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2019年6月19日 (水)

投資教育の重要性

 一昨日の続きです。
 労働者の多くはまだいまのところは会社員です。会社の多くは株式会社です。株式会社は,投資家がいるから成り立っています(日本は非上場の中小企業が多いので,あまり一般投資家が支えるという感じではありませんが)。国民が日本の会社に投資をし,その会社が事業を拡大して利益を上げ,それが株主である国民や労働者(会社の債権者)である国民に還元されるという仕組み(会社の法人税によって国の収入になるという形でも国民に還元される) は,株式会社を中心とする資本主義の世の中においては,とても重要なものです(ただし将来的には,大企業は減っていき,株式会社というスタイルとは異なる事業形態が増えると考えていますが)。日本の会社であっても,日本の投資家が少なければ,外国人投資家に頼らざるを得ず,ちょっと論理が飛躍するようですが,解雇規制の緩和という議論にもつながるのです。日本の会社が置かれている労働市場法制は,外国人投資家にとって大きな関心事です。こうした外国人投資家に日本の会社に投資をしてもらうためには,労働市場の硬直性の象徴ともいえる解雇規制の改革が必要となってくるのです(このことは,大内伸哉・川口大司編著『解雇規制を問い直す』(有斐閣)24頁にも少しだけ言及しています)。また,外国の投資家が多ければ,日本のことをよく知らない経営陣を送り込んできて,日本の労働者に合わない企業経営をする危険性もあります。
 もし日本人の投資家が中心となり,解雇規制を維持し,従業員の雇用を守ることこそが株主の考えだとなると,従業員主権型のコーポレートガバナンスが可能となり,労働法制をめぐる議論も変わることになるかもしれません。たとえばCSRの観点から従業員利益を重視する会社に将来性を感じて,そこに優先的に投資をするという投資ファンドに個人が資金を託すということになると,解雇規制の見直し論も弱まっていくかもしれません。
 いずれにせよ,今回の年金問題と株式投資は密接に結びついています。公的年金にしろ,企業年金にしろ,個人年金にしろ,投資による資産運用は不可避です。その投資を政府がやるか,個人がやるかの違いがあるだけです。それだったら個人でやってみようではないか,ということなのですが,どうも日本人には投資はおろか,お金のことを考えること自体がどこかよくないことだという考えの人が多いようです。そうなると,これを子供に教育するなんて論外ということになります。でも,お金のことを学ぶとは,稼ぎ方や運用の仕方だけでなく,使い方(寄付などの社会貢献,浪費をいさめ倹約を進めることなど)までセットなのです。これは,とても大切なことではないかと思います。
 あの村上ファンドの村上世彰氏が書いた『いま君に伝えたいお金の話』(幻冬舎)は,このような問題意識に十分に応えてくれるものでした。平易な文章ですが,「会社員が消える」時代のお金との付き合い方もきちんと書かれているなど,内容のレベルは高いです。また借金の危険性を指摘する部分は,大人こそ読んでおいたほうがよいです。お金は道具にすぎないですが,その道具に振り回されないようにするために,その危険性も知っておかなければなりません。人生には借金をせざるを得ないときもあるでしょうが,できるかぎり借金をしない範囲に自らの欲望を抑える。そのうえで,自分のやりたいことを実現するために働いて稼ぎ,しっかり投資もして増やしいく。そして幸運にも,自分のやりたいことに使う以上に資産形成ができれば,寄付をして社会に還元していく。こういうお金の教育は,ぜひ小学校や中学校からやるべきでしょう。すでに村上氏はそういう活動をされているようですね。

 

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