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2021年4月 3日 (土)

池田心豪『仕事と介護の両立』

 佐藤博樹・武石恵美子責任編集の「ダイバーシティ経営」のシリーズで,今度は,池田心豪『仕事と介護の両立』(中央経済社)をいただきました。どうもありがとうございました。私のような者にまでお気遣いいただき感謝します。
 JILPTの主任研究員である池田さんの話は,以前にJIRRAの研究会でお聞きしたような記憶があり,ブログでも採り上げたような気がします。介護と労働の問題については,すぐに名前があがる方だと思います。
 育児介護休業法は,文字どおり,育児と介護を並列しており,休業をはじめとする様々な保障内容もほぼ相似形ですが,池田さんは,育児と介護は違うのであって,介護はそれ特有の問題に合わせたアプローチをしなければならないと主張されています。育児や介護を,企業にとって福利厚生の延長上のもので,それが法制度化されたものにすぎないという捉え方をすれば,両者は同じようなものとして一括りできるのでしょうが,育児や介護に関する社会的な課題をどう解決するかという観点からみれば両者はかなり問題状況が違っており,企業としても,そういう違いをふまえてワーク・ライフ・バランスや両立支援の実現をしていかなければならない,ということでしょう。
 実は私が今回刊行した『人事労働法』では,ワーク・ライフ・バランスの章のなかでは「育児・介護」として一括して扱っていますが,これは法的な観点からのものであり,拙著のもう一つのメッセージである企業の社会的責任(CSR)という観点からは,従業員のニーズに合った踏み込んだ企業の対応が必要であり,育児と介護を簡単に一緒にしてはいけないという話につながると思います。
 もっとも,介護については,そもそも従業員が個人で負担をしなければならないという事態を改善する必要があるという論点もあります。池田さんの本にも出てきますが,介護の場合は,育児と違い,仕事を継続しながらもできることが多いが,そのときにはプレゼンティズムの問題が出てくるのです。仕事の能率の低下です。また,夜泣きで起こされてしまって,翌日の仕事に支障があるというのは育児でも起こるのですが,育児の場合はいつかは終わるという出口がみえているのに対し,介護は出口がみえないところに大きな違いがあるという池田さんの指摘は,そのとおりだと思います。最近のように高年齢で子どもをもつことが出てくると,育児と介護が同時に及んでくることもありますので,そうしたときの介護はほんとうに大変です。介護の社会化が進み,介護休業をとる必要がなく,また介護離職せざるをえないような事態も起こらない社会になることを願いたいですね。
 介護には,これからの労働需要の増大が必至ということで雇用政策・産業政策的にも注目される面がありますし,ロボットなどのデジタル技術の活用が大いに期待されるという面もあります。さらに外国人労働者の活用への期待も大きいなど,労働政策上の重要論点と多面的にかかわっています。それに加えて,自らが介護をする場合においても,テレワークが有効であるという点で,現在の最優先の政策課題の一つにも関係してきます。
 いずれにせよ,経営戦略という狭い面だけでなく,幅広い政策課題の観点から考える際にも,まずは池田さんの本を読んで,しっかり勉強しておく必要があるでしょうね。

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