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2019年4月22日 (月)

通年採用化の動きについて思う

 「経団連と大学側は22日午前に開く産学協議会で報告書をまとめ、通年採用を進める方針を示す。」という記事が,日本経済新聞に出ていました。「従来の春季一括採用に加え、在学中は専門分野の勉強やインターン(就業体験)に傾注した学生らを卒業後に選考するなど複線型で柔軟な採用を促進する。」ということのようです。
 経団連は会長が代わり,日本型雇用システムにチャレンジする姿勢を高めていたので,思い切ったことをするのではないかとみていましたが,今回の通年採用化は,昨年の「就活ルール」廃止に次ぐ注目すべき動きです。私は近著『会社員が消える-雇き方の未来図』(文春新書)のなかで,新卒定期一括採用の見直しという動きについて,「日本型雇用システムをその入口部分から見直そうとする動きであり,このシステムの崩壊への序曲が経団連の手によって奏でられた」と書いていました(8889頁)。 
 新卒定期一括採用から通年採用に移るのは,たんに学生の就活の時期が変わるとか,企業の採用時期が変わるとか,そういうことだけを意味するのではありません。今後,実際にどこまで企業が通年採用を広げていくかわかりませんが,理念的には,この変化は,日本型雇用システムにとって本質的な意味をもっています。新卒定期一括採用は,中長期的な雇用戦略に基づいて,即戦力としてではなく,企業が人材を育成することを前提に雇い入れるために行われるものであり,まさに「就社」型の採用であったのに対して,通年採用は,ポストや職務が先にあり,そこに空きが出たところで,あるいはそうしたポストを新たに増やした場合において,人材を補充したり確保したりするためのものであり,文字どおりの「就職」型の採用となるのです。後者は,仕事が先にあって,そこに人をあてはめるということなので,人のほうは,その仕事をするのに適した技能をもつことが求められます。経団連は,勉強する学生を求めると言っていますが,これは企業のほうでゆっくりと人材を育て,つくりあげることはしないというメッセージでもあります。もちろんOJTによる育成はなくならないでしょうが,何も特別な勉強をしてこなくても,組織に順応できる能力さえあれば,あとは企業のほうでしっかり育てるというような従来のやり方は止めるということです。
 これはたんに採用の方法が変わるというだけの話にとどまりません。育成をせず,即戦力を求めるようになると,賃金は職務に連動するようになっていくでしょうし,長期雇用へのインセンティブは不要となります(優秀な人材を引き留めたり,短期的な成果を上昇させるためのインセンティブは残るでしょうが)。日本型雇用システムの中核とされた長期雇用や年功型賃金は,すでに変容してきているとはいえ,いよいよ消滅へのスピードを高めることになるでしょう。平成や令和ということと結びつけて話すのはどうかと思いますが,あえてジャーナリスティックに言うと,令和時代の雇用システムは,「日本型」という形容語がとれてグローバル化するのです。そのあとに,どのような働き方の未来図があるかは,上記の拙著をぜひ手に取って読んでいただければと思います。

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