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2020年3月 6日 (金)

Uberのドライバーは労働者!?

 フランスの最高裁に相当する破毀院(Cour de cassation)で,34日に,Uberのドライバーの労働者性を認める判断が出されました。ドライバーは,Uberからアプリの使用が止められたのが不当な解雇にあたるとして争っていましたが,労使審判所は,ドライバーは労働者ではないとして管轄を否定したので,その点が問題となっていました。
 破毀院は,自営業者としての地位(statut d’indépendant)は,みせかけ(fictif)であると結論づけました。「名ばかり自営業者」であったというのです。破毀院の判断や要旨は英語でも読むことができるので,詳しくはそちらを参照してください(https://www.courdecassation.fr/jurisprudence_2/communiques_presse_8004/prestation_chauffeur_9665/374_4_44528.html)。
 一応簡単に言うと,自営業者と認められるためには,自らの顧客関係を形成する可能性(possibilité de se constituer sa propre clientèle),料金の設定の自由,業務遂行条件を定める自由がなければならないが,本件ではそのどれもが認められない(とくに経路が決められていることが重要)とし,逆に,雇用労働者として認められるための従属関係の判断基準である,使用者の指揮命令権(指示をし,業務遂行を監督し,指示に従わない場合に制裁を与える権限)については,乗務の指示を3回拒否すると一時的にアプリが使えなくなり,さらに一定率を超えて拒否したり問題行動があったりすれば,アカウントへのアクセスができなくなる(つまりドライバーとして働けなくなる)し,またUberが一方的に条件を決定している運送業務組織に組み入れられているとみられることから,認定できるというのが,その理由です。
 フランスで従属関係が認められたからといって,日本でも当然に同じように認められるわけではありません。ただ私は,拙著『会社員が消える-働き方の未来図』(2019年,文春新書)の160頁で,Uberのドライバーは,「雇用労働者と認定される可能性は十分にある」と述べていたので,驚きはありませんし,今後同様の判断が世界中に広がっていく可能性はあるでしょう。
 フランスの破毀院の判断は,フランス法の構造によるものと思われますが,自営業者性を否定する判断(独自の顧客開拓可能性や料金・業務遂行の決定の自由について)をしっかりやっているところが注目されます。日本であれば,労働基準法や労働契約法の労働者概念においては,使用従属性があるかが大切なので,必ずしも自営業者かどうかという判断はされていませんが,ただ労働組合法上の労働者性においては,こうした判断要素が追加されているので,今回の破毀院の判断は参考になるかもしれません(拙著『最新重要判例200労働法(第5版)』(2018年)の第138事件「INAXメンテナンス事件」を参照。同書はもうすぐ第6版が出ます)。
 また破毀院のいう業務組織への組み入れ(組み入れは少し意訳で,フランス語では,”participate in” となっていて,直訳なら「加わる」といった感じでしょうかね)という要素は,日本の労働組合法上の労働者性の判断の最重要要素である「事業組織への組入れ」に相当する可能性があるので,Uberのライドシェアサービスが日本で本格的に導入されて,ドライバーが労働組合を結成すれば,この破毀院の判断が参照されるかもしれませんね。
 このほか労働者性とセットの問題として,デジタルプラットフォーム(フランス語では,platforme numérique)の使用者性が肯定されたことは,日本でも広がっているUber型ビジネスのプラットフォームの使用者性をめぐる議論を刺激する可能性があります(昨年,Uberイーツの労働組合が結成されていますので,問題はリアルになってきています)。デジタルプラットフォームに対しては,経済法の観点からの規制も言われており,これも最近よくある経済法と労働法との交錯領域の一つとなるでしょう。

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