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2021年4月 7日 (水)

公務員の定年延長法案は批判されるべきものか

 今朝の日本経済新聞で,「官優遇の定年延長では困る」というタイトルの社説が出ていましたが,その内容には首をかしげるところもありました。民間では定年後の雇用確保義務はあるが,定年年齢は60歳でよいことになっており,実際に60歳定年が多いのに,公務員だけ定年を65歳に延長するのは「民間を大幅に上回る待遇を公務員に与える」異例のもので,よくないという批判なのですが,この改正案は,給与についてまで保障していると言っているわけではありませんし,役職定年の導入も考えているようです(siryou1.pdf (cas.go.jp))。むしろ民間の事業主に高年齢者雇用安定法の改正で65歳を超え70歳までの就業確保の努力義務を課していることもふまえると,公務員について率先して定年を65歳に引き上げる(改正後の国家公務員法81条の62項)のは,望ましいものと思えます。もともと公務員の定年延長は,天下りを減らすことにもつながるので,望ましいこととされてきたように思います。昨年の検察官の定年延長問題で,何となく定年延長の話がうさんくさいものとなってしまいましたが,あれは特定の個人に対する優遇が関係する特殊な事例で,それとは区別して考えるべきなのは当然です。
 この社説では,民においてなかなか定年延長が進まないのに,官が先行するのは不公平だということを強調したいようです。でも,民がなかなか進まないからこそ,官が率先してやることに意味があるという見方もできるでしょう。むしろ,テレワークのように,官が率先してやらないから,民も進まないということもあるのです。もしテレワークを官が率先してやったら,これも官優遇ということになるのでしょうか。そういうことではないと思います。
 公務員の定年延長がよくない理由として,公務員が多すぎて困るというようなことであれば,わからないではありませんが,現在の国家公務員の過労状態をみると,むしろ人員不足と言うべきでしょう。国家公務員の現状をみると,今後,優秀な若者が国家公務員になりたがらない可能性もあり,それへの配慮も必要です。定年延長がそのための解決になるとは思いませんが,公務員も民間並に,あるいは民間以上に長期に働けるというのは,それなりのアピールになるのではないでしょうか(もちろん,長期安定雇用を期待して公務員を志望する者ばかりになるのも困るのですが)。私たちは,公務員に良い人材が集まるためには,どうすればよいかということを,常に考えておくべきです。公務員に良い人材が集まらないような国や地方に未来はありません。高級役人には腹立たしい人やイヤな奴もいるでしょうが,それとこれとは話は別です。以上の理由で,私は公務員の定年延長には賛成したいですし,その一方で,問題のある公務員(とくに高級公務員)についての処分は厳正にすべきで,そういう公務員に対しては雇用保障への配慮は不要だと考えています。

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