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2020年7月 4日 (土)

NIRA総研のオピニオン・ペーパーが出ました

 先日,NIRA総研のオピニオン・ペーパー(No.49)「フリーワーカーの時代に備えよー多角的な法政策の必要性」がネット上に公開されました。「個人自営業者の就労をめぐる政策課題に関する研究」というNIRA総研のプロジェクトのなかで,キックオフ・ペーパーとして,私が単独で発表した「『フリーワーカー』に対する法政策はどうあるべきか」を受けて,最終的な取りまとめをする役割をもつものです。今回のプロジェクトの構成員では,中央大学の江口匡太さんと亜細亜大学の中益陽子さんが個人でNIRA政策研究ノートを発表しています。NIRA総研は,研究者を大事にしてくれる組織で,プロジェクトはそれとして取りまとめるペーパーを出すが,構成員が個人名で自分の見解に基づくペーパーを書くこともできるという非常に自由な環境を与えてくださっており,これはとても素晴らしいことだと思っています。取りまとめは,私の色が出ているところもありますが,皆さんが研究会で出してくださった議論をできるだけ広く取り入れるという,役所の報告書のようなことをしたつもりです。
 今回のペーパーのサブタイトルには,多少世間へのアピールも考えて「多角的な」という言葉が入っていますが,このテーマは,もっともっと多角的な切り口があります。私の頭のなかには,すでに次のステップの構想がありますが,どの場になるかわかりませんが,また発表できる機会があるでしょう。

 フリーワーカーに関する現実の政策は,コロナ禍の影響もあり,思った以上に早く動いており,はっきり言って,何でもありという感じになっています(雇用労働者への雇用調整助成金も,元の制度は何だったんだと言いたくなるくらい,雇用保険制度が打ち出の小槌になっていますね)。政治家による税金の使い方について,国民として言いたいことはありますが,研究者としては,きちんとした論理や筋で,政策を立てていくことにこだわらなければなりません。政策は,荒唐無稽な非現実なものはダメでも,現実性の判断は結構幅があるもので,私は思い切って理想を追求するところに走ってもいいのかなと思っています。今回のオピニオン・ペーパーは,ある程度,現実的なところにしたつもりですが,これをステップとしてもっと先に進まなければなりません。

 今朝の日経新聞をみると,政府も未来投資会議で「フリーランスのルール整備」の提言をされているようなので,今後,少しは政策が動くのかなという気がします。ただ,私が頭のなかに描いている最終的な絵は,簡単にいうと,雇用労働者もフリーワーカーも区別しないで,働く人という基準で大きく括って政策を考えるべきというもので,しかも基本的にはICTを使ったテレワークをしていることを前提にすべきだというものです。こうした政策を役人に任せると,そういうところにまでは行かないかもしれません。ここはシンクタンクの出番でしょう。大学も期待されるべきなのですが,残念ながら大学院法学研究科についていえば,法科大学院という平成時代からのお荷物を背負っていて,その処理(?)に苦しむことになりそうです。むしろ従来の学部や大学院とは違う,ちょっと怪しげに見える名前の学内の研究機関のようなところが,新たな時代に対応する研究や政策提言をになっていく可能性をもっているかもしれません。

 日本が世界に誇る労働政策に関するシンクタンクJILPTも,いまは優秀な人材を抱えていますが,自前主義は組織を弱めることにならないか心配です。私も大学院生のときから,JILPTの前身の日本労働協会,日本労働研究機構で大変お世話になり,勉強の機会をいただきました。さらに就職してあとも,JIL雑誌の編集委員や特別研究員をやらせてもらい,そのときの経験はいまでも私の研究者としての大事な基礎となっています。ただ特別研究員は15年前くらいでしょうか,突然,終了したのですが(ただ,その後も,編集委員は任期上限の10年になるまで続けましたが)。確か2年くらい前から,確定申告のときに,JILPTの源泉徴収票がないことに気づき,ついに長年お世話になったJILPTから卒業したのだということを実感することになりました。こういう時期と重なるように,数年前からNIRA総研とお付き合いができて,今回のペーパーにつながりました。
 NIRA総研は,いちはやくZoomでの会議を取り入れてくださったので,プロジェクトでは神戸にいながら会議を行うことができて,大変助かりました。客員研究員としての契約書も電子署名ですので,紙のやりとりをしなくてよいなど,先進的でした。
 オンラインの時代になると,どこででも研究ができ,発信ができます。今後は,神戸にいながら,サイバー空間でシンクタンクを立ち上げて,世界へ政策発信することができればということを考えています。サイバー空間なら,名刺をもたない,年賀状を書かない,無駄な社交をしないといった私にも,まだやれることがあるのではないかと思っていますが,それは甘いでしょうかね。

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