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2021年2月16日 (火)

大企業が消える?

 コロナの影響で,私が『会社員が消えるー働き方の未来図』(2019年,文春新書)で描いていた未来図はリアリティを高めています。アフターコロナでは,雇用という働き方が消えていく速度はいっそう加速するでしょう。理論的に考えて,デジタル変革が進むと,雇用という働き方はなくならざるを得ないのです。では,その次に起こるのは何でしょうか。「会社員が消える」という本は,当初,「大企業が消える」というコンセプトで書いていました。ただ,これでは労働法との関係が遠くて,私が執筆する本としてはふさわしくないことから,タイトルが変わった経緯があります。本のなかでも大企業が消えるというようなことは書いていますが,いよいよ,ほんとうにそうなるのではないか,という気がしています。
 それには理由があります。日本の会社員の組織愛の強さを感じる機会が,たまたま何度かあったのです。大企業の会社員は,組織があっての自分だと思っているし,いまのような大きな変革の時代にあっても,自分のいる組織をどのように強めていこうかということを考えているし,新しい個の時代が来るとわかっても,それに組織はどう対応していこうかということを考えているのです。どこまでいっても,組織が中心です。組織なしの自分が考えられないのです。しかし,こうした人たちに支えられている組織というのは,そう長くはもたないだろうというのが,私の予測です。組織はあくまで手段的なものです。事業の遂行にチームプレイは必要ですが,それは固定的な組織が主ではなく,これを支える個人の強さが基礎になければなりません。
 大前研一が最初の『日本の論点』(小学館文庫。文庫版は2016年)で,2013年時点で書いていたことですが,日本の経営者に「あなたの会社が30年かけてやってきたことを集約すると,このスマホの三つのアイコンです」と言っても理解されなかったそうです。大前氏は,これが理解できないから,モノ作りにこだわって,エレクトロニクス産業は突然死寸前まで追い込まれてしまったと述べています(64頁)。現在,たしかに多くの製品が,スマホのアイコンに収まっています。このことが象徴的に示すように,人々が求めているものが根本的に変わってきている現在,どうしても新しい発想が必要なのです。そうした発想は,組織内で出世してきた組織人の中からは,なかなか出てこないし,外部から提示されてもなかなか理解できないのです。
 組織が本来的に悪いということではありません。問題は,組織を構成する人間のほうにあります。成功した組織に長くいると,組織外の視点をもてなくなり,それが変革の時代に合わずに組織を弱めてしまうというのが正確な言い方でしょう。組織を自立した個人の緩やかな連合体に変えることができるかどうかがポイントだと思います。私が前記の本で,企業中心社会から個人中心社会に変わると書いたのには,このような意味も含まれています。でも日本の大企業をみていると,そうした方向に進むのがとても難しいように思えます。日本の大企業がガラガラと突然死していく姿をみたくはないのですが……。

 

 

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