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2021年2月16日 (火)

イタリアの首相交代

 欧州中央銀行総裁を長く務めたMario Draghiが首相になると聞いて,この手があったかと驚きました(日本でいえば,日銀の黒田総裁が首相になるのに近いですが,それ以上でしょうね)。

 2018年の国政選挙後,左派のMovimento 5 Stelle5つ星運動)が第1党となり,右派のLegaと組んで,Firenze 大学でdiritto privato(私法・民法)の教授であったGiuseppe Conteを首相にかつぐ連立政権が誕生しました。2019年になってLega と路線対立が起こり,Lega が連立から離れることによって,いったんConteは首相を辞任しますが,民主党(Partito Democractico)と連立協議をして第2Conte政権が誕生しました。

 左右のポピュリスト政党の連立ということで,どうみても始めから無理があったConte政権ですが,Conteは決してお飾りの首相というわけではなかったようです。右派のLega の党首Salviniは,前の党首のBossiと少し違って,あまり柄のよくないおじさんという感じで,Conteと対照的で,政策面でもConteと合わないところが多かったようです。Legaの離脱は予想できたことでした。Conteが,コロナ禍のなか国民にロックダウンへの理解を呼びかける姿勢は,日本でも報道されて,評価が高かったのですが,結果としてコロナの感染抑止には十分に成功しませんでした。こうしたなか,新たに政治的な混乱をもたらしたのが,2014年に39歳で首相になったこともあるRenziでした。Renziは民主党党首として,政権についたのですが,長続きしませんでした。政治生命をかけた憲法改正をめざす国民投票において挫折し,2016年に政権から離れることになりました。ここからイタリアの政治は混迷を深めます。同じ頃,イギリスでも,若い首相(Renziほど若くはないですが)のCameronEU離脱を問う国民投票をやって敗れて政権を離れました。RenziCameronも,政治勢力を強化して安定政権を実現するための賭けをしたのでしょうが,世論を読み間違え政治的に力を失いました。
 ただRenziは20199月の第2Conte政権の誕生後に,民主党を離脱して,新たにItalia Viva(IV)という新党を立ち上げていました。IVは,Conte政権を支持していたのですが,2020年になり,新型コロナへの政府の対応に批判的になり,連立政権から離脱しました。このため連立政権は弱体化し,結局,今年に入ってConteは首相を辞任することになりました。
 このようななかで新たに名前が挙がったのが,世界的に名前が知られているMario Draghi だったわけです。73歳という年齢が心配とはいえ,この大物をここで首相にするイタリアには,突然,明るい希望の光が差したような感じもします。かつてイタリア銀行総裁から首相になり,大統領になったCiampi の例もあります。
 以前から,イタリアには2人のMarioがいると言われていました。その一人が,2011年に首相についたBocconi大学の総長であったMario Montiです。政治が混迷したとき,非政治家を首班にした政権をつくるのが,近年のイタリアのパターンです(これはイタリア語ではGoverno tecnicoといい,直訳すると「専門家政府」でしょうかが,意味としては「非政治家政府」です)。Montiが政治家をすべて排除した完全な「専門家政府」をつくったのに対して,Draghiは,政治家と非政治家の両方を入れました(Governo tecnico e politico)。Monti 政権は,国民に負担を強いる政策をして,国民に不評であったこともあり(M5Sの躍進のきっかけをつくりました),Draghiは,完全なGoverno tecnicoでは,世間の支持は得られないと考えたのかもしれません。大臣に選ばれた政治家をみると,複数の政党の均衡を図っています。Draghiが,国際的な信用をバックにして,国内の様々な政治家たちを相手に,どのようなリーダーシップを発揮するでしょうか。イタリアの今後に注目です。

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