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2021年2月 1日 (月)

労働委員会手続のリモート化

 労働委員会の手続における当事者のリモート参加が,今日から正式に認められることになりました。労働委員会規則の新しい41条の25項は,「……会長は,相当と認めるときは,当事者又は関係人(以下この項において「当事者等」という。)の出頭に代えて,当事者等の使用に係る電子計算機であつて委員会の使用に係る電子計算機と接続した際に委員会が指定するプログラムを正常に稼働させられる機能を備えているものと委員会の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続し,又は当事者等の使用に係る電話機と委員会の使用に係る電話機とを電話回線で接続し,委員会と当事者等が相互に映像と音声の送受信又は音声の送受信により相手の状態を認識しながら通話をすることができる方法によつて当事者等を手続に関与させることができる」と定めています。
 これは不当労働行為審査事件の調査段階での当事者のリモート参加を認めたものですが,個人的な意見としては,今後は委員のリモート参加も条文化してもらいたいですし(兵庫県では,審査事件では公益委員は2名体制ですが,1名が参加していればよいという運用をしているので,公益委員は1名がリアルで1名がリモートということを認めています),審問のリモート化,さらには,争議調整のあっせん手続のリモート化にも広げていってもらいたいです(なお,新規定では,総会や公益委員会議のWeb化は16条の2で認められるようになり,合議も同様です(42条の2)が,開催要件が厳格なのが気になりますね。とくに「第三者がいる場所で会議に参加してはならない」(16条の2第4項)というのは気持ちはわかりますが,これを厳格に言い出すと,Web参加はやりにくくなると個人的には思っています)。
 一般的には,労働委員会の事件処理はもちろん不要不急ではなく,当事者にとって緊急性があるといえます。だからといって緊急事態宣言がでている期間にどうしてもリアルで開かなければならないほど緊急性があるケースはそれほど多くないようにも思えますし,緊急性があってもリモートでやれる場合が多いでしょう。もちろん実際の事件処理では,当面は当事者の意向が最優先ですが,今後のルールという点では,検討すべきところだと思います。
 本日は私の担当事件での調査期日があり,41条の25項を適用して,当事者の一部がリモート参加する調査手続が開かれました(新規定は本日施行だそうなので,全国第1号でしょう)。なお公益委員も1名(私)はリモート参加で,もう一人の公益委員と労使の参与委員は登庁しました(私はこの日,家のなかで転んで足を強打してしまい歩行が困難だったので,もしリモートでなければ参加できないところでした)。結論として,主張の整理の手続だったこともあり,リモートでまったく支障がなかったと思います。細かい点ではいろいろあったのかもしれませんが,会話はスムーズに行きましたし(Zoomを使用しました),とくに県庁でのカメラの設置がよかったのか,顔もよく見えました。リモート同士のほうは,もっと顔の表情がよく見えました(対面よりも鮮明に表情がわかります)。当事者や代理人(リアル参加者,リモート参加者)がどう感じたかはわかりませんので,意見交換をして,もし何か問題があれば,一緒に考えて改善していければと思います。
 一般的にいって,リモートとリアルのハイブリッド型の場合,リアルの出席者が複数いればどうしても表情などが見えづらくなるのですが,完全リモートにすれば互いの表情がよくみえて,コミュニケーションも取りやすくなります。和解もしやすくなるように思います(もちろん,和解はやっぱり対面型でやらなければという意見もあるのですが)。ただ,そのためにはリモートでの手続の進め方に委員が習熟する必要があるでしょうし,当事者にも慣れてもらう必要があるでしょうが。
 いずれにせよ,これからのデジタル時代には,労働委員会もあらゆる手続においてリモートを原則とし,どうしてもリモートではうまくいかない場合だけ例外というような大きな転換をしてもらいです(リモートだと日程調整がしやすくなるので,迅速な救済という制度目的にも資することになります)。これを機会に,規制を小出しに変えるのではなく,思い切って改革してみたらどうでしょうかね。ハイブリッドにしてしまうと効果が減殺されるので,完全リモートでやってみて,問題点があれば,運用面でその都度つぶしていくということでやれればよいのですが。音頭を取る立場にあるのは中央労働委員会ですが,どこまでやってくれるでしょうかね。。

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