« ダウンロード違法の拡大化の動きについて思う | トップページ | 『誰のために法は生まれた』 »

2019年2月27日 (水)

コンビニ加盟店のユニオンの団体交渉

 セブン-イレブン・ジャパンで,24時間営業の契約に違反した加盟店が多額の違約金を請求されたことが話題になっています。もともと24時間営業をしなくてもいいじゃないかと思っていたのですが,本社側は契約違反ということで,厳しい対応をしようとしているようです。契約でそういうことが書いてあるのなら仕方ないことになりそうですが,これが交渉の余地がないような約款だとどうかということもあります(改正民法の世界です)。またこれは労働契約ではなく,商取引とはいえ,優越的地位を利用して,正常な商慣習に照らして不当に,不利益となる取引条件を設定していたとすれば,独禁法上の問題にはなりうるはずです。まあそれは経済法の専門家に任せるとして,今回,コンビニ加盟店のユニオンが,本社に「団体交渉」を申し込んだということで,こうなるとこれは労働法の問題となってきます。
 コンビニ加盟店は自営業者のはずですが,法的な意味での団体交渉を申し込めるのは,労働者の団体である労働組合だけであるので,自営業者は労働者か,という「なぞなぞ」のような問いが出てくるのです。労働委員会レベルでは,すでにコンビニ加盟店のオーナーは,労働組合法上の労働者であるという判断が出ていて(https://www.mhlw.go.jp/churoi/meirei_db/mei/m11368.html,https://www.mhlw.go.jp/churoi/meirei_db/mei/m11486.html),これで本当に大丈夫かということが,労働法学のなかでは一つのホットイシューになっています。最終的には最高裁の判断が待たれるところですが,それまではまだ時間がかかるでしょう。
 私は『会社員が消える』(文春新書)で少しだけこの問題を論じていますが,個人的には,フリーの個人自営業者も団体を作って自分たちの職業上の利益を守って活動することが許されるべきという考えをベースに,立法上の手当が必要だと思っています。現状では,労働組合なのか,もし価格交渉などをやっているとカルテルになりかねない事業者団体なのか,といった問題が出てきます。
 コンビニのオーナーは,これまでも人的従属性はないが,労働者よりも経済的従属性があるという例としてよく出されています。要するに雇用労働者はローリスク・ローリターンだけれど,コンビニのオーナーはハイリスク・ローリターンではないのか,ということです。前者が保護されて,後者が放置されていいのか,ということです。
 コンビニのオーナーにも成功している人がいるかもしれません。ハイリターンを狙えるのなら,ハイリスクであっても仕方ないのです。ただ現状の多くはそうでないとしたら,どうでしょうか。そういうなかで,今回,契約条項の問題が出てきたのです。労働契約ではないし,民法の公序良俗違反とまではいえないとすれば,自力で契約条項を変えていくしかないのですが,そこで団体交渉という労働法的な手段が使えるかが問題となるのです。団体交渉となると,それを正当な理由なしに拒否すると不当労働行為となるので,強制的に相手を交渉のテーブルに引っ張り出せます。不当労働行為となると,労働委員会という行政機関から団体交渉に応じなさいという命令が出されます。これは労働組合の行う団体交渉の最大のメリットです。
 運動論としては,別のコンビニ店での前記のような労働委員会の命令もすでにあるので,団体交渉を申し込んでガンガンやることになるでしょう。本社側も任意で団体交渉に応じるかもしれません。ただそれを団体交渉と認めれば影響が大きすぎるということで,協議や話し合いという形にしてくれないかという要望を出してくるかもしれません(「団体交渉」か「協議」かの違いは,法的には大きく,今後にも影響します)。団体交渉ができるとなると,ストライキもできます。ストライキは,収入が入ってこなくなるので,自分の首を絞める可能性もありますが,大同団結してストライキをすれば,肉を切らして骨を断つ的な戦法となり,本社もきついかもしれません。またストライキというのは,世論を味方につけることも重要なのですが,現時点では,世論はどうもコンビニ加盟店支持のような感じがします(労働委員会は,争議行為が生じる虞があるとなれば,労働関係調整法による斡旋の申請が来るかもしれませんので,そのときにどうするかも考えておいたほうがよいです)。
 ただ研究者的には,運動論とはひとまず距離を置いて,理論的に,前述のように,自営業者の団体というものをどう整理すべきかを考えるときに来ていると思います。最近,私のところの大学院生が,このテーマで修士論文を書いて,先日審査を終えたばかりです。その結果はさておき,フリーワーカーに関心をもっている私としては,アルバイトを雇用するなど使用者的な要素もあるコンビニの店長は直接的には検討対象としていないものの,これは理論的にはフリーワーカーの団結と同じ問題があり,労働法と経済法にまたがる重要論点としてしっかり研究していきたいと思っています。

« ダウンロード違法の拡大化の動きについて思う | トップページ | 『誰のために法は生まれた』 »

法律」カテゴリの記事