても仕方ありません。ファンとしては,せめてもう1個タイトルをとってもらえないかと期待したいところですが,現実的には厳しいでしょうね。ただ少し前の日経新聞の夕刊の連載では,AIを取り入れていないと書かれていたので,もしAIを取り入れて研究をすれば大復活もあるのではないか,と密かに期待しています。
 渡辺三冠は,もうすぐ斎藤慎太郎八段との名人戦です。渡辺三冠の充実ぶりからすると,名人防衛の可能性は高いですが,斎藤八段も勢いがあるので,熱戦を楽しみにしています(明日のNHK杯では,稲葉陽八段との決勝です)。

 

2021年3月 8日 (月)

志が違う

 藤井聡太二冠は,長考派の棋士です。将棋の対局では持ち時間に制限があるので,終盤で考えるための時間をとっておくために,あまり序盤から長考しない棋士も少なくありませんが,藤井二冠は序盤から納得ゆく手を指したいために,とくに十分に事前に研究している戦法以外は,一手一手にしっかり時間をかけて指し手を決めています。そのため終盤で時間が残っていないこともよくありますが,彼の美学は,もしそれで時間が足りずに負けても仕方がないということなのでしょう。実際には,時間がなくてもミスをしないから,あれだけの勝率をあげているのですが。
 将棋というのは,序盤や中盤でどれほど有利に進めても,最後に悪手を指すと負けてしまいます。たしか,羽生善治九段も,将棋は最後にミスをした者が負けるゲームと言っていたと思います。これまでの積み重ねが,最終盤の1手のミスでフイになってしまうこともあるのです。それがわかっていても,自分がどのような手を指したかはすべて棋譜として残るのであり,それが恥ずかしいものにならないよう,すべての手について全力で考えているのでしょう(負け将棋で往生際が悪く延々と指すことを「棋譜を汚す」と言ったりもします)。このように将棋に美学を求める棋士の代表が谷川浩司九段ですが,最近の棋士は,どんな勝ちであっても,勝ちは勝ちと割り切って考えている棋士も少なくありません。藤井二冠は,勝負事なので勝ちにこだわることは当然ですが(実は,藤井二冠は,相手のミスを誘発するような手を指す独特の勝負術を兼ね備えています),そのなかでも,自分の手が記録として残ることを意識して,少しでも優れた手を指そうと努めています。とても志が高いのです。
 まだ20歳にもならない若者とはいえ,求道者のように高みを目指していく姿には,すでに神々しいものを感じます。そういえば,藤井二冠と同じ中学生棋士である加藤一二三も「神武以来の天才」と言われましたが,大山康晴15世永世名人にいじめられて(盤上でのことですが),その実力ほどのタイトル獲得記録は残っていません。加藤にとっての大山のような,藤井二冠に立ちはだかる棋士は,現時点ではいない感じもします。ただ,藤井二冠に迫るライバルが新たに登場する可能性はあります。AI時代における将棋界において,藤井二冠がこのままあっさり「天下統一」できるほど,この業界は甘くない気もしますが,どうでしょうか。

2021年2月27日 (土)

将棋界の一番長い日

 A級順位戦の最終局は一斉対局です。これで名人戦の挑戦が決まります。降級はすでに三浦弘行九段と稲葉陽九段が最終局を待たずに決まっていました。最終局では二人とも敗れて,不本意な成績で終わりましたね。稲葉九段は,5年前にA級に昇級した年にいきなり当時の佐藤天彦名人に挑戦し,翌年もプレーオフに出てあと1勝で挑戦というところまでいくなど活躍したのですが,その翌年は36敗,その次の年は4勝したものの残留組では最下位となり,今年も結局27敗で終わり降級となりました(今日は糸谷哲郎八段に敗れました)。ライバルであった豊島将之竜王や竜王経験者で現在も棋王戦の挑戦者になっている糸谷八段と差がつけられてしまっていますが,まだ若いので,復活を期待したいです。
 それで挑戦者ですが,斎藤慎太郎八段が,ここまで71敗で,広瀬章人八段が63敗で2番手で,斎藤が負けて,広瀬が勝った場合にのみプレーオフでしたが,最終局は広瀬八段が豊島竜王に敗れて,斎藤八段の対局の結果を待たずに,斎藤八段の挑戦が決まりました。おめでとうございます。昇級していきなりの挑戦権の獲得はお見事です。今期は豊島竜王に敗れただけで見事の成績でした。最終局も佐藤天彦九段に勝ちました(佐藤天彦九段は45敗)。渡辺明名人は難敵ですが,この勢いで名人をとってもらいたいです。斎藤八段は王座を獲得したこともあり,タイトル戦も経験済みです。藤井聡太二冠が名人を取る前に,取っておきたいところですよね。
 このほかには菅井竜也八段が佐藤康光九段に勝って5勝4敗と勝ち越しでA級1期目を終えました(佐藤康光九段は4勝5敗)。また羽生善治九段が三浦九段に勝ち45敗となりましたが,来期は残留組のなかでは最下位の順位となります(45敗は他にもいますが,羽生九段よりも順位が高い人ばかりでした)。来期もまた厳しい順位戦になるかもしれませんね。

