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2019年8月24日 (土)

ワーケーション

 

  ワーケーション(workation)。「work」と「vacation」とを合体させた造語です (和製英語ではありません)。休暇と仕事を両立させる働き方ということで,最近注目されているものです。先日の87日の日本経済新聞における「「休み方改革」量も質も」という記事では,「有休は本来,個人の判断で取得できるが,周囲に気兼ねして十分に取らない人も少なくない。社内の制度とすることで,社員を休暇取得に積極的に誘導する仕組みだ。旅行を予定している期間に急な仕事が入っても,テレワークなどでこなせれば計画を変更する必要がなくなる」と紹介されていました。これだけ読むと,とても良さそうなのですが,もし法定の年次有給休暇中に仕事をさせるのであれば,労働基準法違反となります(その休暇日が,法律で付与する年次有給休暇の日数を上回る法定外年休であれば別ですが)。

 企業としては,どうせ年休をとらないのだろうからと考えて,これを取りやすくするために,こういう制度を設けようとしているのかもしれませんが,本来は,休みか仕事かはっきりしないようなことをするのではなく,きっちり労働から完全に解放させて休ませることを考えてほしいものです。

 こうした動きの背景に見え隠れするのが,2018年の労働基準法の改正で,新たに5日の年休付与義務が企業に課されたことです。このため,従業員の年休取得率が低い企業では,何とか年休をとらせなければまずいということで,仕事をしてもいいから休んでほしいという動きになってしまっているのかもしれません。とはいえ,何かあれば仕事をしてもらうという状況での休暇付与は,実際に仕事を命じなかったとしても年休の付与日数にカウントされないと思います(解釈問題ですが)。つまり企業としては,義務を履行したことにならないのです。

 私の身近でも,次のようなことがありました。これまで何年にもわたって,夏季の一斉休暇にしていたお盆近辺の日を,年休日に充当するというのです。これは,実質的には取得可能年休日を削減することになるので,明確には違法といえないものの,法の趣旨に反することです。ただ,企業側にも言い分があるのです。従業員が自ら年休を取得しようとしないから,企業としては労働基準法の年休付与義務違反に陥ることを回避するための苦肉の策として,こういうことをせざるを得ないというのです。企業ばかりを責めることができない点が,問題を複雑にしています。

 とはいえ,「ワーケーション」は,あくまで法定年休以外のところで広げるべきです。そして,その延長線上に,真の意味でのテレワークがあるのだと思います。時間的な場所的な拘束から離れ,休暇をどのようにとることも含め,時間管理や健康管理は自己責任というのが,これからの自由な働き方なのです。ワーケーションは,こうした自由な働き方の中から出てくるものです。この自由さを前提としない「ワーケーション」,つまり,「休暇をとってもいいけれど,仕事も忘れるなよ」ということでは,日本人の働き方は根本的には何も変わらないままでしょう。(よくあることですが)中途半端なことをするくらいなら,やらないほうがよいのです。 

 ところで,日経新聞の記事では,小見出しに「欧米では普及」となっていて,ワーケーションが欧州でも普及しているのだろうかとびっくりしてその後を読んでみると,普及していると国として紹介されていたのはアメリカとインドだけでした。「欧」はありません。欧州の常識では,休暇中に仕事をするなど論外です。あまりに雑な小見出しの付け方に,あきれてしまいました。

 

 

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