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2019年6月26日 (水)

経済学を学ぶ必要性

 佐々木紀彦『米国製エリートは本当にすごいのか?』(中経文庫)は,とても面白い本で,アメリカという国のことがよくわかります(ただし最近のトランプ現象をみると,アメリカもずいぶんと変わってきているのかもしれませんが)。ぜひ日本の若者にも読んでもらいたいと思います(単行本は2011年刊行なので,すでにベストセラーになっているのでしょうが)。この本のなかで,佐々木氏は,グレゴリー・マンキューから,経済学を学ぶ意味として,「自分が暮らしている世界を理解するため」,「経済へのより機敏な参加者になるため」,「経済政策の可能性と限界とをよりよく理解するため」であるという言葉を引用し,これらを佐々木氏なりに「よき教養人となるため」,「よき経済人となるため」,「よき有権者となるため」と解釈しています。
 素人には,経済学を正確に理解するのは難しいとしても,そのセンスを習得するくらいなら,なんとかなるかもしれません。実際,法学の議論をする際にも経済学的センスや思考がなければ視野狭窄となりかねませんし,国民としても,ポピュリスティックな経済政策にだまされないようにするためには,経済学は必要な素養でしょう。素人には,こういうときのために,新書などの啓蒙書が助かるのであり,私も大阪大学の大竹文雄さんからいただいた多くの新書で勉強させてもらっています。いま手元にあるのは2017年刊行の『競争社会の歩き方』(中公新書)です。(これは以前に書いたことがあるような気もするのですが)そこで書かれている「チケット転売問題」というのが,ずっと気になっていたのですが,最近,この問題について,チケット転売を規制する法律(特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律)が制定されました。この法律では,「興行主の事前の同意を得ない特定興行入場券の業として行う有償譲渡であって,興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とするもの」を「特定興行入場券の不正転売」と定義し(24項),「何人も、特定興行入場券の不正転売をしてはならない」(3条)し,「何人も、特定興行入場券の不正転売を目的として、特定興行入場券を譲り受けてはならない」(4条)としました。そして,「第3条又は第4条の規定に違反した者は,1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する(91項)とされています。つまり転売をする側も受ける側も処罰されるということです。
 厳しい規制です。この法律に対しては,なんで転売がダメなのかという根本的なところで,どうも釈然としていない部分があり,大竹さんの本でも,転売規制の賛否の意見を丁寧に紹介しながら,最終的には「チャリティ型」を提案されています。詳しくは大竹さんの本を読んでくださいね。
 経済学は,行動経済学の議論が入ってきてから,親しみやすくなっています。大竹さんたちが,積極的に,社会に発信されていることも重要な意味をもっているのでしょう。経済学が,様々なバイアスをもって不合理な行動をとる人間と向き合った議論を進めることにより,非常に説得力の高い学問にブラッシュアップされ,その成果を国民に語りかけている姿をみて,私たちももっと頑張らなければならないと思っています。 政治家には,きちんと,この議論に向き合ってほしいのですが,そうするためにも,私たちが経済学を学んで「よき有権者」となることが必要なのでしょうね。

 

 

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