2021年2月17日 (水)

藤井二冠の高校中退に思う

 将棋の藤井聡太二冠(王位,棋聖)が,高校を退学していたそうです。もちろん辞めさせられたわけではなく,自ら辞めたそうです。昨年の6月から7月にかけては,タイトル戦が続いていて,とても学校に行くどころではなかったことでしょう。中学生でプロになって,高校に進学する必要があるかということさえも,当初は悩んでいたようです。お母さんは東大に行くことを望んでいるという記事もあり,それをネタにして,原稿を書いたこともあります(「雇われない働き方」ジュリスト1529号)。しかし,藤井二冠は高校に行く必要はなかったでしょうし,ましてや大学進学の必要もないでしょう。多くの人が高校や大学に進学するのは,そこで何かをほんとうに学びたいからではなく,会社員になるためのパスポートを得るためです。すでに歴史的な大棋士になりつつある藤井二冠にとっては,不要なパスポートでしょう。
 棋士の多くは生涯一度もタイトルをとらないまま引退します。ましてや同時に二つのタイトルをとっている棋士は,ほんのわずかです。現役では,羽生善治九段,谷川浩司九段,渡辺明名人(現在3冠),豊島将之(現在2冠),久保利明九段,佐藤康光九段,森内俊之九段,高橋道雄九段,南芳一九段,永瀬拓矢王座だけです。歴代でも,これに大山康晴第15世永世名人,中原誠第16世永世名人,升田幸三実力制第四代名人,米長邦雄永世棋聖,ひふみん(加藤一二三)が加わるだけです。そうそうたるメンバーです。ちなみに,三冠となると,羽生,谷川,渡辺,豊島,森内,大山,中原,升田,米長だけとなります。四冠となると,羽生,谷川,大山,中原,米長だけです。このあたりとなると,完全にレジェンドです。藤井二冠は,三冠・四冠への挑戦に向けて,この春から夏に向けて,まずは二冠の防衛と,王座や叡王あたりを狙いにいくはずです。順位戦でも「鬼の住処」と呼ばれるB級1組で1年をとおして戦うことになるので,学業との両立は難しいでしょう。
 彼の棋士としての成功はほぼ約束されたものなので,高校を卒業したり,大学受験をしたりする意味はないのでしょう。それに勉強をしたくなれば,別に大学に行かなくても,ネット上でいくらでも勉強する機会はあります。
 最近の棋士には大学卒も結構いて,なかでも棋王戦で渡辺棋王とタイトル戦を戦っている糸谷哲郎八段のように,大阪大学の大学院の修士を終了している高学歴者もいます。糸谷八段のように,華やかな才能を感じさせる秀才肌の棋士は,大学や大学院で広く知識を深めることでそれを将棋に活かしていく道もあるし,ひょっとすると将来は将棋以外の道でも能力を発揮する可能性があります。一方,藤井二冠は,勝負術も兼ね備えた職人肌の天才棋士で,将棋で大仕事を成し遂げられる人でしょう。
 藤井二冠のような生き方は,普通の人にはまねができないような気もしますが,そうでもありません。AI時代においては,AIに負けない技能を習得するというキャリアプランを立てなければならないのですが,そうなると,大学には何のために行くのかということを,よく考えておかなければなりません。大学を出ていれば,会社員へのパスポートが得られるから,というかつての常識は,急速に通用しなくなってきています。いまの1年生あたりは,たんに大学を出るだけでは就職できないかもしれません。首尾良く企業に正社員として採用されても,それだけでは,おそらく幸福な職業人生を送ることは難しいでしょう。
 オンライン学習が一般化して,勉強はいくつになってもできるし,学歴はあまり意味がなくなる,という時代になったときには,藤井二冠のように,まずは自分のスキルを磨くためにそれに専念するという生き方こそが正しいものとなるように思えます。もちろん彼の長い人生において,今後,将棋以外のことを目指すときがくるかもしれません。ひょっとしたら純粋に学問をしたいと思うときだって,来ないとはかぎりません。大学には,そのときに行けばよいですし,そういう人こそ,大学に来て欲しい人たちなのです。

