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2021年1月 1日 (金)

今年の抱負

 新年おめでとうございます。今年もよろしくお願いします。皆さんにとって本年が良い年になることを心より祈っています。

 コロナのせいで重苦しい新年となりましたが,いま私たちは社会の大きな変革のなかにいます。既存の知見が急速に陳腐化し,不確実性の時代に耐えられる知的体力が問われます。研究者もぐずぐずしていると,あっという間に,役に立たない過去の人になっていくおそれがあります。
 ところで,昨年いただいた本のなかで,私にとって最もショッキングだったのは,菅野和夫先生の『労働法の基軸―学者五十年の思惟』(聞き手◎岩村正彦・荒木尚志)(有斐閣)です。先生の偉大さはもちろん十分に知っていたつもりですが,改めてこの本を読むと,50年という研究人生を通して,次々と社会に生じる変化に柔軟に対応しながらも,その根底にある「基軸」はぶれずに一貫していたことのすごさを感じることができます。それにしても,一人の研究者が,かくも多くの重要なことをしてきたことに驚きを禁じ得ません。学内での様々な仕事,学外での労働省・厚生労働省関係の仕事,労働委員会,JILPT,国内外の学会での活動など,そのどれをとっても,他の人にはできなかった大きな功績を残されています。東大定年後に明治大学の法科大学院での教育内容に全力で取り組んでおられることなどからもわかるように,大きなことから小さなことまで,先生が何ごとにも手を抜かずに真摯に取り組む姿勢がよくわかります。これは,できそうで,なかなかできないことです。 もともと同じ土俵に立てるなどと恐れ多いことは,つゆほども思っていませんが,それにしても先生の50年の活動をみると,あまりにも自分と違う研究者人生に愕然としてしまいます。
 現在の日本の労働法は,研究・教育・実務のどの面から切り取っても,菅野先生の大きな影響力が及んでいます。とはいえ,私も,研究のところだけは,少しは菅野労働法に挑戦したいという気持ちを抱いてきました。菅野労働法を過去のものとして,ぶれない基軸を少しでもぶれさせなけれれば,学問は発達しないでしょう。菅野労働法は,天にまでそびえる偉大な構築物ですが,その前で跪いているだけでは,ちょっと情けないのです。私が長い構想段階を経て,ようやく今年,弘文堂から刊行することができそうな『人事労働法』は,菅野労働法とは違う新たな体系の労働法を必死に模索してきた,私の現時点での集大成となります。無謀な挑戦で簡単に敗れ去るかもしれませんが,私がいつか50年の研究者生活を振り返ることがあったときに,あのとき確かに勝負したという軌跡は残しておきたいと思っています。

 

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