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2021年4月11日 (日)

ドイツの労働政策の動向

 ドイツの労働政策の動向について,現在はJILPTの山本陽大さんの精力的な研究発表のおかげで,ドイツの情報を,ほとんどタイムラグなしに,しかも日本語で入手できるので助かります。外国法の状況は,これまでは研究者の問題関心によるところが大きいので断片的なものとなることが多く,しかも多少のバイアスもかかってくるので,結局は自分で確認せざるを得なくなることが少なくないのですが,山本君の登場から,そういう心配がなくなりました。これはJILPTという政府系の調査研究機関の存在意義を高めるもので,JILPTに重要な貢献をしていると思いますね。
 今回,彼からいただいたのは,『労働政策研究報告書 No.209 第四次産業革命と労働法政策―“労働4.0”をめぐるドイツ法の動向からみた日本法の課題』です。第4次産業革命という言葉の生みの親であるドイツにおける,技術革新と労働政策については,これまでも彼自身がたびたび調査報告してくれていますが,今回も最新の動向を知らせてくれました。どうもありがとうございました。職業訓練政策が重要視されていることや,ギグワーク的な働き方(クラウドワーク)の労働者性が問題となっていること,個人情報保護が問題となっていることなど,たいへん示唆的です。
 私自身は,労働者性の問題は,最終的には立法論的解決しかないと考えており,自分のなかでは決着が付いているのです(拙著『人事労働法』(弘文堂)86頁を参照)が,その他については,拙著『デジタル変革後の「労働」と「法」―真の働き方改革とは何か?』(日本法令)の最終章で,相互に連関する課題として,個人情報保護,プライバシーと差別,格差(デジタルデバイドなど),教育を挙げています。ドイツの議論と交錯するところもあるので,今後,彼からいろいろ教わりながら,私自身の政策提言のブラッシュアップに努めていきたいと思います。
 また同君からは,他の若手研究者と行なったドイツ法の翻訳の資料をおさめた,JILPTの資料シリーズNo.238の『現代ドイツ労働法令集 Ⅱ ―集団的労使関係法,非正規雇用法,国際労働私法,家内労働法』もいただきました。これだけの基礎資料がそろうと,ドイツ労働法の研究は,とても助かりますね。今後はこうした情報を活かした立派な理論研究が出てくることでしょう。
 私の目につくものに偏りがあるのかもしれませんが,なんとなく比較法のすぐれた情報がドイツ法に傾きすぎている感じもしますね。JILPTでは,比較法というと,独仏英米となりますが,質的にも量的にも,ドイツ法が圧倒しているような気がしています。今後はもっと他国の情報も広がってくれればよいのですが。

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