2021年2月11日 (木)

朝日杯将棋オープン戦

 

 藤井聡太二冠(王位・棋聖)が,朝日杯将棋オープン戦で3回目の優勝をしました。デビューしてから4年少しで3回目の優勝というのは驚異的です(他の棋戦も含めると優勝は5回です。師匠の杉本昌隆八段はデビューして30年ですが,棋戦優勝はありませんから,藤井二冠のすごさがわかります)。デビューした年に,この棋戦で,準決勝で羽生善治九段に勝ち,決勝で広瀬章人八段に勝って,大変な話題になったのですが,このときは当時の名人の佐藤天彦九段,そして竜王であった羽生九段をやぶり,将棋界のみならず世間も驚かせました。その翌年は決勝で,当時,棋王であった渡辺明名人に勝って2連覇をはたしましたが,そのときにはもう誰も驚かなくなっていました。昨年は優勝した千田翔太七段に準決勝で敗れてしまい,惜しくも3連覇は逃しましたが,今年は,デビュー以来6連敗していた大の苦手の豊島将之竜王に初めて勝ち,準決勝では渡辺名人に勝ち,決勝では三浦弘行九段に勝ちました。同じ日に準決勝と決勝をやるのが,この棋戦の特徴です。ちなみに持ち時間は40分で,切れたら1分将棋という早指し戦です。
 今日はAbemaで中継をしていたので,仕事の合間にずっとみていました。午前中の渡辺名人戦は,途中で,AIの評価値が確か99%まで渡辺勝ちになっていて,渡辺名人が必勝の状況でした。素人目にも,渡辺名人が大優勢で,藤井側の玉が頼りなく中段に引っ張り出されていました。ところが,名人が最終盤で1手だけなのですが緩手を指したために,たちまち評価値は逆転し,そのまま藤井二冠の逆転勝ちとなりました。評価値が逆転しても,そう簡単には勝ちにならないのですが,終盤の強さはAI並みの藤井二冠は大逆転勝利をはたしました。渡辺名人にこういう勝ち方ができるのは,藤井二冠くらいしかいないのではないでしょうかね。
 決勝の三浦戦も,藤井玉は中段に引っ張り出され,最終盤でAI評価値では,藤井二冠の緩手もあって三浦九段が優勢になりました。しかし,最後は三浦九段のほうに緩手が出て,きわどいところで藤井二冠の逆転勝ちになりました。
 藤井二冠は詰将棋の選手権でも何度も優勝していて,終盤が強いのはわかっているのですが,不利になっても粘り強く指して,逆転を目指すという勝負術も兼ね備えています。それが,これだけの高い勝率につながっているのだと思います。将棋は,相手に信頼されるということが大切です。信頼されていると,一手一手に深い意味があると相手が考えてくれるので,それだけ相手の持ち時間が奪われて有利となりますし,相手の悪手も出やすくなります。三浦九段も優勝を逃した悔しさもあったはずですが,「相手が藤井さんだから」と言っていたくらい,藤井二冠の強さはトッププロの間でも浸透しています。王将戦のリーグではちょっとした挫折も経験しましたが,先日は,順位戦のB級2組も軽く通過を決めて,いよいよ来期はB級1組です。おそらく1期で通過して,2022年にはA級棋士になるでしょう。A級ではそう簡単には勝てないかもしれませんが,名人位がいよいよ射程に入ってきましたね。
 ところで,王位戦が,まさか冗談か,と思ったのですが,「お~いお茶杯王位戦」に名称が変わりました。伊藤園が特別協賛して2期だけ名称が変わったようです。藤井二冠が,対局中にお茶をよく飲むのは有名で(初手を指す前にも,必ずお茶を飲みます),伊藤園もお茶を提供していたようなので,語呂合わせのようですが,よい宣伝になることでしょう。藤井二冠が,お茶を飲みながら,王位を防衛して,伊藤園に利益をもたらすということでしょうね。

