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2019年5月17日 (金)

豊島名人誕生

 久しぶりに将棋のことを書きましょう。アモリスタ・ウモリスタになってから初めてかもしれません。
 名人戦第4局は,豊島将之2冠(王位,棋聖)が,佐藤天彦名人に勝ち,4連勝で名人位を奪取しました。1年ちょっと前までは,無冠だが実力ナンバーワンと言われていた豊島新名人でしたが,昨年の棋聖戦で,当時の羽生善治棋聖からフルセットの末,初のタイトル奪取をし,次いで,王位戦でも菅井竜也王位から,同じフルセットの末,タイトルを奪取して2冠となり,いきなり棋界の第一人者に登り詰めました。その後,竜王戦では,広瀬章人八段(当時)が,羽生竜王をフルセットの末破って,竜王を奪取し,羽生の100個目のタイトルを阻止し,かつ無冠にさせたことで,主役を奪われましたが,2018年度は,間違いなく豊島2冠の1年でした。そして順位戦(A級)も順調に勝ち上がり,初の挑戦で,見事に名人を奪取し,これで3冠となりました。A級に昇給したばかりの2017年度(第76期)は,後半に失速して史上初の6人のプレーオフとなり,順位が一番下の豊島八段(当時)は,5連勝しなければ挑戦できないという過酷な状況になりました。さらに王将戦の挑戦者にもなり,その戦いも併行するという超過密スケジュールでした。結局,A級順位戦プレーオフでは3連勝のあと羽生2冠(当時)に破れ名人挑戦を逃し,王将戦でも久保利明王将に敗れタイトル奪取はならなかったのですが,そこから立ち直ったのはさすがです。
 タイトルの序列では,竜王が最高とされていますが,歴史の重さからすると,名人位が棋界最高のタイトルであることは間違いありません(棋士たちは,高額の賞金を出す竜王戦のスポンサーへの配慮からでしょうか,そうは口にしませんが)。ついに,このタイトルにたどり着いた豊島名人は感無量でしょう。これからはタイトル5期で得られる永世名人を目指してほしいです。
 しかし,現在,棋界は,まだ豊島名人による天下統一とまでは言えません。数日前には,昨年から絶好調の永瀬拓矢新叡王が誕生しました。一昨年羽生王座からタイトルをとった中村太一王座を破って,昨年秋には斉藤慎太郎王座が誕生しました。広瀬竜王もいます。それになんと言っても,いま一番注目の強豪棋士は,渡辺明2冠(棋王,王将)です。まさかのA級陥落をした昨年,鬼の住処と言われるB級1組を全勝で駆け抜けて今期A級に復帰しました。その間,まさに鬼のような強さで勝ち続け,棋王の防衛戦では,広瀬新竜王を寄せ付けず,王将戦は久保王将から4連勝でタイトルを奪取しました。そして,もうすぐ豊島新名人の棋聖に挑戦します。勝ったほうが3冠という頂上対決です。
 とはいえ,これが本当に実力ナンバー1の決定となるかというと,そうではないのです。今年初めの朝日杯の決勝で,絶好調の渡辺棋王(当時)を決勝で破って優勝したのが,藤井聡太七段でした。この棋戦は2連覇です。現時点では,まだ豊島新名人のほうが実力は上かもしれませんが,渡辺2冠も含め,この3人の誰がナンバーワンか。また,羽生九段も,NHK杯では豊島2冠(当時)を破るなどして優勝しており,さらに王位戦も挑戦に近いところまで来ていて,まだわかりません。永瀬叡王も広瀬竜王もいます。ということで,現在の状況は,藤井時代が到来するまえの一時的な混乱なのか,それとも,藤井時代の到来はまだもう少し先なのか。藤井七段は,昨年度(第77期),順位戦C級1組で,9勝1敗という好成績ながら,まさかの頭ハネで昇級を逃しました(師匠の杉本昌隆八段が昇級して話題になりました)。これで名人になる可能性がある年が1年遅くなりました。今年はすでに発表される対戦相手をみると,全勝できそうですが,個人的には,昨年やはり9勝1敗で昇級できなかった船江恒平六段に頑張って欲しいですね(第7局が藤井戦です)。藤井七段の初タイトルの最短の可能性といえば,王座戦です。現在,挑戦者決定トーナメントに進出しています。4回勝てば挑戦者となれますが,それまでに羽生九段,そして豊島3冠か渡辺2冠と対戦する可能性が高いです。竜王戦もすでに3組昇級を決め,さらに4組優勝者として決勝トーナメントに出る可能性が残っています。一番早いタイトルは,王座,次いで竜王というところでしょう。

 

2019年2月 3日 (日)

ミステリーを3冊

 ネタバレもあるので,要注意。
 高野和明『13階段』(講談社新書)。前にこの著者の『ジェノサイド』を読んで,第1期のブログで紹介したこともありました。死刑執行直前の男を冤罪から救おうとしているのが,過去に人を殺した経験のある刑務官と傷害致死罪で有罪となり仮釈放になっている二人の男。途中で真犯人がわかりそうでわからないスリリングな展開で一気に読めてしまいます。ここには,善良な保護司もいれば,悪徳保護司も出てくるし,さらに死刑を求刑したが再審請求に向けて尽力してくれる検察官,無責任な弁護士,無能な法務大臣,ことなかれ主義の高級官僚などが次々と登場し,同時に前科者と家族,親族を殺された犠牲者の家族の悲哀も描かれ,正義とはなにか,死刑とはなにかを問いかける社会派ミステリーでもあります。
 東野圭吾『回廊亭殺人事件』(光文社文庫)。かなり前の作品ですが,まだ読んだことがありませんでした。多大な資産を残して亡くなった経営者,一ヶ原高顕の遺言が公開される回廊亭という旅館に集まってきた親族たち。その宿には,数年前にも同じように親族が集まっていたのですが,その夜に火事があり,高顕の秘書である枝梨子と付き合っていた里中二郎が死亡し,枝梨子も首を絞められ,大火傷を負います。実は,枝梨子は,子がいない高顕から,かつて付き合っていた女性が産んだ自分の子を探して欲しいという仕事を頼まれており,そうして見つかったのが里中二郎だったのです。回廊亭で,親族に里中二郎が紹介されるはずでしたが,その前夜に火事で彼が死んでしまったのです。枝梨子は,真犯人を見つけるために,高顕の知人である老婆に変装して回廊亭に乗り込みます。遺産が里中二郎に行ってしまうことをおそれた親族による放火殺人ではないかと彼女は考えています。候補者は数人いたのですが,実は真相はまったく異なっていました。悲しい女性の物語ともいえます。
 島田荘司『占星術殺人事件』(講談社文庫)。さらに前の作品です。設定は,昭和初期の二・二六事件のあった日。殺人予告とも思われる,怪しげな手記どおりに,その執筆者の親族の女性6人が,身体のそれぞれ別の部位が切り取られるという猟奇的な連続殺人事件が起こりました。犯人は,手記を書いた男となりそうですが,その男は,連続殺人事件が起こる前に殺されていました。しかも密室殺人でした。しかも,その間にもう一人,別の親族の女性も殺されていました。犯人は誰か。トリックは予想もつかないものでした。著者の読者への挑戦です。あなたは,この謎が解けるでしょうか。私は,主人公の御手洗さんが教えてくれるまでは,さっぱりわかりませんでした。

 

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