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2020年12月の記事

2020年12月31日 (木)

一年の総括

 コロナに始まり,コロナに終わった1年でしたね。私個人は大学に行かないという点ではサバティカルがさらに延長したような感じで,完全に在宅ワーカーとなりました。もともとオンライン教育をやってみたいという気持ちがあったので,その点ではよいきっかけとなりました。
 テレワークがここまで話題になるとは,年初には想像もつきませんでしたね。テレワークやリモート会議という言葉は,みんなが普通に使うようになりました。私も,これまでのようにパソコンで原稿を書きながら,時間が来たらZoomなどに接続して授業や会議に参加し,終わればまた原稿執筆に戻るといった生活が普通になってきました(その原稿もテレワークをテーマにしたものが多かったです。明石書店のWEBサイトでは,このテーマで20回連載しました)。もともと「ムーブレス」を推奨して,できるだけ実践したいと思っていたのですが,コロナによって「絶対に感染してはならない」(呼吸器が弱い私は昨年も1か月苦しんだので,コロナに感染すればと思おうと恐ろしいし,何と言っても高齢の父に感染させたら大変なことになります)という気持ちから,ムーブレスをより徹底させることにしました。労働委員会の会議では,ずっと私一人だけがリモート参加で,なんとなく特別待遇みたいで居心地がよくなかったので,強い気持ちをもって,コロナ禍では私のほうが正しいことをしていると自分に言い聞かせていました。今後はコロナに関係なく,デジタル変革の時代となるので,オンラインでできることは,オンラインでやる,そのためのちょっとした面倒さはあっても,それを乗り越えていかなければならない,という考え方が広がって欲しいですね。
 今年は『デジタル変革後の「労働」と「法」―真の働き方改革とは何か?―』(日本法令)の刊行が,個人的には大きなことでした。今後の私の研究の基本をつくるものです。本全体にいろんなアイデアをちりばめたつもりですが,それを具体化したものを,今後,いろんな形で発表していくつもりです。このほか『最新重要判例200労働法』(弘文堂)の第6版を出すこともできました。皆さんが使ってくださっているから,版を重ねることができているので,ここで改めて感謝いたします。また,『経営者のための労働組合法教室』(経団連出版)も第2版を刊行しました。まさか版を重ねることができるとは思っていなかったので,びっくりしました。この本は,タイトルからは誤解されがちなのですが,経営者が労働組合と正面から向き合わなければならないというメッセージをこめた本です。この本自体は法律の話が中心ですが,個人的には,経営者は社会的責任という観点から,労働者や自営的就労者と向き合う必要があると考えています。中央労働時報で書いたベルコ事件の北海道労働委員会の命令の評釈には,こうしたメッセージも込めています。
 コロナ禍は,私たちにとって大切なものは何かを再認識させるきっかけを与えてくれました。私にとってもそうです。サバティカルと並んで,私のこれからの研究の転換点となりそうです。無事に生きていられることに感謝しながら,2021年を迎えたいと思います。

 

 

2020年12月30日 (水)

説明できない政府

 2か月以上ブログを休んでいましたが,この間,超多忙で,とてもブログを書く余力はありませんでした。夢をみることもないくらいくたびれていました。この状況がとくに緩和したわけではないのですが,年末に近づき,書きたいことは山のようにあるので,少しずつ余力を見つけて書いていこうかなと思っています。読んでくださる人がどれくらいいるかわかりませんが。
 前に日本学術会議の任命拒否についての不満を書いていたところで終わっていたのですが,結局,その後はひどいことになりましたね。実質的な説明をしない政府の対応は,腹立たしさをとおりこして,あきれています。相手に対して納得をしてもらおうとする誠実な態度が示されていません。労働法をやっている人間としては,企業は,労働者や労働組合に対して誠実に説明せよということを日頃から言っているわけで,それは具体的な行動で示されなければならないのです。政治家のなかには,「誠実に」という言葉を使えば誠実に対応したことになるというように誤解しているかにみえる「不誠実な」対応をする人がよくいますが,困ったものです。この政権も,そういう人が多いようなので,残念ながら,哀れな末路をたどるでしょう。デジタル化推進の部分だけは残してほしいのですが。
 「Go To」についても言っておきたいことがあります。これは,観光や交通,あるいは飲食の業界を救うのには最適な政策なのでしょうが,一番大切な感染については十分に対策をとってもらうという「言葉」だけであり,具体的な実施方法などは事業者や国民にほとんど丸投げです。文書上は,完璧な政策なのかもしれません。人々は移動してお金を使うので業界を救済し,感染対策も十分にされるので問題はない,というものです。でもこれは単なる作文であり,感染対策についてはほとんど中身がありません。作文がよければ,すべてよし,というのが,官僚の世界ではありがちですが,現実の政策にこれをそのまま適用されては,国民としてはたまったものではありません。
 「Go To」は,原則と例外をきっちり示さないために,人々を混乱させた愚策として,後世に伝えられることになるでしょう。移動をすることはよいのか,だめなのか。物事には,いろんな利害を考えながら,バランスをとって物事を進めることが必要という局面は山ほどありますが,そのときでも大切なのは,何が原則なのかを明確にすることです。感染の危険があるから,移動をするなというのが原則で,ただし,○○のような場合は例外的に許される,という説明なら,○○の部分の説得力にもよりますが,まだ理解ができます。しかし,「Go To」では,移動をするなというのは言っておきながら,それが原則ということが明確に示されていないまま,むしろ割引をすることにより,移動したほうがよいというメッセージが強く出てしまいました。人々はどのように行動するのが原則なのか,ということがわからなくなりました。文書上の形式論理だけを重視し,国民がどう行動すべきかという行為規範を軽視する法律屋が側近にいるのではないかと心配しています。
 これとも関係する話ですが,首相や大臣が,官僚が作文した紙を読み上げる場面が批判されています。大事なことは自分で十分に理解したうえで話してもらいたいというのは,前にも書いたとおりです。読み上げているだけで,内容が腑に落ちていないから,テレワークを推奨しながらも,自分たちは会食をするということを続けるのです。会食や懇親会は,役所の世界では,意見交換会などというのですが,そんなものは本来リモートでもできるはずであり,だからこそ民間企業にテレワークを推奨しているのでしょう。大事なことは対面でしかできないというのであれば,王さんの野球談義を聞くよりも,うちの会社では社員間でもっと大事なことを話合わなければならないので,リモートは無理だと言われたら,どう返事できるでしょうか。
 意見交換と会食はセットにすべきなのでしょうか。意見交換がそんなに大切ならリモートでやるべきなのです。移動時間も費用も節約できます。会食をどうしてもしたいのであれば,家族や親しい人だけというのが,政府のメッセージだったはずです。俺たちはおまえ達とは違うからと本当は言いたいのかもしれませんが,これでは人心は離反しますね。対面でのことは一切止める,どうしてもするなら,その理由をきちんと説明する(閣議は○○だから対面でやる必要がある,など),そこから始めるべきです。でも説明しない政府に,それができるでしょうかね。

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