2021年2月 5日 (金)

山崎八段昇級

 順位戦は,そろそろ佳境を迎えています。昨日はB1組で,山崎隆之八段が対局では敗れたとはいえ,他の棋士が敗れたのでA級への昇級を決めました。これまでで最も時間のかかったA級昇級です。山崎八段は,早くから天才と言われて,その独創的な棋風はファンも多いのですが,なかなか大きな活躍ができませんでした。タイトルは取っていないし,順位戦もB1組に長く滞留していました。年齢が近い阿久津主税八段などは,A級に上がってすぐに落ちるというのを2度繰り返していますが,それでもA級の経験があるということは残ります。あのハッシーこと橋本崇載八段もA級を1期経験しています。山崎八段は,もう無理だろうと思われていたのですが,40歳手前でやっと昇級です。今期は難所の永瀬拓矢王座に勝つなど,好調を維持して,最終局を待たずに昇進を決めました。
 A級というのは,若くて才能のある棋士がスムーズに到達するケースが多いのですが,苦労して昇級するケースもないわけではありません。ただ,この場合は,すぐに降級してしまうことが多いように思います。いまから40年前,木村義雄名人(第14世永世名人)の三男であった木村義徳七段(当時)が,44歳でA級(名人戦挑戦者決定リーグ戦 )への昇級を決めたことは,よく記憶しています。これまであまりパッとしなかった棋士が,ある一瞬輝いたのです。結局,A級では全敗で,すぐに陥落となりました(阿久津八段も1回目のA級は全敗で陥落し,2回目も最終局で1勝したものの,あとは勝てませんでした)。A級の壁は厚いものがあります。山崎八段は,木村八段よりも強いと思いますが,関西勢の仲間(豊島,斎藤,糸谷,菅井)も多い中,どこまで力を発揮できるでしょうか。ようやく名人に挑戦できるところまで来たのです。現在B級2組にいる藤井聡太二冠(王位・棋聖)が上がってくるまでに,名人を獲得して,藤井八段を迎え撃ってほしいですね。
 そのB1組は,もう一人の昇級候補は,もちろん永瀬王座です。永瀬王座は,現在の四天王の一人で,A級にふさわしいのですが,順位戦はすんなりとはいきませんね。最終局に勝てば昇級ですが,負けると,木村一基九段が勝てば,1期でA級に返り咲くことになります(昇級は二人)。
 名人への挑戦を決めるA級のほうは,渡辺明名人に誰が挑戦するかですが,最有力だった豊島竜王が脱落して,先頭を走るのはA級に上がったばかりの斎藤慎太朗八段です。最終局で勝てば挑戦権を獲得し,敗れたときには,広瀬章人八段が勝てばプレーオフになります。対戦相手をみると,斎藤八段の挑戦の可能性が高いと思います。A級からは,残念ながら稲葉陽八段が陥落です(もう一人は,三浦弘行八段です)。稲葉八段は,名人挑戦経験もあるのですが,最近はパッとしない状況で,降級もやむを得ない感じです。関西勢として,1期で復帰を期待したいところです。

2021年1月21日 (木)

