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2021年1月 6日 (水)

総論の時代

 猫も杓子もSDGsを言うので,面白くないのですが,でも大切です。昨年の神戸労働法研究会の最後にオンライン飲み会をしたのですが,これからの研究課題として,環境やSDGsを挙げました。
 これまでも神戸労働法研究会は,私のアイデアを試す貴重な場であり,あまりそのときには議論されていないテーマを実験的にとりあげることをしてきました。201510月に日本労働研究雑誌に「ITからの挑戦」(ITという技術から労働法に挑戦状がたたきつけられているというようなニュアンス)という論文を書いたのですが,これもその直前の夏合宿で報告したものがベースでした(聞いてくれていたのはごく少人数でしたが)。20171月に上梓した『AI時代の働き方と法』(弘文堂)は,その発展形態でしたが,当時ほとんどAIと労働法をテーマにした論考がほとんどなかったので,先駆的なものになったと思います。同年の2月には,北九州大学でIC(インディペンデント・コントラクター)関係のシンポもやりました。
 ということで,神戸労働法研究会では,判例研究だけでなく,新しいテーマについてもかなりやっているのですが,今後はCSR(これ自体は全然新しくないですが)やSDGsESGと労働という問題を本格的に取り組むことにしたいと考えています。研究会のメンバーは,私が社会的責任や行為規範といった言葉を口にすることが増えていることに気づいているかもしれません。私は判例の分析のような場でも,労働法の総論が大切で,そしてその総論的な内容が大きく変わろうとしていると思っているのです。私の考え方のエッセンスは,『デジタル変革後の「労働」と「法」』(日本法令)で書いているので,そちらを参照してほしいのですが,要するに,資本主義とは何か,会社とは何か,そのなかでの労働の意義は何か,AI時代やDX時代における労働はどういうものかといったテーマを労働法にとっての付随的な論点として扱っているだけではすまない時代に来ているのだと思います。SDGsも,そうした文脈のなかで,重要な意味をもっているのです。
 かつての研究者は総論をめぐる大議論をしていました。しかし徐々に,裁判規範を意識した解釈論の精緻化のほうが重視されるようになりました。しかし,いままた揺り戻しが来ています。解釈論の重要性は相対的に低下していくでしょう。それにともない労働法学者に求められる資質も変わってくると思います。そして,それは労働法だけではなく,多くの法分野にも及んでいくことになるでしょう。
 DXにより,多くの職業が変わっていくなか,法学者の仕事もその例外ではないということです。恐ろしくもありますが,楽しみでもあります。

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