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2020年4月11日 (土)

政治に頼らず,できることをやる

 7日に閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」は,ネットでみることができます(https://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/2020/20200407_taisaku.pdf)。長大な文書で,こんなものを作っているから時間がかかったのではないでしょうか。政府の現状認識は,まだ平時なのだろうと思いました。役所は,巨大な予算がつくので,この絶好の機会に乗らなければならないということで,必死に考えて,この対策に盛り込まれるように頑張ったのでしょう。この文書のなかに少しでも書かれていれば予算をもらい事業を拡大することができます。国民のためという大義名分がたてばよいのです。その調整の成果がこの文書なのでしょう。
 でも,もしほんとうにそういうことであったら,困ったことです。いまは緊急時であり,海外の首脳がいうような「戦時」と言ってもよいくらいです。優先順位をつけて,「すぐにやることリスト」を,A41頁くらいにまとめて,即刻実施するくらいのことをしてもらいたいのです。従来と異なる手続もあるでしょうが,それを突破するのが政治家でしょう。森友学園問題で,あんな無茶なことができるくらいだったら,国民が健康面でも経済面でも危機に瀕しているときにこそ,無理を通して迅速に対応してもらいたいものです。ただ,そもそも現状認識において,危機感が足らない以上,どうしようもないのでしょうが(口では,危機を感じていると言うでしょうけど)。
 いまこそ私たちは有権者であるという自覚を取り戻す必要があるでしょう。私たちは,首相をトップとする政治家たちに,国民の安全と安心を守るための業務の委託をしているのであって,私たちはクライアントです。
 ルソーの有名な『社会契約論』には,次のような有名な 記述があります。「イギリスの人民は自由だと思っているが,それは大まちがいだ。彼らが自由なのは,議員を選挙する間だけのことで,議員が選ばれるやいなや,イギリス人民はドレイとなり,無に帰してしまう」(岩波文庫版の133頁(桑原武夫他訳)。これは人民の主権は譲り渡すことができず,「一般意志」は決して代表されえないという代議制否定論(直接民主制論)の文脈で出てくる話ですが,国民と議員との関係を考える際にも,よく言及されるフレーズです。
 私たちは,政府の奴隷になってはいけません。「戦時」中のいま,私たちは主権者は,私たちの安全や安心に十分に貢献せず,しかも税金をこれまでさんざん無駄に使いながら(森友学園問題などを忘れてはなりません),今回,あたかも自分のお金を使っているかのように,108兆円規模の対策を,過去にないものと強調しているリーダーの姿をしっかり目に焼き付けておかなければなりません。
 首相は,私たちが,いわば委託事務の経費として支払っている税金について,今回は,緊急時だから,これくらい使わせてもらうけれど,許してもらいたい,というような姿勢で臨むべきだったのです。それをあたかも,自分が勇敢な決断をしたかのように話し,いまに至ってもまだ政治家としての自己アピールをしようとしているのは,情けないことです。
 これは良い機会です。ケネディの有名な言葉「国があなたのために何ができるかを問うのではなく,あなたが国のために何ができるのかを問うてください(Ask not what your country can do for you; ask what you can do for your country)」の後半を少し修正して,「あなたが仲間の国民のために何ができるのか,さらには世界中で苦しんでいる人のために何ができるのかを問うてください」と変えてみたらどうでしょうか。
 企業も国民も,social responsibilityとして何ができるかを考えなければならないのでしょう。企業がどういう社会貢献活動をするかを,しっかり見ておきましょう。SDGs(持続可能な開発目標)やESGに敏感な企業こそ,コロナ後に生き残っていくにふさわしい企業です。個人も,政府がぐずぐずしているなら,クラウドファンディングなどで零細企業を支援する手などがあります。例えば近所のレストランには,将来の席の予約をして料金を前払いするという方法でも支援できるでしょう(これは,私たちはあなたたちの店を見捨てないという精神的なメッセージにもなります)。同じようなことを,レストラン以外でも,身近な業者に対して,いろいろできるでしょう。これまでそうした業者がいたから,私たちの生活が成り立ってきたのです。情けは人のためならず,です。自分たちのためにもなるのです。そうしたサポートの輪が広がっていけばいいのです。物心両面での助け合いこそが,この難局を乗り越えるための鍵であり,実は政治の原点もそこにあるはずです。これからの政治家の動きをみて,その資質をよく見ておくことにしましょう。

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