棋戦情報

 久しぶりに将棋の話をしましょうか。現在の将棋界は4天王がいて,しのぎを削っています。豊島将之竜王は,先日,羽生善治九段の挑戦を退けて防衛しました。羽生九段のタイトル通算100期という大記録は未到達のまま終わるのでしょうか。竜王戦の最終戦は,終盤は大激戦で,AIでは羽生が勝ちとなっていたのに,羽生が投了してしまったという劇的な終わり方でした。豊島竜王は叡王のタイトルももって二冠です。この豊島竜王をさしおいて現役最強と言われているのが,渡辺明名人です。王将と棋王のタイトルももっていて三冠です。そして昨年,この渡辺から棋聖のタイトルを奪ったのが藤井聡太で,現在,棋聖と王位の二冠です。そして,もう一人の四天王が永瀬拓矢王座です。昨年は,久保利明九段とフルセットにもつれこみましたが,32敗で防衛しました。4天王以外で,唯一タイトルに近かったのが,この久保九段でしたね。永瀬王座は,いま渡辺名人と王将戦を戦っています。渡辺が先勝しましたが,永瀬王座は,格上相手をやぶってタイトルをとっていないので,ここは渡辺王将をやぶってタイトル奪取といきたいところでしょう。それに待望のA級にもあと一歩となっています。A級棋士にならなければ一流ではありませんから,永瀬王座は今年で確実に昇級を決めたいでしょうね。渡辺名人は,もうすぐ棋王戦の防衛戦も始まります。挑戦者には,糸谷哲郎八段が登場します。棋王戦は少し波乱があり,予選で藤井聡太が出口若武四段にやぶれるとか,羽生九段も相性のいい屋敷伸之九段にやぶれるとか,永瀬二冠はベスト4まで残ったものの,ベスト4以降は,2敗で敗退という変則ルールの下,広瀬章人九段と糸谷八段にやぶれて敗退しました。糸谷八段は広瀬九段に決勝で敗れていましたが,挑戦者決定2番勝負で連勝して逆転で挑戦者を勝ち取りました。糸谷八段は,かつて竜王のタイトルを,渡辺三冠に奪取されたことがあるので,今回は雪辱を期す場となるでしょう。

2020年9月23日 (水)

棋界情報

 最近ではNHKのニュースでも将棋の対局結果を普通に報道するようになっていて驚きです。今日はタイトル戦でもないのに,王将リーグの初戦の羽生善治九段と藤井聡太二冠の対局を詳しく報道していました(羽生九段勝ち)。
 この間,名人戦は,藤井聡太に棋聖をとられて二冠に後退していた渡辺明が,豊島将之から悲願の名人位を奪取しました。渡辺名人の次なる目標は永世名人ですが,藤井聡太が名人になるまでに5期達成できるかが注目です。
 渡辺の名人奪取は,最近の充実ぶりからすると当然のことであり,藤井にタイトルを取られたのは,藤井が強すぎたためで,決して調子は落ちていませんでした。一方,豊島のほうは,永瀬拓矢との叡王戦での死闘があり,かなり消耗していたこともあって調子が落ちているような感じでした。とはいえ,豊島も,叡王戦は,最後は2連勝してタイトルを奪取したのは見事でした。これで将棋界は,現在,渡辺三冠(名人,棋王,王将),豊島二冠(竜王,叡王),藤井二冠(王位,棋聖),永瀬一冠(王座)という勢力分布で,この4人が4強として,当分はタイトル戦が戦われると予想していました。ところが,竜王戦は,まさかと言ったら失礼ですが,丸山忠久九段が藤井聡太二冠に勝ってしまい,挑戦者3番勝負では,その丸山九段に羽生九段が21敗と勝って,しばらくタイトル戦から離れていた羽生九段がついに竜王戦に登場することになりました。2年前に広瀬章人八段に取られた竜王を奪回して,それ以来無冠である羽生九段が通算タイトル100期の偉業を達成するかが注目です。立ちはだかるのは豊島竜王です。もう一つの注目は王将戦です。渡辺王将に対して羽生九段,藤井二冠,豊島二冠,永瀬王座に加え,佐藤天彦九段,広瀬八段,藤井聡太にせっかくのタイトルを4連敗で奪われてしまった失意の木村一基九段というメンバーで王将リーグを戦います。渡辺三冠も含め4強が勢揃いで,現時点の最強棋士を決定するにふさわしいメンバーがそろいました。現在の調子からすると,藤井二冠,豊島二冠,永瀬王座が有力な挑戦者候補ですが、今日,藤井二冠は羽生九段に敗れ,また藤井二冠は,豊島二冠を公式戦5連敗と大の苦手にしていることも考えると,今日の時点で,本命は豊島二冠,対抗は永瀬王座,穴は羽生九段というところでしょうか。渡辺王将としては,藤井二冠が挑戦者になることを最も恐れているかもしれませんが。

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